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シオンが逃げた理由

 シオンが逃げた後、リリィに起こった出来事を説明した。すると彼女は、何やら納得した様に頷き出した。


「なるほどねぇ〜、貴方がシオンちゃんの双子の妹さんなのね」


「妹なのはさっき聞いたが、双子なのか?」


「はい、そうです」


 シオンの妹は、よく似ていると思ったら双子だったらしい。


 というか、何でリリィはそれを知っているんだ?


「なら、シオンちゃんが逃げるのも無理はないわね。最近までクエストに行ってたからシシネちゃんの事情を知らないし」


「リリィ。どうして逃げたか知っているのか?」


「そうです! 知っているならお願いします!!」


「うん?」


 リリィはシシネの反応に違和感を覚えたらしく怪訝そうな表情をする。


「貴方、知らないの? エルフの巫女なのに?」


「どういう事ですか?」


「………」


 リリィは、シシネの後ろに居る娘達を睨みつけた。


「貴方たち……巫女がまだ若いからと教えるべき事を教えなかったわね?」


『いやっ、それは……』


 リリィは何かに怒っている様だ。その睨みを受けて何人かのエルフたちは顔が青褪め目は泳いでいた。


 そして、一部の者が少しずつ語りだした。


「仕方ないじゃない。その娘は巫女になってまだ10年。先代の巫女が伝えなかった事を私達がなんて……。それにあんな風習なんて廃れるべきなのよ。なのに、誰も彼も風習だからって受け入れて……」


「確かに先代の巫女もその事に悩んでいたわね。だから、自分の下の世代には同じ思いをさせたくないって気持ちがあって黙っていたのかも……。でも、彼女を騙し続けるのは罪よ」


「なぁ、リリィ。その風習って何?」


 話を聞く限りエルフにおける何かの風習が関係している様に思われる。


「そうね。彼女たちには言い難いみたいだから私から話すわ。少し嫌な話も入るから、2人共覚悟してね」


「リリィ。その話にうちの連中も混ぜて良いか? 皆もシオンを心配しているみたいなんだ」


 俺はセレナを始めとするアイリスたちの事を見た。


 彼女たちも俺と同じ様に数ヶ月もの間、一緒に暮らしたり冒険に行ったりしてるからシオンを家族の様に思っている。


 だから、シオンの出て行った転移門を心配そうに見詰めていた。


「分かった。別に隠す事でもないしね。ただ、聞いても怒らないでね。昔は、これが常識で必要な処置だったんだから」


「……了解。心に留めておくよ」


 その後、エルフの案内はグレイたちに任せて談話室へと移動した。メンバーは俺とシシネ、それから今いる嫁さん全員を集めた。


 談話室のテーブルに着くなり、リリィは凄く真剣な表情で語りだした。


「エルフの里には、常に長と巫女のツートップが存在するのは知ってるわよね?」


「あぁ、ラファエラさんとロロみたいにだろ?」


「うん。それでその立場なんだけど、実は性別が決まっていてね。長が男性、巫女は女性となっているの。今回の件はそれらの仕組みが関係しているのよ。

 だから、まずは長の説明をするわ。シシネちゃん。今から話す内容は貴方の里でも同じだったか確認しながら聞いてね」


「分かりました」


「それじゃ、続けるわよ。まず、長だけど……ユーリ君。どうやって選ばれるか知ってる?」


「ロロみたく里で強い奴じゃないのか?」


「惜しいわね。確かに強さは必要だけど、それだけではダメなのよ。実は、それより優先する条件が2つ有るの。

 1つは、魔力。これは何処でも一緒ね。魔法を使う者たちにとって重視されるのは当然の結果よ。

 そして、もう1つがとある血を有しているかどうかよ」


『血?』


 それは初めて聞く話だった様でアイリスたちだけでなく、リリスたちも声に出していた。


「血というのは、隠れ里の根源となった三家の血筋の事よ。

 それの総称が隠れ里の名前として使われるんだけど、リリスたちの世代だと何故その名前なのか良く理解してない人もいるわ。戦時中でも無いし、隠れ里の名前をわざわざ言う必要無いしね。

