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初めての社交界

 コーリス伯爵とマナーやら色々練習する事1週間。実際は、平穏なる小世界(イレーネコスモス)とか使ったので、1ヶ月くらい練習した。


 そして、遂に本番の日がやって来た。


 会場はカリスさん所有の屋敷。そこに馬車で乗り付けるのが一般的だ。


 俺たちは、王宮から出して貰った王家の紋章が入った馬車に乗り込み夕暮れの街を進んで行く。


 いつもの買い物などの私用とは異なる為、馬車も気合いが入っていた。


「めっちゃ緊張する……。服装とか大丈夫だよな?」


 俺は手持ちの鏡で服装に乱れが無いか改めて確認した。


 そこには、いつも適当にしている黒髪をきちんと整えて、黒の礼服に身を包んだ自分自身の姿が写っていた。


 服装は誰が見ても一目で特級品だと分かる物だ。


 なんせ、シャツもボウタイ、靴すらもきめ細やかな細工が施されており、知識の無い俺ですらもただの高級品ではないと感じられた。


 それだけに、礼服を特注した店の気合いがしっかりと感じられる物だった。


「大丈夫ですよ。何処からどう見てもユーリさんは良い男に見えますから」


 そう言ってくれたのは隣に座るマリーだ。パーティーには原則ペアを連れて行くのが決まりな為、マリーが同行した。


 しかし、今日の彼女は何時もと少し違う。


「………」


「ユーリさん。私の顔に何か付いていますか?」


 ()()の容姿で、何時もと変わらぬ子供の様な可愛らしい仕草をしていた。


「いや、今のマリーにまだ慣れなくて」


「安心して下さい。少し成長した姿なだけで、私は私ですよ」


「とは言われても、違和感が……」


 今のマリーは幼女の姿ではなく、大人の姿にクラスチェンジ中。


 母親譲りのプロポーションと髪の色に合わせた緑色のパーティードレスを着こなし、大人の色香を醸し出していた。


 ドレスは、立食パーティー形式という事で動き易さを重視した様だ。スカートはミレモ丈と呼ばれる物で、ふくらはぎの半ばまでしかない。


 しかし、それは露出を押さえつつも上品でレトロな装いを演出していた。


「……露出?」


「うん? どうしました、ユーリさん?」


「マリー。ちょっと膝の上に座って」


「はい?」


 マリーは、困惑しながらも馬車の揺れに気を付けながら俺の膝の上に座った。


 俺は、ある違和感を感じていたのでその状態のマリーを触りまくってある事を確認する。


「マリーさんや……下着は?」


「………てへっ♪」


「可愛く言ってもダメだからね!」


 やっぱり履いてなかった! というか、上も付けてない!


「大人用は、用意して無いんです〜」


 マリーは、頬に手を当てて困ったアピールをし始めた。


 でも、彼女の顔は困った様に見えない。むしろ笑っている。


「他の人に見られたらどうするの! ってか、俺が襲ったらどうするん!?」


「その時は2人目を目指して励みましょう」


「この変態さんめっ!!」


 とりあえず、いつも通りにアイテムボックスから下着の予備を取り出して履かせる事にした。


 胸の方は、ニップルレスを貼っていたので良しとしよう。


「結局、最後はやるんですから履く理由有りますか?」


「何かの拍子で他人に見られたら嫌です」


「分かりました。私、ユーリさんのそういう独占欲的な気持ち嫌いじゃないので素直に履く事にします」


「お願いします」


「は〜い」


 俺は、マリーとの日常的な会話のおかけで緊張が吹き飛んでいた。


 まさか、これがマリーの狙いか?


