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ばっ、バカップルっ!

 商業都市ウェンでは、熱帯地域ということも有ってか、凍結魔法を利用した果物やアイスなどが路肩で売られている光景をよく目にする。


 特に人気なのが、ジュエルチェリーと呼ばれる果物だ。


 半透明の果実は凍結魔法の影響を受けて、カットダイヤの様な形状を取る事からそう呼ばれている。


 でも、元々の名前はウルティア。


 そもそも涙型の果実が2つ。サクランボの絵の様に繋がっていることからそう呼ばれていたが、商品名として出たそっちの名前が定着してしまった様だ。


 ちなみに、何でそんな話をするかというと立ち寄った公園に売られていたのだ。


 現在、露店の近くのベンチに座り購入したジュエルチェリーを広げ。


「ユーリさん。どうぞ」


「ありがとう」


 イナホに食べさせて貰っているのだ。


「もぐもぐ……このシャキシャキ感がなんとも……」


 ア○スの実のミニバージョンみたいな形状と食感で旨し。


「ヘタはここに捨てて下さいね」


「分かった。でも、捨てる前にちょっと遊ぼう」


「遊ぶ?」


「うん。ヘタを口の中で何個結べるかをしてね」


「そういえば、ギンカさんがよくやってますよね。前に4個結ぶ所を見せて貰いましたよ」


「そうそう。だから2人でやってみようと思ってね。キスの練習にもなるらしいし」


 だから、元々1つは結べた俺は2つイケる気がするのだ。


 毎日やってる訳だから俺のキスの技量を舐めないで貰いたい。


「面白そうですね。やりましょう」


 俺たちは、ヘタを口に入れて挑戦開始。


「もごもご……まずは1つ目」


 1つは、予想通り。あっさり結ぶことが出来た。


 さて、本題の2つ目に挑戦してみよう。2つのヘタを口に含んでと。


「……2つ目も出来た」


 思いの外あっさりと2つイケたよ。ギンカに鍛えられた影響かな?


「更に3つ目……」


 結局、4つは出来なかったけど、3つはイケる事が分かったよ。


「私は、1個でも無理そうです」


 そう言って、ヘタを乗せたピンクの舌を見せるイナホ。


「………」


「ユーリさん?」


 これは仕方ない事だと思うな。イナホが可愛いのが悪い。


 俺は、座ったイナホが逃げないように左右を手で塞いだ壁ドンのベンチバージョン。


 俺がイナホへと覆い被さる様な形となった。


「イナホ。今から2人で結べるかを挑戦しよう」


「えっ? それは一体……んんっ!?」


 ヘタを口に含んだ状態でキスをする。今回は、自分の口の中で結ぶのではなく、イナホの口の中で結ぶのだ。


「んんっ!んっ!んぁ!?………」


 最初は混乱していたイナホも次第に受け入れて、お互いの舌を絡ませながら挑戦する。


「出来たな」


 長いキスを終えて、俺たちの間には一筋の糸が煌めいた。


 そして、小さく開いたイナホの口の中にしっかりと結ばれヘタが俺たちの成果を示していた。


「………」


 口を開いたまま蕩けているイナホ。


 ふう〜〜っ……このまま食べても良いのでは?


「ばっ、バカップルだ!」


「「っ!?」」


 突然聞こえてきた声で俺たちは正気に戻った。


 馬鹿な!? ちゃんと認識阻害とか色々かけた筈だぞ!? ここで行為に及んでもバレないくらい強力な奴を!!


 俺は、声のした方を確認する。


 そこには居たのは10代の少年で、こっちを指差し驚きの表情を浮かべていた。


 周囲の人たちも彼の声で気付いたらしく、こっちを見ながらコソコソと内緒話をしている。


 だから、かなり気まずい……あれ?


