耐性版で弱点検査
長くなったので分けました。
それは、中央に針が有り、ルーレットの様な円盤だった。
「これが簡易キットって奴ですか?」
「そうだ。属性耐性版という。中央の針に指を刺し、血が各マスに流れる事で結果が出る仕組みだ」
「魔力測定とかはしないんですか?」
「しないな。魔力なんてちょっとした事で変動するからな。むしろ、重要なのは、耐性だ。これを元にして依頼を精査する事で死亡率が減る」
なるほど。弱点属性の任務を与えて死なれたら困るからな。
成功率向上もギルドの儲けに繋がる。
「尤も依頼にイレギュラーは付きものだから、そこで死んだら自己責任になるが、ギルドとしては後のリスクを減らしたい訳さ。……よし、書類も書き終わっているな。それじゃあ、さっさと確認してくれ」
「………」
針に指を当てるまでは出来たが、指を刺せない。
「どうした?何か問題でもあったか?」
「いや、ちょっと……ね。鑑定魔法じゃ、ダメかなって?」
「鑑定魔法だと、術者の技量で差が出るからダメだろ」
腹を括るしかない様だ。でも、怖い。
自分で自分を傷付けるのって怖くない?
「……なるほどね。うふふふっ」
「あ、アイリスさん?」
俺に寄り添っているから思考が読めたのだろう。
だが、このイタズラっぽい笑みは何かある。
「えいっ」
グサッ。
「ちょおっ!?」
アイリスが俺の指を押した為、針が刺さり血が流れ出した。
めっちゃ痛い。
「何してくれてるん!?」
「怖がってるのを見てたらうずうずしちゃって、てへっ♪」
「そんな、ボタンがあったら押したくなるの理論は別にいいから!」
「ははっ、本当にごめんって!ほら、結果出てるよ。後、指貸して」
針から流れた血は、各マスへ十分行き渡っている。
「で、これで何が分かるんだ」
俺の指は、アイリスの口の中に咥えられた。
童貞ではないが、なんかドキドキするな。
「美味しい」
「いや、美味しいじゃなくて」
「大丈夫。ちゃんと止血してるって」
アイリスの体液には、止血効果と治療効果がある。
ツバを付ければ治るを地でいけるのだ。
「おかしいな?本来なら弱点属性は、煙が上がったりするんだが……ちょっと確認する。何処に仕舞ってあったか……あった。これだこれ」
ギルフォードさんは、何やら戸棚から赤い液体の入った瓶を取り出して戻ってきた。
「典型的なオークの血だ。弱点属性は、火に当たる。これを赤いマスに垂らすと」
1滴垂らす度に煙が上がった。
「俺に加護が付いてるからじゃないのか?タナトス様に加護を貰ったし」
「タナトス?タナトスって、創造神か!?ちょっとよく見せろ!竜眼で見るから!!」
ギルフォードさんも竜だから竜眼が使えるのか。
煙が上がらなかったのは耐性があったからか?
「種族が半神だったのか。なら、各種属性に耐性があるのは分かる。天使がそうだしな。だが、半神も闇が弱点の筈だが……創造神の加護の副次効果で耐性が出来ているって事か?……まぁ、考えても仕方ないな。丈夫な肉体をしてるって事で納得しよう」
帰ったら一応、タナトス様の像に祈っておこう。
庭に置いていたが、家を造ったので寝床に使っていた木に安置した。
「これで手続き終了だな。冒険者カードは、明日妹に渡しておくよ」
「あれ、登録費用は要らないんですか?」
「紹介で来てるから要らないよ。紹介者なら実力も人物も保障されるからね。そもそもさっきの素材売った利益の端数で賄える」
そうか。冒険者ギルドを通して店に販売するから差額が出るのか。
コンコン。
「マスター。見積り終わりましたぜ」
ラックが書類を手に現れた。
「そうか、彼に説明してくれ」
「兄さんも構わないかい」
「オッケーっす」
「シルバーディアーの状態は良くてどれも高値が付いた。頭が金貨60枚。角込な。現在、剥製作業をいつでも開始出来る状態だぜ。皮は、金貨15枚。尻尾は、5枚。魔石は無し。肉は返却だったな。後で裏に行って貰ってから帰ってくれ。計、金貨80枚になった。後、他の解体に関してだが、明後日には終わる予定だ」
「うむ、これで良いなら支払おう」
「こっちは、それで大丈夫です」
付き合いが長くなるんだ。ケチる事はないだろう。
「では、買い取り成立だ。下の受付で貰ってくれ。ラック。連絡を頼んだぞ」
「はいよ、マスター。兄さん、肉忘れんなよ」
そう言ってラックは、部屋を出て行った。
「アイリス、これで食材やら調理器具やらを買う軍資金が出来たぞ。これで料理が更に美味くなる」
「ホント!ヤッター!」
「食材を買うなら朝市の方が良いのでは?」
アンナさんから提案があった。
「はい?」
「確かにこの街の朝市は、規模が大きいからな。しかも、朝のみ店もかなりある。俺も朝市をススメるよ」
朝市にする方が無難かな。
「じゃあ、そうします。雑貨や調理器具を買いたいので、アンナさ…アンナ、引き続き案内お願いします」
「もう『さん』付けでいいですよ。無理に変えなくて。では、かしこまりました」
その後、受付で金貨を受け取り帰ろうとした。
肉を忘れかけたがアンナさんに言われて、それも無事に受け取った。
その後、ギルドをあとにして街へ出た。
雑貨屋では、シャンプーは無いが石鹸が有った。
貴族用で香りが強く高かったけど気にせず購入。
紅茶セットに茶葉各種。フライパンや鍋などの鉄製品。
鉄鉱石も購入完了。
ガラス工房へも案内して貰った。
ガラス窓。これが1番高かった。
空間魔法で取り付けもラクラクだし、サイズも気にせず購入した。
その日、儲けた金貨80枚は全てモノに変わり、結局朝市の為に大金貨を両替する事になった。