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記憶を辿る旅に出た

 ユーリの状態は、1週間で戻ると聞いていたにも関わらず、2週間目になって戻らない事からリリィさんの仮説は正しかった可能性が出て来た。


 その為、食堂のテーブルに集まって、ユーリ抜きでお嫁さん会議をする事になった。


「私は、解除用のポーションを作る事にするわ。ギンカちゃん、協力してくれないかしら。物によっては、貴女の嗅覚が必要なの」


「分かりました。移動もお任せ下さい。私は、本来のご主人様が好きですから全力を尽くします」


「助かるわ」


 リリィさんとギンカは、ポーションを作る事にした様だ。


「でしたら、クエストは私たちに任せて下さい」


 そう言って、リリスたちが立ち上がった。


「ギルドマスターからユーリへ国内におけるSランククエストの依頼が届いています」


「だったら私もーー」


「私が同行します」


 珍しい事に、そう言ったのはマリーだった。


「クエストの内容は、討伐。情報が少ないのはいつもの事ですが、状況が緊迫しており危険な事は確かです。なので、移動と火力を考えて、私が同行します。それに、ユーリさんは私たちが傷付くのを好みませんからね」


「それなら、私も行くよ。転移の扱いは、ユーリやギンカからお墨付きを貰ったし」


「「それは、ダメよ」」


 リリィさんとマリーにきっぱりとダメ出しされた。


「どうして?」


「アイリスちゃんには、ユーリ君と一緒にやって欲しい事が有るの」


「私は、リリィさんに事前に聞きました。これは、ユーリさんと1番長く過ごしていて、彼を良く知るアイリスだからこそ出来ることです」


「私だからこそ?」


 2人は一体、何を話したのだろう?


 どうやら、ユーリとの関係が深い人物にしか出来ない事の様だ。


「なら、家の管理は、私たちに任せて下さい」


「子供たちもいつも通りに見ていますから安心して下さい」


「ミズキ。フィーネ……」


「私たちも学校を休んで協力しますから、ユーリさんをよろしくお願いします」


「イナホちゃん。それに皆も」


 イナホちゃんに賛同する様に、他の子達も頷いていた。


「なら、私は竜神殿にある大図書館にいってきます。あそこには、古今東西、色々な書物が納められているの。

 もしかしたら、ポーションが出来るより先に、他の手段が見つかるかもしれない。

 それに、事情が事情なだけに、ルイ様たちも協力してくれるかもしれないでしょ?」


「でしたら、私からも母様宛にお願いの手紙を出しておきます」


「ありがとう、マリー。助かるわ」


 エロースは、ルイ様たちに協力して貰い書物を漁る事にした様だ。


「それでは、行動を開始しましょう。皆さん、無茶はしないように。それで悲しむのは、戻ったユーリさんですからね」


『は〜い!』


 こうして、私たちはユーリを戻す為に、各自で動き出したのだった。


 私の任されたのは、ユーリとの思い出の地を回ることだった。


 理由は、ユーリ自身に戻りたいという意志を持たせる為だそうだ。


 それで、ユーリと1番関係が深い、私が選ばれた訳だった。


 でも、これで元に戻らなくても大丈夫。


 確実な手段として、リリィさんが調合する解除ポーションがある。


 だから、気楽に回る事が出来る。


 また、この行動も一応無駄にはならないそうだ。解除ポーションを飲んだ時に、効果の後押しをしてくれるんだとか。






 最初に行った場所は、竜王国の闘技場。マリーをお嫁さんにする事が決まり、リリスたちとの出逢いが生まれた地だ。


 竜王祭の時に来ただけだったけど、いつもこんな感じなんだ。


 ステージ上では、武芸者同士の激しい戦闘が繰り広げられており、それを見たさに闘技場は大賑わいだった。


 また、賭け事も公式で行われているらしく、観戦者の声援には力が入っていた。


「アイリスママ。ステージのお兄ちゃんたちは喧嘩してるの?」


「そういえば、ママって呼ばせてたの忘れてた……。ユーリ。次からは本来の言い方通りに、アイリスって呼んでくれないかな?」


「うん? 分かった」


 ユーリは、聞き分けの良い子だ。


 ユーリって、昔からこうだったんね。


「それとね。あのお兄ちゃんたちは、喧嘩してるんじゃないよ。自分の強さを証明する為に戦っているんだよ」


「つまり、スポーツをしてるってこと?」


「うん、それであってるよ。昔、ユーリもあそこで100人相手に戦った事もあるんだよ。しかも、一瞬で全員倒したよ」


「そうなの? ローシュに聞いたけど、大人のボクってやっぱり強いんだ……」


 おっ、これは少し戻りたくなったかな?