 俺は、少年の指指す方向に違和感を覚えた。よく見ると少し右へとズレている様な。


「まさか……」


 俺は、隣にもう一つベンチがあったのを思い出して見る事にした。


「なっ!?」


 するとどうでしょう?


 そこには、キャンディーキスならぬジュエルチェリーキスに熱中するバカップルの姿があるではないですか!


「ほっ、本物のバカップルだ!」


「私たちも人のことは言えないですよね?」


「まぁね。でも、魔法で誤魔化している分、まともさ!」


 まともな奴は、外で魔法を使ってまでイチャイチャしたりしないと思うが、それはこの際置いておこう。


「傍から見たら私たちもこんななんですね……」


「確かに……」


 俺とイナホは何とも言えない顔になった。


「仕方ない。場所を移そう」


 気分を取り直す為に、再びデートを開始した。


 …


 ………


 ……………開始した筈なんだけど?


 俺たちの側には、未だにバカップルの姿があったのだ。


「おかしい……」


 定番のデートスポットなら理解出来るが、何故マイナーな店に入っていてもやって来るのだろうか?


 しかも、俺たちと同じ様にパフェを注文をして、恋人にあ〜んするのも一緒なのだ。


「もぐもぐ……ふぁ〜、甘いです」


 パフェの甘さに蕩けるイナホも可愛いな。


「それで、どうします? 屋敷に帰って、平穏なる小世界(イレーネコスモス)に籠もりますか?」


「確かにそれだと新婚さんごっことかも遠慮なくやれるから嫌じゃないけど。今帰ると負けた気がして嫌だな」


 そう思っていたら、店員のおばさんの声が聞こえてきた。


「アンタら、まだ呪いは解けないのかい?」


 はい? 呪いですと?


 どうやらその言葉は、バカップルに向けられたものらしい。


「ええ、そうなんです。でも、嫌じゃないのでそのままですが」


 マジだったよ。どんな呪いだよ!


「でも、不思議なのよね? この呪いは、近くにいるバカップルと張り合うって奴なのに相手が見当たらないのよ」


 女性の話だと、彼ら2人が揃った時、範囲内に入った最もバカップルな連中と競う様な行動を自然と取る様になるらしい。


「ほう。彼らの近くのバカップルねぇ……」


「あのっ、それって……」


「俺たちか! / 私たちです!」


 ふっ、彼らの呪いにバカップル認定された様だ。


 彼らがイチャイチャに気付いて無いのは、他人が気付かない様に魔法を使っているからだ。


「あれ? と言う事は、公園でイナホにした場合……」


「っ!!」


 カップを見ながら想像してしまったイナホの顔が真っ赤に染まった。


「危ねぇ! 他人を巻き込む所だったわ!」


 さすがの彼らもそこまでしたら公然猥褻罪で連行されたかもしれない。


「呪いなら断ち切れば付いて来ないのでは?」


「ハッ!!」


 確かに、イナホの言う通りだ。早速、愛用の剣を針に変化させて出す。


「プチッと」


「「っ!?」」


 高速で背後に移動して刺してみた。


 鑑定してみると呪いの表記はないから解けた様だ。


 試しに、イナホと2人で同じドリンクを飲むも彼らに変化はない。


「よし、成功だ」


「これで存分に色々出来ますね」


「あぁ、そうだな」


「なら、今度こそ楽しいデートを続けましょう」


 2人で店を出るも彼らは付いて来ない。お互いに顔を見合わせて笑いながらデートを再開した。


 その後、イナホの要望で弱点克服の為にゴンドラに乗って水路巡りしたり、ペットショップに獣たちと戯れに行ったよ。


 そして、最後当然これだ。屋敷のイレーネコスモスに引き篭もり。


「さすがに恥ずかしいです!」


 裸エプロンになったイナホは、必死に要所を尻尾で隠す。


「隠しちゃダメだよ。それが正装だからね!」


 何だかんだと理由を付けて裸エプロンのイナホと新婚さんごっこを楽しんだよ。

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