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浮気疑惑

「ユーリさんが、浮気してる可能性が有ります!」


 私は、皆の前で開口一番にそう告げた。


 ここは、談話室。現在、お嫁さん会議の真っ只中です。


「マリーが、そう言うって事なら何かしらの理由がある筈ですよね?」


 アイリスの言葉に、皆が頷いた。


「何か、気に掛かる事が有るんですね?」


 てっきり否定から始まると思ったのだけど、まずは聞いてくれる様だ。


 皆からの信頼を感じる出来事だった。


「最近、ユーリさんが単独行動している事に、皆さんは気付いていますか?」


「そうなんですか?」


 知らなかった娘達の視線は、アイリスに向けられた。


 ユーリさんが出掛ける時には、常にアイリスが側に居る事は周知の事実だからだろう。


「うん。出掛けてるよ。1人で行きたい所が有るんだって」


 アイリスからユーリが1人で行動している事の言質が得られた。


「アイリス。何処に行ってるか知りませんか? もしくは、目的とか?」


「ごめん。どっちも分からないや。一回好奇心からつけたんだけどね。転移門(ゲート)を超えて街に行った所まで見てたけど、途中で撒かれちゃった……」


『!?』


 それを聞いて皆がざわめき始めた。


「これで、言う手間が省けましたね。実は、ここの所、1人なら転移魔法が使えるのにわざわざ門を潜って移動してるんです」


 私が疑念を抱いた理由の1つだ。


「でも、それだけじゃ、浮気だとは言えませんよね?」


 そうだ。それだけなら、魔力の節約や行き先が近場だからと思うかもしれない。


「実は、これから話す事が本命です。ギンカさん、お願いします」


「はい」


 今回の件に気付かせてくれたのは、彼女の鼻だ。


「ご主人様の服に女性の匂いが染み付いていました」


『………』


 周囲は、先程とは打って代わり静寂とどんよりとした空気が辺りを包み込んだ。


 ギンカの鼻は、誰もが知る程に精度の高いモノだ。


 皆の中でも浮気かもという疑念が湧いてきたと思う。


「通常の触れ合いでも、匂いが移る事は有りません。しかし、今回の場合、匂いが付いている位置が不自然です」


「ギンカ。何処に付いてたの?」


「首元。背中。腹部」


「……それは、香水とかですか?」


 ええ、私も最初はそう思いましたよ。


「いえ、普通の匂いです。ただ、体臭の為、肌が直接でも触れないと付かないと思われます。それに、香水の匂いは、思いの外移り難いものなんですよ」


 これは、私もギンカに聞かされるまでは初耳だった。


 よく考えたら、祭り等の人混みの中で香水を付けた女性と一緒に居て匂いが移った事が無かった。


「なるほどねぇ〜。だから、浮気かもしれない訳か……」


「私も違うと信じたいんですけど……」


 この事実から考えると有り得てしまうから仕方ない。


「それにしても、本当に浮気ならどんな娘かな?」


「えっ?」


「だって、私たちに内緒にするくらいだよ。これだけの人数とジャンルが揃ってるのにさ」


「確かに……」


 アイリスが言いたい事は良く分かる。


 今集まれた面子だけで、胸のサイズや形は小から超まで多種多様に有る。身長もまた同じだ。


 でも、ユーリさん的には小さい娘が好きなのは確定している。


 アイリスやリリィさんがわざわざ幼女になる事からも分かるだろう。


 それでも、ロリコン呼ばわりされないのは、おっぱい星人だからに他ならない。


 なら、ロリ巨乳は?


 そんな書物の様なサイズを持った存在が実在する訳有りません。


 現にミズキが頑張ってぎりぎりCカップになったくらいですからね。


「それで作戦なんですけど……」


「作戦?」


「ひゃあ!? ゆっ、ユーリさん!?」


 突然、背後から聞こえてきた声にビックリした。


「そっ、そのっ……」


 私の全身から冷や汗が流れ始めた。


「ユーリ。いつからいたの?」


「今、通りかかった所。めっちゃお互いに近付いて話してたから気になってね。それでマリー。作戦って夜の?」


「えっ? ええっ、ちょっと夜の森も有りかな……と?」


「………その程々ね」


 凄く同情した目で見た後、ユーリさんは去って行った。


 ユーリさんも嫌いじゃない癖に! 凄く背徳的で興奮するって言いましたよね!


 後、その変態を見る目は何ですか!


 凄く抗議したいが、今は去った事に感謝しよう。


 私は、ユーリさんの浮気を調査する為の作戦を皆に話した。







 決行当日。


 ここは、薬屋テリーゼの薬品倉庫。屋敷からの転移門が繋がる先の1つ。


「貴女たちが倉庫整理を手伝ってくれるなんて珍しいわね?」


 リリスたちは、そこで働いている。


「ちょっとした気まぐれですよね、母さん」


「たまには、親孝行するべきかなと……」


「まぁ、時間が来たら直ぐに止めますけどね」


 ここで働いて居るのは、ユーリと遭遇しても怪しまれない為だ。


 何度かの調査でここを通る事が分かった。


 しかし、その後、転移されたら後を追うことは不可能だ。


 そこで、彼女たちには、ユーリさんが通過したらアイリスに知らせて貰う事にした。


 転移魔法を使える者なら転移後の歪みから転移する事が可能だからだ。


 ただ、これには条件がある。


 歪みが存在する時間は短いのでなるべく近くにいる必要があるのだ。


 その為に、一瞬でも撒かれるといけないし、直ぐに対応しないといけない。


 なので、各所に人を配置して、ユーリさんの転移を確認後直ぐにアイリスを呼ぶ作戦にしたのだ。


 今から2人でつけるし、ユーリさんが作ったマーカーも有るので、成功率は高いだろう。


「アイリスさん。マリーさん。ユーリさんが店を出ます」


 リリスさんからの魔法連絡を受けて通路から顔を出すと丁度店からユーリさんが出る所が見えた。


「ワクワクするね♪」


「ええ、確かに。イケナイ事をする気分です」


 私とアイリスは、笑いながら後をつけ始めた。









 追跡は、順調。


 ユーリさんにはまだ気付かれていない。


「今、市場で買い物するのが見えました。もう少ししたらそっちに行くと思います」


 配置した子がいる所では、先回りしてユーリさんを待つ。


 後ろからの監視は意外にバレるが、前からだとバレ難いのだ。


「ユーリさんが転移しました!」


 そして、事態は動き出す。運がいい事に私たちの側で転移したのだ。


「アイリス!」


「任せて!」


 アイリスから立ち登る魔力が歪みに干渉して広がる。これを潜れば、転移が発動する。


「行こう、マリー!」


「はい!」


 そして、私たちは歪みを潜った。

香水での浮気話を聞いたので書きたくなりました。

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