予選
マヨネーズを作った翌日。
竜王祭一般枠予選。
本戦出場をかけた戦いが始まろうとしている。
予選通過者には、金貨2000枚が報酬として支払われる。
それもあって、誰も彼も闘志に燃えていた。
今年度は、101名。
本来は、100名で締め切るのだが、俺が参加する事になったから101名になった。
現在、闘技場エンブリオのステージ上に集められている。
闘技場は、試合を行うだけではない。
定期的にイベントも行っており、竜王国の観光スポットの1つでもあるそうだ。
ステージの広さは、200m四方の正方形だ。
魔法職やテイマーの為にこれくらい必要なのだそうだ。
観客席は、雛壇になっている。
その為、全員が被る事なく試合を鑑賞出来る。
立ち見席もあり、観客は大満員だ。
アイリスたちも、観戦すると言っていたから貴賓席の上にある王族席へと目を向ける。
スライム状態のアイリスを膝に乗せたマリーとギルフォードの姿が見えた。
その周りには、マリーたちの親族であろう美人や美丈夫が座っているのが見える。
ざわざわ。
何か変化があったらしく、周りが騒がしくなった。
壇上にガイアスの爺さんが姿を現したのが原因だった。
「あ〜、テステス。聞こえるかね諸君」
場が静かになる。
「只今より竜王祭一般枠の予選を行う。ルールについてはーー」
事前に少し聞いていたが、詳細が分かった。
1つ、30分間のサバイバルバトルである。
1つ、時間経過後に複数残っていた場合、15分の延長を行う。
1つ、それでも残った場合は、延長15分を繰り返し最後の1人になるまで行うものとする。
1つ、戦闘に関して武器の使用を許可する。ただし、弓や投石に類するモノは禁止とする。使用したと認められた場合、失格とする。
1つ、ステージ上で気絶やギブアップを宣言した場合、その者は失格とする。
1つ、任意または、なんらかの手段でステージ外へ移動した場合も失格とする。
というものであった。
「ーー以上がルールとなる。異論はあるだろうか?」
反論の声はない。
「無いようなので続ける。例年通り予選通過者には金貨2000枚を報酬とする!」
うおぉーー!!
これには歓声が上がる。
「だが、今回は更に特別報酬を用意した!」
その話を詳しく聞こうと歓声が止まる。
特別報酬とな?
何か、追加で貰えるのか?
俺も知らない事なので気になる。
「そこの真紅のコートを羽織ったユーリ・シズ!」
何故か、指差しで名指しされた。
全員の視線が俺に突き刺さる。
何故だろう?
冷や汗が流れ、嫌な予感がする!
「彼を倒した者に報酬金と同額を与えよう!」
報酬金と同額。金貨2000枚。
もし、俺を倒して優勝したら。
「金貨4000枚になるという事か!!」
「優勝しなくても倒すだけで!!」
ステージの皆に理解が広がる。
ギン!と全員の目付きが変わった。
「待てや、糞ジジィ!!どういうつもりだ!!」
俺に対して、全員相手にしろって言ってるのと同じだ。
全員の目がカネになってるし。
「はて?何か問題でもあったかのう?」
「問題しかねぇよ!!」
「ちゃんと一言二言に収めたはずじゃが?」
「ソコじゃねぇええーー!!何で全員から狙われなきゃならん!!」
「場を盛り上がる為の演出じゃよ。儂の心配りだと思ってくれ」
「そんな心配りは、犬にでも食わせろ!!」
「じゃが、お主も同意したであろう?」
「したよ!したが、こんな事になると予想出来るか!!」
昨日の俺を殴りてぇぇ。
「宣言したからには、あとには引けぬ。諦めて頑張る事じゃ」
ないわ〜。マジないわ〜。
逃げまわって減ったら戦う俺の予定が……。
「まぁ、賞金は出るからな。安心せい」
でも、金貨2000枚って割に合わねぇ。
不意打ちでモンスター狩った方が早そうだし。
「そこまでするなら、俺にも何か追加しろよ」
「なら、お主の妻が食ったマリーの竜鱗の件を永久的に不問にしよう。本来、竜鱗は、絶対回収する決まりだからの」
アイリスが食ったのマリーの鱗かい!!
知らなかった。
回収の理由としては、竜鱗を加工する事で強力な武器が作成出来るのだと。
その為、大変高価でこの国の収入にもなるほどだという。
余談として、鱗は数年毎に生え換わるから結構有るらしい。
『ごめ〜ん。私のせいで』
念話でアイリスの謝罪が聞こえてきた。
『いいよ別に。旦那だからな。罪だってんなら一緒に、背負ってやるさ』
『ありがとう。お礼に何でも1つお願い聞くからね。頑張って』
『何でも……分かった。俺に任せておけ』
「ok。それでいいよ。交渉成立だ」
「ではこれより5分後、竜王祭一般枠の予選を開始する!各自、準備を整えよ!!」