朝市
朝の街に喧騒が鳴り響く。
俺とアイリスは、朝市にやって来た。
アイリスは、従魔登録をしたから人型でもスライム状態でもオッケーになったが人型でいる。
街中だと人型の方が移動しやすいからだった。
後、俺が気にいっているかららしい。健気やわ。
スライム状態の抱き心地もなかなか良いのだが、確かに人型の方が好きだな。
「何を買うの?」
「まずは、大豆。これを大量に買う」
畑で作れなくは無いが、採取が面倒くさい。
やはり日本人、醤油に味噌が欲しくなる。
大豆が有れば、多少の知識に加え、料理人スキルがあるから大抵造れると確信している。
「次に魚介類。乾物でも構わないから購入」
海に行った事が無いから入手不可能。
ここは、陸地だが日干しや塩漬けにした物が出回るらしい。
そのまま食ってもいい。ダシを取るのもいい。用途は多岐に渡る。
「最後に、可能なら生卵。状態は、絶対鑑定で確認する事」
そろそろ卵料理が食いたくなった。
最初は、ニワトリ等の家畜を買おうと考えたが、場所を造っていないし。知識がない。
鑑定を絶対行うのは、細菌対策。
だが、それだけではなく新鮮かを調べる為だ。
かなり時間が経過した物も平気で売られているらしい。
「俺は大豆。アイリスは、魚介を頼む。卵は見かけたらでいい」
「了解!」
「道中、小さな問題でも発生した場合は、念話で連絡すること。絶対、一人で解決しない。ok?」
「任せて!」
「それじゃあ最後に、新鮮なモノを入手出来ればそれだけ料理が美味くなると思え」
「ホント!!」
「ホントホント!では、散開。気を付けて」
「いってきます!」
アイリスが人混みの中に消えて行った。
俺も大豆を探す。
……近場の店に聞いた方がはやいよな。
丁度、八百屋があるし。
「すいません!」
「らっしゃい!!何か入り用で?」
こういう時は何か買ってから聞くに限る。
人参、ジャガイモ、色々野菜があるがその中でも1つ、特に目を引いた。
鑑定。
名称:ラプリカ
状態:良好
説明:肉厚で少し辛みが有る。種は少ない為、調理しやすい。オススメは、細切りにして肉と炒める。仄かな辛味が肉との相性抜群。
パプリカやんと思って見たらこんなだった。
肉と相性抜群らしい。状態もいいからこれを買おう。
「ラプリカを15個下さい」
「まいど。銀貨3枚になります。袋はお持ちで?」
代金を渡しながらアイテムボックスのパネルを示す。
「アイテムボックスにお願いします。そうそう、大豆も欲しいですけど良い場所知らないですか?」
自然な感じで会話を繋ぐ。八百屋なら知ってそうだ。
「それでしたら、あっちの方に穀物屋がありやす」
知ってる様で場所を教えてくれた。
「助かります」
さっそく向かうと色々な豆や麦が箱に入れられて並んでいた。
おばさんが枡で売っている。一升いくらの売り方か。
名称:マーチビーンズ
状態:良好
説明:普通の大豆。応用が利く。利用手段多岐。
鑑定したのに、珍しくオススメが無かった。多岐に渡るからだろう。
名称:ナギサ麦
状態:良好
説明:良質な河川に自生する事もある。甘みが柔らかく、パンに使われる事の方が多い。オススメは、麺にしましょう。分類は、中力粉と薄力粉の中間なので。
今度は、ちゃんとオススメが出た。麺か……いいな!
よし、買えるだけ買おう。
「すみません。一升いくらですか?」
「これ全部中銅貨1枚だよ」
「でしたら、箱に入ってるマーチビーンズとナギサ麦6箱買うならいくらです?」
「妙な事を聞くね?う〜ん、金貨15枚かね?」
「じゃあ、金貨15枚で買います」
「お兄さん、ジョーダンはよしてくれ」
店のおばさんは、ジョーダンだと思ったらしい。
「本気です」
「えっ?」
「本気です。言い値通り、金貨15枚で買います」
金貨を机に並べて示す。
値下げ交渉なんてそうそう出来る物でない。
なら、相手に値段を決めさせた方が早い。
「呆れた。そんなに大量に買って何をするんだい?転売はよしてくれよ」
「大丈夫です。ちゃんと食べるので。転売もしません」
「なら良いよ。毎度あり」
無事ノルマを達成出来た。
買い物が終わったのでアイリスに合流しよう。
『アイリス。そっちはどう?』
『買い物はしたけど、ちょっとピンチ』
『何があった?』
『なんか、人に絡まれた』
『すぐ行く』
空間転移。
荷物を大量に抱えたアイリスが、3人の男に絡まれていた。
「よう、姉ちゃん。この後付き合え。この俺が声をかけるなんて相当だぞ」
「嫌だよ。それより邪魔なんですけど?」
ナンパか?
リーダー格の男は服装からしてそこそこの身分の様だ。
「兄貴!それより裏に連れ込んだ方が早くないッスか?」
「そうッスよ!兄貴に文句言える奴なんていやしないですぜ!」
アイリスに目を付けるとは良いセンスだ。
だがな……手を出すつもりならこっちにも考えがある。
トントン。
「誰だ、てめぇ?」
リーダー格の男の肩を叩くとこっちを振り向いた。
「その子の旦那だ。手を出すってんなら死を覚悟しろ」
笑顔と共に接触式空間転移。
男たちを上空に転移させた。
「あっ、ユーリ。あいつらは?」
「真上。地面に激突寸前まで放置予定」
「殺さない様にね。騒ぎになるから」
「分かってるって」
殺すつもりは元よりない。
「あっ、そういえば生卵も見つけたよ」
「マジでっ!?」
アイリスのバックから卵が4個出てきた。
鑑定。
名称:ニワトリの卵
状態:新鮮。細菌なし。
完璧だ。これで作りたかったものが出来る。
さっそく割れない様にアイテムボックスへ収納。
「「「うわぁああーー!!」」」
ちょうど男たちが落ちてきた。
空間制御。
重力制御を行い、地面まで数cmの距離で落下を止めた。
気が抜けてたのだろうか?グッタリしている。
男たちを放置して俺たちは帰路に就いた。