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移住者がやって来て、シオンが逃げた

 エルフたちの移住は、朝から行われた。


 隠れ里と屋敷とを繋ぐ転移門(ゲート)をラファエラさんが解錠し、それを通って屋敷の地下にぞろぞろとやって来た。


 話に聞いてた数より多い気がする。


 俺たちの方は、とりあえず手の空いている者を全員呼んで、地下で彼女たちを歓迎した。


「本日からお世話になります。代表のシシネと申します。我が身を貴方様に捧げます。どうか、一族をお願いします」


 代表のエルフが挨拶してきた。ショートヘアーで、片目が隠れているのが、特徴的な娘だった。


「あぁ、歓迎するよ」


 それから代表と握手を交わし、彼女を抱き締めた。


「エルフ流儀だと、これで良いのか?」


「はい、助かります」


 シシネの耳元で囁くと問題無いと帰ってきた。


 エルフは、認めた相手以外には距離を取る。ハグを受け入れるという事は、相手を認めた証拠なので、皆の前でする必要があるそうだ。


 俺はハグを終えて、改めてシシネの方を見た。何故か、先程から初対面の筈なのに妙な親近感を覚えるのだ。


「………」


 その為、俺は彼女の顔をジッと見詰めてしまった。


「あっ、あの! 私の顔に何か付いておりますでしょうか?」


 俺の視線が気になったのか、心配そうにこちらを見詰めるシシネ。


「あっ、すまん。なんか、前にも会った気がしてな」


「会うですか? お会いするのは、此度が初めてになりますよね? 私は、里の巫女を務めておりましたので、社に籠もる事もしばしばで……」


「だよな。多分気のせいだ。忘れてくれ」


「はい、分かりました」


 その後、集まったうちのメンバーを順番に紹介していった。


 まずは、嫁さんたち。


 魔物、竜種、天使、悪魔、それから宝石族。ここら辺は色々あっていつも通り驚かれた。恐怖の対象であったり、希少種故だ。


 しかし、意外な事にリリスたちにも驚いていた。


緑の三連矢(ヴェルデストリーム)!!」


 黒い○連星!?


 聞いた瞬間、頭に浮かんだ言葉がそれだった。いや、全く違うんだけどさ。


 理由を聞いてみるとリリスたちは、旅をしていた事も有りエルフ界隈では意外と有名らしい。


 しかも、俺と一緒に冒険者を始めて更に有名になっていたんだと。


 俺自身は、全く知らなかったよ。


 それから、子供たちとグレイたちだ。


 彼らを紹介したらホッされたよ。でも……。


「ハロ〜! モモちゃんですよ!!」


 モモちゃんが挨拶したら数人青褪めて倒れた。


 おかしいな? ゴーストが存在するのに、付喪神で驚くって……。


 どちらも透過していて、基本触れないだけなのに。


 あっ、俺はどちらも触れますよ。多分、加護の影響か何かだと思うけど。


 それより、最近モモちゃんには何か悩みがあるみたいだ。


「霊体だからユーリ君の相手を皆以上に出来るけど、まだ妊娠しないんだよね。やっぱり肉体が無いからかな?」


 そこは、天からの授かり物なので仕方ないと思う。


 そもそも、霊体の人の赤ちゃんってどんなの?


 そう思ったが、それは出来てからの楽しみに取っておこう。


 その後俺たちは、モモちゃんの媒体を片付けて、気を失った娘たちを介抱する事になった。


「起きたら、妖精の箱庭(フェアリーガーデン)を案内ーー」


 今後の予定をシシネに伝えようとした時、転移門の1つが起動して扉が開いた。


 俺の位置では、扉の先の一部しか見えない。


 しかし、薬品棚が複数見えた事から、まず間違いなくリリィの店の倉庫だろう。


 あそこが店で一番人目に付かない空間だしね。


「うん? リリィが挨拶に来るって聞いて無かったんだが?」


「リリアーヌ先生ですか?」


「そうそう」


 同じエルフとして顔を出しに来たのかなと思って転移門を見ていると別の人物たちが談笑しながら通って来た。


「いや〜、今回のクエストは長引いちゃったわね」


「次は、まともなクエストを選んで欲しい」


「ごめんって!まさか、あんな変態だと思わなかったよ!」


 セレナとシオンである。


 彼女たちは、ここの所護衛クエストに出掛けていたのだが、どうやらそれが終わって帰ってきた様だ。


「あら? 今日の地下は人がいっぱいで賑やかね」


「どうせ、ユーリがまた連れて来たん……」


 シオンの様子がおかしい。移住してきたエルフたちを見るや否や硬直した。


 しかし、その理由は隣から聞こえてきた。


「シオン……姉様?」


「えっ? ちょっと失礼!」


 俺は、改めてシシネを見る。それからシシネの片目を隠していた髪をかき上げた。


 そうだよ!なんで、気付かないんだよ!!


「シオンとほぼ瓜二つじゃん!!」


 そうなのだ。身長や髪型は違え共、ほぼ同じ顔なのだ。


 ただ、この子の方が明るくて元気な感じがするから、真顔でクールなシオンと違うく見えるのだ。


「なっ、何でシシネが……というか、里にいた娘たちもいるし」


「ねぇ、お嬢さん。シオンの知り合いなの?」


 状況が理解出来ない中、セレナがシシネに質問する。


「はい、妹に当ります」


『妹!?』


 会話の流れで薄々気付いてはいたが、改めてはっきり言われると衝撃を受けるものだな。俺たちは、皆びっくりしている。


「シオン。貴方、前に里は滅んだから帰れないとか言って無かったかしら? アレは嘘だったの?」


「そういえば、俺も聞いた事が有るような」


 カトレアの休業中は、チームでの活動がストップするから里へ帰るかと提案した時にそう言っていた。


「それは……」


 シオンの目が泳いでいる。彼女は、相当焦っている様だ。


「そうですよ、シオン姉様! ある日、突然里を去るなんて! おかげで、本来、シオン姉様が継ぐはずだった巫女の役目も私がする事になりました!」


「………そう。巫女に成れたのね」


 シオンは、巫女と聞いてホッとした様な顔をした後、優しく微笑んだ。


 あっ、ヤバッ。本来、見せないシオンの仕草にドキッとした。


 それからシオンは転移門の方へと踵を返し、境を越えると皆の視線を集める中、その扉をそっと閉めた。


『逃げた!?』


 あまりにも自然に扉を閉めたので、誰も止める事が出来なかった。


「ちょっ、シオン!」


 俺は、急いでアイテムボックスから鍵を取り出して、リリィの店へと繋ぐ転移門を解除する。


「あら、ユーリ君、お疲れ〜♪」


 すると転移門の先に居たのは、リリィだった。


「ねぇ、ユーリ君に1つ聞きたい事が有るんだけど。シオンちゃんに何かした? 今、凄い勢いで店を出て行ったんだけど」


 どうやら、店の外に逃げられたらしい。


 あの短時間でよく外にまで出れたものだと関心する。


「シオン姉様……」


 シシネの悲しそうな声が聞こえてきた。


「あっ、彼女たちが新しく来た子ね。彼女たちと何か関係が有るの?」


「うん、有る。リリィもうちの関係者だから話すよ」


 俺は、リリィに事の顛末を聞かせる事にした。

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