そうだ! デートに行こう!
俺は、定期的に嫁たちとデートをしている。
結婚しても日常の中に変化は大事だと思うし、何より凄く楽しいのだ。
デートといえば、男性がリードと考えるかもしれない。
確かに、デートは男の見せ所とも言うし、初めての時はそれが良いと思う。
でも、仲が少し深まった後は2人で決める事をオススメするよ。
なんせ、2回楽しめるからね。
まずは、資料を広げてお互いに何処へ行きたいを決めてみよう。お互いの興味がある趣味に付き合って貰うのも一興だよ。
そうやって、デートする前からあそこに行きたい何処に行きたいと考えるだけで、ワクワクが溢れて楽しくなるんだよ。
当日、メインは1つ。多くて2つ。後は自由で行ってみよう。
食事するなら評判の店に行くも良いし、なんなら偶然立ち寄った店に2人で冒険してみよう。
その店が酷かったらどうするかって?
その時は、一緒に文句を言えば良いのさ。それもまた楽しいものだよ。
デートは、計画を練る時間と行う時間の2回の楽しいが待っているのさ。
という事で、今日はイナホとデートします。
場所は、ラグス王国の商業都市ウェン。水に育まれたこの街は、デートスポットとしても最高なのだ。
尤も今回は俺の都合でここになっちゃったんだけどね。
「それで家族向けの新作ゲームを考えるのを手伝ってくれと?」
「ああ、売り上げは半分渡すから今回も頼むよ」
場所は、馴染みのゲームショップ。
「コンセプトは、旅などにも持ち運び出来て老若男女楽しめる物だ」
ここの常連客な上に店主と意気投合した結果、たまに新作のアイディアを頼まれるようになったのだ。
合同で作成した物は、セリシールの雑貨コーナで委託販売もさせて貰っている。
「持ち運びねぇ〜」
店主の言葉に持ち運びといえばトランプというイメージが浮かぶ。
そういえば、修学旅行の夜に大富豪したのをよく覚えているよ。あとで知ったけど、大富豪専用カードとかもあるらしいな。
他にも色々、ウノとか、ドブルとか……。
「絵合わせゲームなんてどうだ?」
「絵合わせかい?」
「ああ、カードに複数のマークを書いてね。場に出したカードのマークと手札マークに共通したものがあったら宣言した後に手札から場に出すんだよ」
つまり、トランプゲームの『スピード』。あれの複雑なバージョンみたいなやつだね。
「材料も安価だし。マークも単純なものにすればいい。変化が欲しいなら大小といった大きさを変えればいいさ」
「なるほど。昔からある単純なゲームじゃが意外と出回っておらぬな。それに失敗しても損害は少ないしの。どれ、いっちょ試作でも作ってみるかな」
そう言って、店主は奥の工房へと引っ込んで行った。
俺は、自分の時計を確認する。そろそろ待ち合わせの時間に近付いていた。
「爺さん。俺は、デートの待ち合わせだからもう帰るわ」
「おう。1週間ほどしてから来んしゃい。それまでには、製品として出せるレベルに仕上げとくからのう」
「分かった。またな」
声だけ返ってきた店主に挨拶をして、俺は店をあとにした。
デートといえば待ち合わせ。別に一緒に出ても良かったけど、プレイヤーに寄るから先に出たのだ。
彼女には、使い捨て登録型の転移アイテムを持たせていたから一人で来れるだろう。
俺は、目的地である噴水広場にやって来た。
「速すぎたな。……あれ?」
噴水広場の時計を確認すると30分前を指していた。これは、店を出る時に見た時間だったのだ。
俺は、再び自分の懐中時計を確認する。こっちは、15分前。
どうやら、俺の時計が進んでいたらしい。
そういえば、速めの行動とかいって進めた気がしなくもない。
「気長に待つかな」
最初はじっとしていたが、暇過ぎるので、俺は噴水を一周することにした。
「おっ? もう来てるじゃん、イナホ」
丁度、噴水を半分回ったくらいの所でイナホが来ていることに気付いた。
ピンクのワンピースに白のカーデガンといった春物の衣装を身に纏っている。
それが、元々の容姿と合わさってかなり可愛い美少女を作り上げていた。
「これは速攻近付いてハグせね………うん?」
俺がイナホに声を掛けようとしたら彼女側にやって来て話しかける男性2人。