「そして、その後も戦い続けた結果、フィーネたちを連れ帰ることになったんだ」


「フィーネママたちを?」


「うん。そこからうちの家族の始まりかな?」


 その後、この試合が終わるまで観戦した。


 ユーリもしっかりと男の子らしく、戦いを熱い眼差しで見詰めていた。


 次に向かった場所は、ラグス王国の砂漠にあるオアシスだ。ユーリが、ギンカを拾った場所である。


 私は、妊娠中で同行出来なかったけど、後日、ユーリが連れて行ってくれた。冬でも気温が変わらないこの場所にテントを張って、キャンプをしたのだ。


「アイリス! 水がとっても気持ち良いよ!!」


 オアシスから少し離れた砂漠に転移して、ここまで歩いて来たから泉の水が気持ち良いみたい。ユーリは、水浴びしながら凄くはしゃいでいる。


「あんまり遊んじゃ、ダメだよ〜。そこは、砂漠を抜けて来た人たちの飲水にもなるんだからね」


「は〜い!」


 その後、泉から上がったユーリを拭いて上げて、ラグス王国の町を順番に回ってみた。


 その中でも、商業都市ウェンのゲームショップ『プレイヤー』での反応は凄いものだった。


「凄い! 知らないゲームが沢山にある!!」


「そこのゲームなら一通り屋敷にあるよ。ユーリが良く買ってくるから」


「本当に!?」


「うん。大人のユーリは、色々頑張ってるからお金も沢山持ってるしね」


「凄い!!」


 こんな風に、ユーリの大人への憧れを押すことにした。


「綺麗……」


「それが欲しいの? 買ってあげようか?」


 ユーリがガラスケースに入れられた水晶で出来た竜の駒を見詰めていたので聞いてみた。


「えっ? いや、その……」


 ユーリの顔は、私の顔とガラスケースの竜とを行き来していたので、「この水晶の竜を下さい」と店員に告げた。


「良いの!?」


「良いよ。私は、ユーリから色々貰ってばっかりだからね」


 良く考えるとユーリには貰うばかりで、何かを渡した事なんて殆どない気がする。


「大事にします!」


 私が店員に代金を支払い竜の駒を紙袋に入れて渡すと、ユーリはとても大事そうにそれを抱えていた。


 それからまた移動を続けた。


 エロースに出逢った竜神殿。


 ルイさんの指示により、手の空いてる天使族を集めて片っ端から書物を調べていた。


 後で、お礼とかが大変そうだなぁ……。


 リリスたちの故郷であるエルフの隠れ里。


 不思議な事が起こった。ユーリと仲が良くないロロさんが、ショタユーリには優しくしていた。


「子供に罪は有りませんからね。いつもの彼にならリリアーヌを奪った恨みで攻撃し困らせますがね。そう新しく覚えた魔法を……」


「結局、困らせてるじゃない!」


 ロロさんは、ラファエラさんに叩かれた後、引きずって行かれた。


 どうして、2人は別れないのか不思議で仕方ない。


 そして、ユーリが少し怯えてた。このまま戻らなかったどうしてくれるの!


