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救出と責任

「あぁ、何かあったら連絡するよ」


『………』


 女性たちの視線を受ける中、案内の男が部屋を出るのを確認し魔法を使った。


 音遮断と結界によりこの部屋を隔離する。


「なっ!? どうして魔法が使えるんだ!?」


 俺が魔法を使うと元冒険者だろう身なりをした女性が反応してみせた。


「このレベルの阻害なら俺は影響を受けないからね」


 女性たちの逃亡防止の為か、建物全体に魔法阻害の対策が施されていた。


 魔法が使えなければ、女性より男性の方が強いのは明白なので、当然の処置と言える。


 これで影響を受けないのは、カトレアくらいだろう。


 彼女なら肉弾戦のみで男性たちをフルボッコに出来る。


「そろそろ話を進めても良いかな?」


 俺は、彼女たちの前でマスクを取ってみせた。


「ユーリさん!? どうしてここに!?」


「貴方の知りあい?」


 女性たちの視線が、今度はナージャへと向けられた。


「うちの孤児院に多額の寄付をしてくれて、運営も手伝ってくれる優しい人です。他は……その……詮索しないようにしてたので」


 通りで身分とかを聞いて来ないと思っていたよ。


「なぁ、アンタ。これから私たちをどうすれば良い? アンタは、私たちを犯す為に大枚を叩いたのだろ?」


「っ!? そうなんですか、ユーリさん!?」


 ナージャたちの間に緊張が走った。


「あれだけの金を出したんだ。アンタに何かあれば、私たちは奴らに殺されるかもしれない」


 そう言って、冒険者風の女性はベットに身を投げた。


「だから、抵抗はしないよ。私を好きにしな。それとも、今回の本命であるナージャって言うその娘から頂くかい?」


「えっ? 私ですか!?」


「アンタの初めてを買いたさに男たちは金を出してたんだよ」


「という事は、ユーリさんも!? だっ、駄目ですよ。既婚者じゃないですか!でも、ユーリさんなら初めてをあげても……」


 ナージャは、そう言って顔を赤らめてもじもじする。


「クララが立ってた!?」


 フラグを言い間違える程に動揺した。


 さすがに鈍い俺もナージャが好意を寄せていることに気付いた。


 でも、彼女は良い子だと思い優しく接したけど、フラグが立つような行動はした覚えが無かった。


「えっ、嫌でした……か?」


 何故か、凄く悲しそうな顔をするナージャ。


「だっ、ダメじゃないけど……」


 さっき、既婚者だからって駄目って否定してましたよね!?


「それより前にする事があるよね?」


「あっ、服を脱がないとですね。……すみません。拘束が邪魔で脱げません。脱がして下さい。あっ、破けてるのでそのままでも……」


「そっちじゃない!」


 ナージャが脱ぎかけるのを必死に止めた。


「逃げるんだよ。ここにいる全員で!」


『えっ?』


 俺とナージャのやり取りを我関せずを貫いていた他の子たちも俺に意識を向けた。


「俺はそもそも皆を助ける為に来たんだからな。金を出したのだって、奴らに怪しまれない為だ」


「そうなんですか!? 私ったら、てっきりそこまでして求められたからかと……」


「落ち込んでる場合じゃないよ! 兄さん、詳しく説明してくれ!」


 冒険者風の女性が話を聞きに来た。


 落ち込んだナージャは、視界の端で他の子たちから慰められていた。


「君たちと合流した瞬間、秘密裏に連絡したんだ。もうすぐ、建物の周囲を首都の騎士団が包囲して、突撃する筈だ」


 俺は、アイテムボックスからアイリスたちに借りてきたローブを取り出した。


「今から皆の拘束を外すからこれを着てくれ。それから脱出するよ」


「拘束を解くって、鍵は?」


「要らない。そこに並んで」


 皆を並ばせて、フラガラッハで拘束具をアッサリ破壊する。


『嘘っ!?』


「はい、終了」


「やったー!お兄さん、ありがとう」


「おっ!」


 解放した娘に抱き付かれてキスされた。


「あっ、ズルぃ!」


「私も!」


「えっ? えっ?」


 さっきまでの怯えとは一変して解放した子たちからほっぺにキスされまくった。


「ほぁ……」


 嫁さん以外からのキスでも嬉しいものだ。


 ちなみに、何故ほっぺかというと……………俺が避けたからだ。


「何で避けるの?」


「唇は、嫁さんたちに遠慮して……」


 俺は、素直にそう答えた。


「まぁ、仕方ないよな」


『………』


 一部納得してないのか、唇を見詰める熱い視線を感じるが、今はそれどころではない。


 ドドッ! ドンッ!!