最初はイナホも丁寧に相手をしていたが、次第に嫌がる態度を見せ始めた。
それに対して男たちは、強引に誘おうとイナホへと手を……そこで、俺は転移した。
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イナホは、ナンパ男たちに辟易していた。
「なぁ、一緒にどうだ? さっきから熱心に誘ってあげてるだろ?」
「そうだぜ。俺たちがこんなに優しくしてるってのに」
どうしてそうやって上から目線なんでしょう。正直、理解に苦しみます。
「待っている相手がいるのが分からないのですか? 何度も言いますがお断りします」
ここは、やはりはっきり告げた方が良いでしょう。今まで暈して来たのが間違いだったかもしれません。
「あ゛あ゛? 女風情が調子乗るなよ!」
「そうだ。ちょっと可愛いからってふざけるな!」
好きでもない相手から可愛いと言われても嬉しく有りませんね。
それより逆上し始めたので、武器を抜く準備をしましょう。
ポシェットの中には、愛用の銃が仕舞ってある。ステップと同時にこれを抜くだけで事足りそうだ。
後は、掴み掛かってきた所を狙うだけ。
「気に食わねぇ!ちょっとこっちにーー」
「うちの嫁に何をするつもりかな?」
男が私に掴みかかろうとした瞬間、彼らの首元に大鎌の刃が当てられていた。
私は、彼らの背後にいる人物の名前を言う。
「ユーリさん!」
「やっほ〜、イナホ。待たせたね。今日も凄く可愛いよ。後で、ハグさせて!」
「はい、喜んで!」
私は、彼を見て安心したので、後は全て任せる事にした。
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怒りに任せて形状を変えたら大鎌だった。死神よろしく殺せと言うことなのかもしれない。
「よし! イナホの許可も貰ったし、全力で愛でよう!」
俺は、そう言いながら大鎌にしたフラガラッハの刃を男たちの首に当てて少し引いてみた。
「「ひぃ!?」」
男たちからは、小さな悲鳴があがった。少し首の皮が切れたからかもしれない。
「それでもう1回尋ねるけど、俺の嫁に何しようとしたのかな?」
「そっ、それは……」
掴みかかろうとした男がゴニョゴニョと言い吃る。
「良い機会だから教えてあげるよ。こんなに可愛い子に相手が居ない方が珍しいから止めるべきだな。それとイナホは人妻な上に子持ちだよ」
「「ええっ!?」」
イナホが子持ちと聞いて衝撃を受ける男たち。とりあえず、大鎌を少し引いて落ち着かせた。
「さて、そこまで言ったら旦那が何をするか分かるよね」
少し英雄覇気も混ぜて威圧すると2人は互いに抱き合い怯えだした。
「うひょう!!」
近くのベンチでは、座って絵を描いていたお姉さんが立ち上がり歓声が上がった。
どうやらBL好きらしい。落ちたボードには、男同士の営みが描かれている。
どうやらそこで通行人を組み合わせてスケッチしていたらしい。
「あっ、そうだ。君たちが有る事をしてくれてら許してあげるし開放してあげるよ」
「「本当ですか!?」」
男たちもこの提案には喜んだ。だから、悪魔の提案をする事にした。
数分後。
「「………」」
男たちは死んだ魚の様な目をして地面に座り込む事となった。
「滾る! 滾るのよ! あひゃひゃひゃひゃ!!」
それに対してお姉さんはというと奇声を上げながら筆を走らせるのだった。
「さて、行こうか。イナホ」
「あっ、はい」
イナホに手でしていた目隠しを取り、恋人繋ぎをして歩き出した。
「一体、何をしたんですか?」
「BL好きっぽいお姉さんの前で、無理やり男同士のキスを披露させた。相当嫌がっていたけど、事前に拒否出来ない様に契約までさせたからね。するしかなかったんだよ」
我ながら悪魔の所業だと思うよ。
ちなみに、効果は1日。デートを邪魔して来たら更に酷い目に合わせてやろう。
「イナホ。まずは、人気のお店に行こうよ。あそこのアイスが絶品らしいんだよね」
そうそう切り替えてデートを楽しむとしよう。
「その後、花屋に寄って良いですか? 母さんに花をプレゼントしたくて」
「ok。今日1日、めっちゃ楽しむぞ!」
「はい!」
俺とイナホは、2人だけの楽しいデートに繰り出した。