 如月さんたちの故郷である和国。彼女たちに出逢った場所ではないが、ユーリの故郷にも近いらしいのでそっちに連れて行った。


「美味しいねぇ〜」


「うん!」


 ユーリの行き着けの和菓子屋に入って、お菓子を堪能した。


 それからも、初クエストに行った場所やダンジョンなど色々な所を回ったら夜になっていた。


「今日は、屋敷じゃなくて、この宿に2人だけで泊まるよ」


 新婚旅行で来た宿に空きがあったので泊まる事にした。


「でっ、でも、アイリス。お金大丈夫? さっきから贅沢ばかりさせて貰ってるけど!」


「大丈夫。大丈夫。普段、お金はあまり使わないからね」


 宿は、高級宿なだけあって少し高かったが、財布には影響が殆ど無かった。


 妖精の箱庭(フェアリーガーデン)では、全てが自給自足で補えている。だから、お金を使う機会なんて、外食か衣服くらいなもので貯まっているのだ。


 通された部屋には、布団が一組だけ敷いてあった。親子だと思われたらしい。


 その後、一緒にお風呂に入って、そうそうに床へついた。


「お休み、ユーリ」


「お休みなさい。アイリス」


 灯りを消して、私たちは眠りについた。






 そして、私は夜中になって目を覚ました。隣から聞こえる声を殺した様な泣き声が聞こえたからだろう。


 声の主は、やはりユーリだ。


「パパ……ママ……会いたいよぉ……」


 私に背を向けて寝るユーリからは、会えない両親を呼ぶ声が聞こえてきた。


 どうやら、両親に会えない事に気付いていた様だ。


「大丈夫だよ、ユーリ」


 気付いたら自然と手が伸びて、ユーリを背後から抱き締めていた。


「アイリス……」


「寂しいなら私が埋めてあげるよ。私は、貴方のお嫁さんだからね。それでも、足りないなら沢山のお嫁さんと赤ちゃんたちを思い出してみて。両親以外にも貴方を待っている人たちのことを」


 ユーリが家族をどんどん増やすのは、無意識下で寂しさを紛らわす為じゃないかとモモちゃんが言っていたのを思い出した。


「………」


「とりあえず、眠るまで私がこうしててあげるからね。それに夢でなら直ぐに両親に会えるよ」


 気休めにしかならないけど、そう言ってユーリを納得させる事にした。


「だから、今は、ゆっくりと目を閉じてお休み。私の愛しい旦那様」


「うん……」


 ユーリは泣き止み、再び眠りに付いた。それを確認してから抱き締めたまま、私も眠りに付いたのだった。






 翌朝。


「う〜ん、ユーリ? ユーリ!?」


 起きると腕の間にユーリの姿が無かった。私は、慌てて布団の中を確認するもユーリの姿は無い。


 私は昨日の事が蘇り、他の方法にすべきだったのかと後悔した。


「おはよう。アイリス」


 でも、それは直ぐに終わる事になった。私は、声のした方を向くと。


「いや〜、面倒かけてすまん。まさか、薬草を間違えるとは思わなくって……。次からは、鑑定してから使う事にするよ」


 大人になったユーリの姿がそこにはあった。


「ユーリ!!」


「おわっ!?」


 私が飛び付くとユーリはバランスを崩して倒れ込んだ。その上に私が覆い被さる形になっている。


「いててっ……」


「ユーリ……」


 懐かしいユーリの姿に涙が溢れてきた。どんどんユーリの顔がぼやけていく。


「ちょっ!? 泣かないで! 俺が、俺が悪かったから!!」


 ユーリは、手を伸ばすと私を抱き締めて慰めてくれた。


「心配かけて、本当にごめん。次からはもっと周囲の事も考えます」


「ホントだよ……」


「後で、ちゃんと埋め合わせもするよ。罰を受けろってならやるからさ。アイリス。泣かないで。俺は、アイリスの笑顔の方が好きなんだよ」


「……だったら、キスして」 


「えっ?」


「大人のユーリとはいつもしてたのに、2週間はして無かったからその分をして」


「………了解」


 私たちは体勢を変えて、ユーリが上になるとお互いに求めてキスをした。凄く幸せな気持ちに包まれる


「んんっ……ユーリ、お帰り」


「うん、ただいま!」


 久しぶりに見た大人のユーリの笑顔は、とても懐かしくてまた泣きそうになったのだった。

おかしい。若返り編は、3話に纏める筈が越えた挙げ句、最後は長くなり過ぎました。

いつもより長くなって、すみません。誤字も多かったかもしれませんので、報告頂けると嬉しいです。

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