めっちゃ稼いだな
一般の人が1ヶ月に稼ぐ給与が平均で金貨15枚。
日本円で15万ほどに相当する額だ。
これは、毎日休みなく働き、かつ、引かれなかった場合の給与だ。
その為、本来貰える給与はかなり少ないだろう。
………それが一部屋を埋め尽くし溢れている。
「おいおいおい……!?」
最初は、ちょっとした気まぐれだった。
アイテムボックスに収められている金貨は、通帳の如く数字で表示されている。
金貨は、お札とは違うので厚みが有る。
なので、実際にはどれくらいの量なのだろうと思い試した結果がコレだよ。
札束風呂ならぬ金貨風呂を超えて金貨部屋が出来てもうた。
「oh……」
おかしい。これでもしっかりと消費しているのだが……。
例えば、アイリスたちのお小遣いで1人金貨20枚。
妖精の箱庭で働く人の給与が、金貨30枚。
これで固定しているが不満は出ていない。
むしろ貰い過ぎだからと返す者がいたくらいだ。
「アレ?」
今、ある事に気付いてしまった。
「皆、お金使う機会無くない?」
アイリスたちの場合、魔物の買い取りやクエスト報酬は個人の物なので、かなり稼いでる気がする。
他の人も衣服以外の生活費は、全て此処で賄えるので使ってない。
「大規模な旅行でも企画しようかな? 1箇所に貯まるのは不味いだろ」
一応、この世界に銀行は有るが、信用されていないらしく、あまり利用されない。
俺みたいなアイテムボックス持ちやマジックバック持ちもいるので当然かもしれない。
「まぁ、他人の心配より目前の心配だよな」
この金貨の山は、序の口なのだ。
実は、まだアイテムボックスの中に3分の2程残っている。
それに加えて、他の硬貨たちがあるのだ。
「これ、もっと増えるんだよな……」
うちの収益は、常に黒字だ。
野菜や果実を売った代金で皆の給与を払える。
肉を確保する為に狩った魔物でアイリスたちのお小遣いまで支払える。
更に、ポーションの代金、マジックアイテムのレンタル代などが支払われる。
セリシールとかの売り上げも凄い事になっていた。
「使うとして……」
アイリスたちに着せたい服やランジェリー等の衣服代。
外食代。マジックアイテムの材料費。
ポーションの材料費。殆ど自前で掛かってないな。
そんな感じで貯まる一方だ。
「……寄附でもするかな?」
異世界にも孤児院がある気がする。
一度、色々あって施設に入ったことがあったが、色々運営が大変だったのを見ていてる。
「レギアスさんに聞くか」
俺は、レギアスさんの所を訪れる事にした。
「ーーという流れで、此処に来たわけだよ。断じて浮気ではない!」
此処の所、1人で行動していたので浮気だと思われてた。
聞かれないから話さなかったのがマズかった様だ。
というか、嫁さん居るのに他の娘へ手を出すと思われてるの!?
俺は、そんな人間じゃない……と思いたい。
自分で言うのもなんだが、誘惑に弱いからなぁ……。
「レギアスさんの紹介なんですね」
「うん。あの人が支援先のリストアップしてくれたから順番に金貨200枚配って回ったんだよ。そしたらさ。ここのマザーがびっくりしちゃって、ぎっくり腰。ポーションで治す程じゃなかったから復帰まで手伝ってた」
「言えば手伝ったのに」
「俺が原因だから気が引けてねぇ……」
「てっきり、本物のシスターを間近で見たいからかと思った」
「あははっ、そんなまさか〜」
俺は、否定しながら横目でちらりとナージャを見た。
清楚なイメージを持たせるシスター服。スリットから覗くガーターベルトやタイツはエロさを醸し出す。
ふっ、間近で見たくなるのは当然だよね?
エロースがいたら共感してくれそうだ。
ついでに彼女なら鼻血も吹きそうだ。なんせ、この娘は……。
「あっ、お茶が切れてますね。注ぎま……あっ!?」
ナージャは、ポットに入った紅茶を注ごうと手を伸ばす。
その瞬間、自分の手前に置いてあったミルクに袖を引っ掛けた。
「ひゃっ!?」
なんとか溢れる前にミルクの容器をキャッチするも向きが悪い。
容器の注ぎ口は、彼女の方を向いていたので当然ぶちまけた。
「はぁうぅぅ……」
溢れたミルクは、彼女の顔や胸に付き、見事なエロさを演出した。
「「これかぁ〜」」
アイリスたちがこれを見て何やら納得した様だ。
「ドジっ子って現実でいたんだね」
「俺もここに来るまで存在するとは思わなかったよ」
ハンカチをナージャに差し出しながら、アイリスに言った。
「そんな!? 私、ドジっ子じゃないですよ!」
「あっ、うん。そうだねぇ〜」
「何ですか、その目は! 全く信じてませんね!」
「それより着替えて来なくて良いのか? 布が薄いからか、下着のラインが見えてるよ」
濡れたお陰でしっかりとブラの形まで認識出来る。
なかなかに良いものをお持ちで。
ナージャは、隠れ巨乳だったんだな。
ドジっ子で巨乳には、ポイント高いぞ。
「えっ? きゃっ!? 失礼します!」
ナージャは、急いで部屋から出ていった。
なので、アイリスたちからの尋問タイムが始まった。
「本当に手を出してないの?」
「出してない!子供たちに誓って!」
これでもしっかりと耐えている。
「可愛い娘ですよね? 気に入ってるのですか?」
「否定はしないけど……」
ドジっ子ではあるが、子供思いの良い娘だって事は一緒にいて知っている。
「寝たいと思わないの?」
「アイリスたちがいるのに手を出す気はないよ。それに同意を得られてもアイリスたちに相談するし」
こればかりはちゃんとしておかないと嫁さんたちと険悪になってしまう。
「分かった。ユーリを信じるよ。それで、いつまでここの手伝いするの?」
「とりあえず、後3日くらいかな?それまでには復帰するらしいから」
「なら、私も手伝うよ」
「私も手伝います」
「良いのか? 子供たちの相手は大変だぞ? うちの子供たちより成長してるから何をしでかすが分からないんだよ?」
「大丈夫。頑張るよ!」
「成長した時の予行演習だと思う事にします」
「済まない。助かる」
俺が原因なので手助けしてもらう事に少し躊躇が有る。
でも、そろそろ子供たちの相手をキツく感じていたので、頼むことにした。
「それじゃあ、明日からーー」
『お兄ちゃん!!』
子供たちが勢いよく部屋に来た。
『ナージャお姉ちゃんが拐われた!』
「「「はい?」」」
どうやら、面倒な事が起こったらしい。




