ユーリが若返った日 中編
こんにちは、アイリスです。
今、我が家では大変な事が起こっています。
とりあえず、妖精の箱庭の住人から店の従業員まで、ユーリの事を知っている関係者を全員緊急召集しました。
その場で、今、何が起こっているか説明します。
「ユーリが、若返ったみたい」
『若返った〜〜!?』
「ひぃ!?」
皆、驚きを隠せない様です。その声に怯えた男の子が、私の後ろに隠れました。
そう、何を隠そう、この男の子こそが若返ったユーリ。
本人に確認した所、自己申告で現在10歳だとか。
ショタのユーリも可愛いね。
「ごめん、怖がらせちゃったね。大丈夫。大丈夫だよ」
「うぅ……ホント?」
涙目の上目遣いで、ショタユーリは聞いてきた。
私は、彼を安心させる為に、しゃがんで抱き締め、背中を撫でる。
「ホント!ホント!」
「……うん、お姉ちゃんがそう言うなら信じる!」
やべぇ……ショタユーリの上目遣いはマズいわ……襲いそう。
アディさんが、特にショタ好きな理由が分かった気がする。
それに、ユーリがイナホちゃんたちの上目遣いに弱いのも理解した。
だって、破壊力抜群だからね!!
「あの〜、今のユーリさんの状態って……?」
エロースが、ユーリを心配して聞いてきた。
彼女の手にはロープが握れており、その先には、手足を縛られたアディさんが転がっていた。ついで、喋らない様に口枷までされている。
「その前に、アディさんについて聞いていい?」
流石に、いつの間に拘束したのかが気になる。集めた時は、普通だったし。
「すみません。今のユーリさんを見るなり、襲いそうだったので」
「そういえば、若返ったと聞いた瞬間に、「合法ショタだと!?」って、声を上げてましたね」
マリーが言うなら間違いないのだろう。
えっ、何っ? アディさん、マジで襲う気だったの? 貴方には、ローシュ君が居るよね?
ほら、ローシュ君が……諦めた目をしていた。
ねぇ、アディさん。貴方、あの子に何をしたの!?
「とりあえず、そのまま放置で」
「その予定です」
「それで、ユーリさんの状態は?」
「うん。それは、本人に聞いた方が速いかな? ねぇ、ユーリ君。今、何歳か皆にも教えてくれるかな?」
「うん? 良いよ。僕の歳は、10歳だよ」
「10歳ですか……それにしては幼過ぎでは? 確かに、ユーリさん自体、童顔で若く見えますけど……」
マリーの疑問も正しい。同じ年齢である悪魔族の子供たちより幼く見えるのだ。
「あっ、それは向こうの年齢換算だからじゃない?」
私たちの疑問は、リリィさんによって解決した。
「あっ、なるほど。確か、向こうでは12ヶ月周期らしいですね」
「つまりは……7歳くらいってとこかしら」
なるほど。その年齢なら納得が行く。
「なるほど。見た目は子供、中身は大人なんですね。じゅるり……。美味しそうです」
「わぷっ!?」
ショタユーリがアディさんに抱き締められて、胸の中に埋もれてしまった。
「はっ? えっ? はぁーっ!?」
エロースが、自分の手元と母親を交互に見ながら、驚愕の表情を浮かべていた。
アディさん。あの状態から短時間で、どうやって抜け出しただろう。ショタ好き恐るべし……!!
「#$%^&!?」
「あんっ!」
ショタユーリの抵抗を受けて、アディさんが艶っぽい声を上げた。
そして、抵抗は次第に弱くなり……。
「………」
「ちょっ!? アディさん! ユーリの息が止まってる!!」
「えっ? あらあら、どうしましょ?」
「とりあえず、離して下さい!」
アディさんからショタユーリを無理やり引き離した。どうやら胸に溺れて、息が出来ずに気を失ったらしい。
鑑定結果によるとただの気絶になっていたので、ほっとした。
「母さんは、やり過ぎなんです! というか、どうやって縛られた状態から抜けたの?」
「どうって……こんな感じにぬるりと……」
アディさんは、今からエロースにお説教されるんだろうな。
まぁ、お説教しても懲りずに、またやるんだろうけどね。
「それで状態……というか、年齢は分かったのですが、そもそも何が原因なんですか? また、うちの母が原因ですか?」
「地味に酷いわね、リリスちゃん。お母さんが、そんな事する訳ないでしょ? やるなら、もっと面白おかしくやるわ!」
「リリィさん……」
私の頭の中には、以前の性別変換薬が頭を過ぎった。
「それでは、一体何が原因で?」
「ユーリ君が、MPポーションの調合をミスったのよ」
リリィさんが、今回の原因について見解を述べた。それに対して、知恵者として呼んできたルイさんが疑問を抱いた様だ。
「えっ? MPポーションのミスで? でも、その場合は記憶が消える事も有ると聞くけど、若返るなんて有り得るの?」
「いえ、普通は無いです。ただ、ユーリ君が作ろうとしたMPポーションは、材料が違ったみたいで……」
そう言って、リリィは研究室から持ってきた薬草を皆に見せた。
「これが、本来使う筈のアルトローズ。そして、こっちが間違えて使ったメルトローズよ。名前が似てるように、形状も似ているからね。ラベル分けしてたみたいだけど、使っちゃったみたいなの」
「なるほどね。メルトローズには、退化という効果が有るから、ユーリ君の現状はその影響かしら?」
「ええ、多分そうだと思うわ」
「でも、ユーリさんは、異常なまでにレジスト高いですよね?」
「確かにそうだけど、前の媚薬の件覚えてる? 自分で効果を受け入れてしまった場合、ちゃんと発動するのよ。今回も同じ。自分で実験と称して受け入れてしまったと思うわ」
あ〜っ、ユーリなら有り得そうだなと思う。
周囲の皆も同じ思いらしく、何とも言えない表情をしていた。
「それで、どうやったらユーリは戻るの?」
「そうです。そこを教えて下さい!」
「解決策は、いくつか有るわよ。
1つ目は、時間の経過。この薬が消えるのを待つのよ。幸い、飲んだ量は少ないし、長くて1週間程かしら。
2つ目は、専用ポーションを飲ませる。使った薬草と対になる薬草でポーションを作り、彼に飲ませれば大丈夫。ただし、薬草集めに時間がかかるわ。
3つ目は、ユーリ君自身がレジストする。これは、今のユーリ君自身が、現状をしっかりと認識すれば自ずと解けるんじゃないかしら?
まぁ、こんな所ね。私のオススメは、1つ目。自然に解けるから放置で良しって考えを選ぶわ。だって、今ならユーリ君の過去を知れるし、今だからこそ出来る事も有るわよね?」
そう言って、私たちの顔をニヤリ笑いと見渡すリリィさん。
『………』
だからなのか、私たちの視線は自然にショタユーリへと注がれた。今だからこそ出来ること……。
「えっ、何? 僕、何か悪い事でもしちゃった?」
私たちの視線が集まった事で、挙動不審になっている。
こんな所は、小動物みたいで可愛いなぁ〜。
『自然で!』
皆の意見が一致した。