 と思ったけど、本当に日常の一コマなので実際は分からない。


「というか、なんで大人バージョンになってるの?」


「それはユーリさん。パートナーに合わせる為ですよ。本来の姿だと身長差が有りますからね。もし、ダンスがあった場合、ユーリさんが合わせ辛いと思いまして。

 ついでに言うと300年後の容姿が多分これです。魔法をちゃんと調整しましたから」


「なるほど。それが、マリーの未来の姿か」


 確かに、納得のいく容姿だ。


 でも、今のマリーも凄く好きなんだよなぁ〜。俺、多分ロリコンだし。


「身長といえば、アイリスが来れば良かったんですけどね」


「初心者が増えるとマリーに面倒を掛けると思うからパスって言われたよ」


 だから、帰ったらアイリスに埋め合わせの約束をしておこう。


「マリー様、ユーリ様。そろそろ着くので準備をお願いします」


「「は〜い」」


 俺たちは、御者の声を受けて居住まいを正した。


 それから数分後、馬車の揺れが止まった。


 どうやら目的地に着いた様だ。窓の外には、馬車から降りる多くの人が見えた。


「さて、行こうか」


「ユーリさんって、順応が早いですよね?」


「何、ただ開き直ってるだけさ。それにやるからには何事も楽しむ派なだけだよ」


 俺は、マリーの手を引いて馬車から降りた。


 馬車を降りると案内人がやって来て、受付へと案内する。


「ようこそ、お出で下さいました。招待状を確認致します」


 受付にカリスさんからの招待状を渡し、どうぞと促され中へと進む。


 通されたホールは、パーティーなどの催しを目的としているのか、沈んだ赤い絨毯が敷き詰められ、所々に薔薇の刺繍が施されている。


 俺たちは、開始前に来たにもかかわらずホールに既にかなりの人数が揃っており、始まるのを待っていた。


 置かれたテーブルには、白いクロスがかけられ、料理や花が並べられていた。


 正直、人付き合いよりそっちメインで行きたいと思った。


「カリスさんは、まだいらっしゃらない様ですね」


「そうみたいだね。でも、代わりを務めても大丈夫な人物なら居るよ」


 俺の視線の先には、数人と談笑している副会長のロゼットの姿がある。


 そのまま見詰めていたら俺たちの存在に気付いたのか、ロゼットさんは会話を止めて近付いてきた。


「ユーリさん、ようこそ! 来て頂き、ありがとうございます」


「こちらこそ、招待頂きありがとうございます」


「いえいえ、ユーリさんにお世話になっていますので。しかし、ユーリさんをこの様な場でお見かけするのは初めてですね」


「えぇ、今回が社交場への初参加でして。やはり最初は見知った人の所にと。色々ご鞭撻の程を宜しくお願いします」


「なるほど。でしたら、気をゆったりと持ち楽しむ事を念頭に行かれると良いでしょう。多少の騒ぎがあってもこちらで対処しますので」


「助かります」


 その後、少し世間話をした所で、それではと言いロゼットは違うグループへと挨拶しに行った。


 そして、今度はロゼットさんと入れ替わる様に、コーリス伯爵が挨拶にやってきた。付き添いには、息子のテオドールも一緒だった。


「やぁ、テオドール。お久しぶり」


 俺は、彼の息子にも挨拶する。彼とは、コーリス伯爵の元でマナーを学ぶ時、一緒に勉強したのだ。


「ユーリさん。こんばんは。でも、久しぶりって言っても2日前に会ってますよね?」


「ここ一週間くらい毎日一緒に勉強してたからね。2日会わないだけで懐かしくなったのさ」


「そんなもんですかね?」


 そこからは、4人で仲良く雑談を続けた。


 30分くらい経った頃、設置された壇上に、カリスさんが姿を現した。


「お集まりの皆様。本日は、ようこそ開店パーティーにお越し下さいました。商会ギルドを代表致しまして、ペンドラゴンの会長である私が皆様を歓迎致します」


 そこからは長かった。


 色々な立場の人が壇上へと上がり、喋っていた。正直、内容もありきたりで今年の成果や来年の目標を言っていた。


「それでは皆様、グラスをお持ち下さい」


 近くに居たウェイターからグラスを受け取る。


 初めてのパーティーだし酒は止めてジュースにした。


「それでは、新たなる門出を祝し、乾杯!」


 こうして、初めてのパーティーが始まった。

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