 ちなみに、うちの隠れ里の場合は『ラリス』と呼ぶわよ。『ラ家』と『リ家』、それから『ス家』ね。これが、うちの里の根源となった血筋よ」


「『ロ家』は入らないのな」


 今の流れからロロが長になれる理由がない。


 でも、実際はアイツが長をしている。


「ロロたちの家系ね。アレはーー」


「おそらく、私達の里から移り住んだ者たちになります」


「そうなのか?」


「はい。私達のいた里は『シロナ』と呼びましたので」


 俺は確認の為にリリィの方を見た。


「えぇ、そうよ。『ロ家』は、男性が生まれ易くてね。私の生まれる前に婿入りして今に至るそうよ。

 それで、多分ユーリ君が気にしているのは、何故ロロが長になっているのかでしょ?」


「あぁ、話の流れ上、長に成れない筈ではと思って」


「それが、最初の話に戻るのよ。長になる最低条件。()()で有る事」


 あっ、そういう事か。長は、絶対男性でなければならない。


「エルフに男性は少ないからね。長に血筋を求めてたら、潰えるのよ。だから、それに合わせて風習が変わり、男性で有る事と強さ、高魔力を備えた人なら就くようになったの。

 ここまでは、シシネちゃんの所も同じよね?」


「はい、合っています」


「そんな訳で、長の条件は緩和された。しかし、エルフって基本風習とか重んじるのよね。だからなのか、それともバランスをとってなのか、巫女の条件を厳しくしたの」


 そこから始まったのは、何とも言えない悲しい話だった。


「巫女になる為の条件の1つ。三家の血筋で有る事。これが、変わって、一家の女性だけに絞られた。シシネちゃんの『シ家』がそうよ」


「そうです。私の家は、世襲により代々巫女を務めています」


「なるほど」


 とりあえず、巫女の条件までは分かった。なら、本題に入ろう。


「それで、シオンが逃げた理由と関係有るのか?」


「ここからが本題。世襲により巫女を継がせるのだけど、巫女になる者に姉妹がいた場合、大変な事になるの。

 巫女を継がせる以上は優秀でなくてはならない。故に、姉妹を競わせ鍛えあげる。

 まぁ、それだけならまだ良いのだけどね。問題はその後よ。

 巫女が決まったら、残った姉妹を()()のよ」


『!?』


 話を聞いて、あまりの狂気にゾクッとした。横のシシネとかは、顔面蒼白で倒れそうだった。


「なっ、何故……です? そんな必要……有りますか?」


「有ったのよ。巫女は、里で一、二を争う権力を有するわ。でも、巫女候補が複数いた場合、派閥が出来たりして権力の分散が起こるの」


「王位継承に伴う派閥争いみたいなものか?」


「えぇ、ほぼ同じ様なものよ。巫女になる為に競わせてきたからね。険悪になるのは良く有ったのよ。その流れから結果に納得せず、里を巻き込んだ騒動に発展する事もしばしば。

 だから、その対処法として事が起こる前に摘み取るってのが昔の考えね。食糧難も重なってそれが定着していたわ」


「なら、里を追い出すだけで良いじゃないですか!」


「現代ではそうよ。巫女が途中で逃げたり死んだと色々あったからその代役の為にね。それ以外にも巫女候補同士の年齢差が離れ過ぎていた場合、競わせる前から差が出来ているから非効率過ぎて無くなったの。

 でも、世の中には例外が存在するものよ。

 それは、女の子同士の双子。スタートは一緒、初期スペックに関しても成長過程で変わるけれどほぼ一緒。その為、将来争いになる確率がとても高くなる。だから、巫女になる目処がたった所で排除するの」


『………』


 隠れ里という小さいコミュニティー故に、どうしても争いを避けたかったのだろう。


「それに、昔の人は双子の事を『忌み子』と言って嫌ってたからね。誰もが基本1人で産まれてくるのに、2人産まれる。多産なのは、獣か魔物。それらに類する何かだって。だから、双子は悪だって差別してる者も多いの」


「だから、シオン姉様は……」


「10年前になるわね。貴方の村に寄った時、シオンに相談されたのよ。他里の者だから相談し易かったのね。その時、彼女はこう言ったわ。

『この里は、他の里より風習を大事にしている。だから、このままでは私が巫女に選ばれて妹は殺されるかもしれない。私が辞退しても殺される可能性は消えない』ってね。

だから、どうすれば良いか?

 簡単よ。妹が継ぐしかない状況にすれば良い。だから、私も偽装工作に色々協力してシオンが死んだ様に見せ掛けたのよ。まぁ、死体は出て来ないから行方不明扱いだったけど」


「そうなのか?」


「はい。魔物の死骸周辺に出来た血溜まり、それから谷底へと繫がる血痕。更に、崖の周囲にある無数の魔物足跡。それらから魔物との戦闘で重傷、その集団に追われて谷底へ落下。下には川も流れているので、死体は確認出来ず行方不明扱いになりました」


「それで必然的にシオンは対象から外れ、シシネちゃんが巫女になる事になったのよ」


「なるほどねぇ〜。だから、会ったらまずいと思って逃げた訳か」


 という事はだよ。今の現状をシオンに教えれば問題無いのでは?


「俺、ちょっとシオンを捕まえて来るわ。現状を知れば、シシネに会っても問題無いと理解するだろうし」


 さて、何処に向かおうかと考えているとセレナが教えてくれた。


「なら、植物公園に行くと良いわよ。あそこの花畑がシオンのお気に入りだからね。何かあるとそこに行くから」


 植物公園は、竜王国の公共広場だ。季節ごとの花が植えられ、デートスポットとしても人気だ。


 特に、中央に植えられた大樹は、告白の名所とかしている。


 成功率も異常に高いのだとか。デートした時にリリィから聞いた。


「それじゃあ、行ってくるよ」


「シオン姉様をお願いします」


「気を付けてねぇ〜。シオンに射殺されない様に」


 物騒な事を言うものだ。俺は、皆に見送られながら植物公園へと転移した。

今後の事も考えて、色々加えたら予想以上に長くなりました。特に、隠れ里の名前とか。

色々、問題が出るかもしれませんが、その都度修正したいと思います。

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