マヨネーズ
新鮮な生卵を入手出来たので以前から計画していたマヨネーズを作る事にした。
何時もはスーパーで市販品を買っていたがここは異世界。当然ながら存在する筈がないので自作する事にした。
マヨネーズというのは実は材料さえ有れば簡単に作成が可能なのだ。
作り方は、混ぜるだけの簡単作業。
まずは、『卵黄』、『オリーブオイル』、『お酢』、『塩』、無くても良いが『胡椒』を用意する。
それをボールに全て入れ均一にかき混ぜるだけ。
だが、均一に混ぜるのは難しく苦労するかと思ったがアイリスがやってくれた。
スライム状態になったアイリスは材料をシェイク。一瞬でマヨネーズは完成した。
「よし、後は任せろ」
念願の完成したマヨネーズが完成したのでそれを使った料理を作る。その結果、異世界での料理に革命が起こった。
塩と胡椒のシンプルな料理が多かった所に濃厚なマヨネーズ。
今回はトリ肉にみりんと砂糖で造ったソースを塗って焼いた物を用意する。
これに醤油を加えるとテリ焼きなのだが、今は無いので仕方ない。醤油が出来たら改めて作ろう。
それでは、トリのテリ焼き(偽物)にマヨネーズを乗せて提供。
「旨っ!!」
意外にも美味かった。甘過ぎるけど他に比べたら断然美味い。
「凄い、美味しい!!」
「これ素晴らしいのう!!」
「この調味料は何なんですか!?こんな繊細なものがあるなんて!」
何故か、ガイアスの爺さんとマリーが参加してる。厨房を借りに行ったら付いてきたのだ。
そして、完成すると自分たちの分も当然要求。
アイリス以外の反応も知りたかったので出したが、2人の反応を見るに好評の様だ。
「上手く作れて良かったよ」
料理人スキルが有るので失敗する気は無かったけど、異世界の調味料にも適応するか心配だった。
結果は見ての通り大成功。
これなら醤油や味噌も問題無く出来るだろう。ケチャップなんかもイケるかもしれない。
「ホント、美味しくて幸せ〜」
アイリスはまるでリスの様に口いっぱいに頬張っている。相当気にいったみたいだ。
「これはワインにも合うのぉ〜」
いつの間にか、ワインを用意して飲んでいるガイアス爺さん。
ズルい。俺にも分けろ。こっちに来てまだ一度も酒を飲んでないんだよ。
酒を催促してみたら思いの外アッサリとくれた。さすがは竜なだけ有って心が広い様だ。
「これがユーリさんの祖国の味なんですね」
「これでもまだ微妙だがな」
マヨネーズは濃厚で美味いのだが、それを単体で味わっているだけなのでやはり少し物足りない。
しかし、少ない材料で良くここまでの物が出来たものだ。やはりスキルというのは偉大な様だ。
「これ以上美味しくなるの!?」
「そうだよ」
「帰ったら、醤油に味噌と作らないとな〜」
「手伝う!」
「おう。手伝ってくれ」
「ふむ。いっそこっちに住んで料理を作らんか?」
「それは、止めとく。ここの料理人に恨まれそうだし」
今だって好意で貸してくれてるだけだし。
「帰りにマヨネーズのレシピを渡しておくから勘弁してくれ」
「さようか」
少し残念そうだが仕方ない。
まだ、この世界に慣れていないしな。
「そうそう、マリーや。手続きは終わったのかのう?」
「それでしたら大丈夫です。ユーリさん、予選は明日なので頑張って下さいね。予選の勝ち抜きも賞金が出ますので」
賞金とな。少しやる気が出てきたぞ。
「そうじゃよ。お主に賭けるんだから頑張って欲しいものじゃ」
賭けるんかい!
……自分自身に賭けるって出来るのかな? 後で聞いてみよう。
「予選の内容なんですが、サバイバルバトルです。最後までステージ上に残っていれば勝利です」
「本命は次の日じゃからな。予選なんぞさっさと終わらせたいってことじゃ。シンプルに勝敗が分かるのもええ」
「なら、何とかなりそうだな」
時間まで逃げまわって少人数になってから戦えばいい。
「でも、いつも通りでは面白みが少ないのが……そうじゃ」
何故か、俺の方を見た。
「面白い事を思い付いたわい」
「おい、待て。あからさまに嫌な予感しかしないんだが!」
「大丈夫。ルールは変わらんから」
「ルール以外で弄るつもりか?」
変な事されても困る。
「いや、一言二言宣言しようと考えただけじゃ」
それくらいなら大丈夫だろう。
後日、この日の自分を殴りたいと思うとは露知らず、この時はそう思っていた。