ヤバい後輩が出来た
場所は、セリシール。
現在、後輩たちが来るのを店内でアイリスと待ち中。
そこに1人のウェイトレスが近付いてきた。
「ユーリさん。準備完了です。大抵のことには対処可能です」
「………リリスか?」
「はい、そうですが?」
髪を結い上げて、化粧もしていたので、このウェイトレスがリリスだと直ぐに気付かなかった。
「凄く似合ってるな。化粧してるのも始めてみた」
「そう言って貰えると嬉しいです。一応、私たちは顔バレしてる可能性があるのでしてみました」
よく考えると、うちの嫁さんたちって常にスッピンなんだよな。
ヤバくない?
つまり、化粧すると更に美人になるだぞ!
「見惚れるくらいに最高! たまにしたらどうだ?」
「そうですか? なら、一緒に出掛ける時はたまにする様にします」
「私も化粧ってしたことないんだよね。リリス。今度教えて?」
アイリスも化粧がしてみたい様だった。
「分かりました。今度、皆でやってみましょう」
「わ〜い!」
面白そうだ。俺も見学させてもらおうかな?
そんな風に、イチャイチャして待っていた。
「きゃあぁぁーー!」
外から悲鳴が聞こえてきた。
「もう、何か起こったのか!?」
急いで外に出てみるとそこには後輩たちの姿があった。
ただし、1人は地面にメリ込んでいる。
そして、シキナだったか?
彼女がめっちゃ謝っていた。
「えっと……何、この状況……?」
さすがの俺も、どうしてこんな現状になっているのか理解出来ない。
理由を聞こうにもシキナは謝ってばかりだし、ナラクとヒサメは硬直していた。
とりあえず、後輩たちを店に案内して話を聞く事にした。
「ミコトだっけ? コイツは、大丈夫なのか?」
地面にメリ込んだ状態でピクリとも動かない。
「安心して下さい! これが日常なので、直ぐに復活します!」
シキナが大丈夫と言って、ミコトを引きずって店に運んだ。
これが、日常って大丈夫なのか、コイツら?
そう思ったが、気にしたら負けだろう。
「もし、急ぎなら直ぐに復活させる方法が無くはないですが……」
「そんな方法が有るのか?」
「ええ、彼の性癖を刺激すれば多分……」
性癖って……一体どう刺激するのか気になった。
「じゃあ、それで頼むよ」
「………分かりました」
早速、シキナは行動に出た。
寝ているミコトに近付くと耳元でこう呟いた。
「今、起きたら私の獣パイを吸わせてあげるよ」
そういや、獣人の中には複乳の娘もいるんだっけ?
特に、獣の血が濃い獣人の娘たちには多いと聞いた。
「でも、それで起きるか? 脳天を殴打でしっかりと気絶ーー」
「獣パイ!? 吸って良いの!?」
「………」
あっ、うん。マジで起きたわ。コイツの性癖は業が深そうだ。
「ハッ! ここは、一体……」
「セリシールの店内だよ」
アイリスが、ミコトを心配して声をかけた。
「貴方は、まさかアイリスさん!? なら、隣にいるのがユリシーズさんですか!? お2人共、お会い出来て光栄です!」
俺たちに気付くなり身なりを整え、丁寧に挨拶してきた。
コイツは、悪い奴では無さそうだ。
「所で、アイリスさんのその姿は擬態ですか?」
「えっ? あっ、うん。昔と違って生態変化が要らないからね」
そう言いながら、アイリスは体表をスライム状態に変化させた。
「手を触らせて貰っても良いですか! 人型スライムの方に会うのは始めてなものなので!!」
「え〜っと……?」
アイリスが困惑して俺の方を見てきた。
「アイリスが、嫌で無ければ良いよ。それくらいなら俺も許せそうだし」
「……分かった。少しなら良いよ」
「ありがとうございます!」
そう言って、アイリスの手を触り始めた。
「スライム特有の感触とヌルヌルが……あっ!」
「ここまでな」
さすがに、アイリスの手を触って光悦な表情を浮かべるミコトが気持ち悪かったので、止めることにした。
「残念です。でも、お蔭で分かりましたよ!私は、獣萌えだということを!!」
「どういうこと?」
「それはですね!」
それからミコトは、俺たちに対して熱く語った。
曰く、獣特有の剛毛。フサフサ最高!
そして、匂い。臭いくらいなのが最高!臭いくらいなのが最高!
重要らしく2回言っていた。
しかも、永遠に嗅いでいたいとの事だった。
「その点、この2人は最高です! 獣人の中でも正統派と呼ばれるだけは有ります!!」
「それは、獣臭いという事か!?」
「大丈夫! ボクは正面から受け入れるよ!」
シキナの杖を避けながら決め顔で言っていた。
「コイツ、変態だわぁ〜」
ギルさんが言ったのは、気のせいとかでなく本当みたいだ。
「いやいや、ユリシーズさんも同類でしょ?」
「えっ?」
「普通の人は、人型でもスライムとか無理ですから。ちなみに、ボクもちょっと……」
「はぁ!?」
コイツは、アイリスの良さを理解していないぞ!
「おいおい、アイリスが獣娘に劣るだと!? 舐めるなよ!」
ここは、アイリスの素晴らしさを語って聞かせるしかない!
「アイリスは、体型を好きにイジれるから色々なパターンで出来るんだぞ! オマケに普通は無理な所でもイケるわ! しかも、肌はツルツル、感じると粘液を出すから天然ローションプレイも出来るオマケ付き! 獣人の剛毛よりは良いだろ!」
「獣人の剛毛は、フサフサだかこそ良いんですよ! 貴方もギンカさんがいるなら包まれる気持ちを知ってますよね?」
「分らなくないけど、それなら普通の獣で良いだろ! 大体、魔物体のギンカと寝たことねぇよ!」
という感じで、白熱してしまった。
「2人共、少し静かになろうか?」
膨大な魔力のうねりを感じて、俺たちは言い争いを止めた。
アイリスを見ると珍しく怒っている様だった。
「ユーリ。後で、お話が有ります」
「はっ、はい……」
魔力のうねりが収まり笑顔になったけど、目が笑って無いので怖い。
しかも、魔力の残滓なのか、背後に般若が見えるよ!
アイリスの体質とか言ったのが不味かったかな?
とりあえず、アイリスが怒るなんて珍しいから素直に謝っておこう。
「ミコトも後で覚悟していてね」
「はい……」
シキナもミコトに怒っている様だった。
これは、さっさと話を進めて逃げるべきだと思い話題を切り替える事にするのだった。