 何かを壊す様な激しい衝撃が建物全体を襲った。


「始まった。それじゃあ、ついて来て」 


 俺を先頭に部屋を出た瞬間、おろおろしていた見張りに遭遇。


「邪魔っ!」


「くふっ!?」


 気絶成功! 念の為、縛ってから放置。


「なぁ、アンタ。え〜っと……ユーリさん?」


「何、ミキさん?」


 部屋を出る前にした自己紹介でミキと名乗った冒険者の女性が話し掛けて来た。


「ああ、ここの魔獣たちとテイマーはどうした? 処理出来てるのか?」


「魔獣? テイマー?」


「仲間を殺して、アタシを犯した連中だよ。ソイツらが居るから逃げるのを止めていたのさ」


 ビーストテイマーとそれを操る魔獣が居るらしい。


「それはーー」


「ここに居ますよ」


 前を見ると大型の魔物を2体従えた男が立っていた。


「全く、貴方がこの騒ぎの元凶ですか? さしずめオークション代は、迷惑料って所でしょうか?」


「貴方は、確か……マザーの元旦那さんに教祖と呼ばれていた人!」


 教祖。なるほど、コイツがここの親玉か。


「教祖様が俺に何の用で? こっちは、買い取った女の子を連れ帰って遊ぶつもりなんだが?」


「ご冗談を。その娘たちを騎士団に引き渡すつもりなのでしょ? 孤児院に向かった者が帰らないので、貴方の素性を少し調べさせて頂きました」


「なら、投降してくれない? その方が楽なんで」


「ご冗談を。私は、ビーストテイマーとしてSランク冒険者程の実力が有ると自負しております。貴方を殺してからでも逃げおおせる自信もね」


「「ガルルルッ!!」」


『ひっ!?』


 教祖が撫でると魔獣たちは殺気立ってきた。


「無理だろ。だって、薬物でBランクの魔獣を従えているだけじゃん」


 ビーストテイマーは、二種類ある。


 力で従えるタイプと術や薬物等を使用して従えるタイプ。


 教祖が魔獣を撫でた時、ふわりと薬物の匂いがしたから後者の可能が高い。


 前者だとしてもAランク冒険者程度の実力だろう。


「なら、試してみるか?」


「戦ってはダメだ、ユーリさん! 私が少しだけ時間を稼ぐから皆を一人でも多く逃してくれ!」


 そう言って俺の前に出るミキさん。


「アンタ。良い女だな」


 他人の為に自分を犠牲に出来るなんて、そうそう出来る事じゃない。


「ダメですよ、ミキさん! 貴方も助からないと!?」


「ナージャだっけ? 私はもう良いのさ。その代わり、アンタが一番若いだから必死で生き残りな」


「ほう。いい覚悟ですね。しかし、以前の二の舞にならないと良いですね。まぁ、今度は殺す気で行かせますけど」


「上等だ!」


「………」


 凄く緊張した空気になってるけど、そろそろぶち破って良いよね。


「あの〜っ、ごめん。もう殺しちゃった」


『えっ?』


「触れれば分かるよ」


「何を言って……?」


 教祖が横にいる魔獣に触れる。


 その瞬間、魔獣はブロックの様に細切れなり崩れ落ちた。


『ええ〜っ!?』


「なっ、何がっ、起こって!?」


 教祖は、状況に付いて行けず呆然としている。


「ハッ! 今がチャンス!」


「えっ? はぎゃっ!?」


 お〜っと、ミキさんのパンチが教祖の顔面に炸裂。


 一撃で教祖はノックダウン! 崩れ落ちた!


 更に、馬乗りになって、ワンツー、ワンツーとラッシュが続く。


 そして、トドメに腹部へ体重をかけた肘鉄。


「K.O. 勝者、ミキさん」


 あっと言う間に教祖は倒された。


 悪の権化は去り、平和に脱出出来るだろう。


「じゃあ、出ようか」


 教祖を縛り、引きずりながら建物を脱出した。


 ローブが目印となり、俺たちは直ぐに騎士団から保護された。


 教祖を騎士団に引き渡した時、マザーの元旦那がいたので威圧しておいた。


「次、孤児院の子たちの前に現れたら……分かるね?」


「ひぃい!?」


 おそらく、もう一生檻から出る事がないから大丈夫だと思うけど、念の為に脅すくらいは良いでしょ。


 それから皆で孤児院へと帰った。


 他の女性たちも身元確認に数日かかる為、孤児院に連れ帰る事になったよ。


 帰ると直ぐにナージャは子供たちに囲まれた。


 安堵で泣き出したナージャに釣られて子供たちも泣き出した時は、どうすれば良いか分からずアイリスたちとおろおろして大変だったよ。


 でも、孤児院の子供たちをみる為に来てくれたフィーネが全部収めてくれた。


 やはり、フィーネには頭が上がりそうにないと俺たちは思った出来事だった。





 後日。


『買った責任を取って下さい』


「えっ?」


 ナージャを含むオークションで買った娘達に求婚された。


 一応オークション代金は逃げる時に回収したので、買った事になっていない筈だ。


「ユーリさんが娶ってくれないとナージャは今日で大人だから孤児院から追い出さないといけないさ」


「脅しか!?」


 マザーにそう脅された。


「あたし等も今回の件で貰い手が無くてね。負担にならない様に働きもするから頼むよ」


 そこまで言われたら断れる訳がないので、アイリスたちに相談。


『オッケー!』


「軽っ!?」


 何故か、アッサリと許可がおりた。事前に根回しでもしたのかな?


 そんなこんなで、また嫁が増えたのだった。


 冗談でも女の子をオークションで買うべきでないと学んだよ。

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