漢たちの相談会 パート2
「ーーという訳で、女エルフが増えるよ。てへぺろ」
「「何、やっとんじゃあぁぁーー!!」」
数少ない男エルフ2人の叫びが妖精の箱庭に木霊した。
「ユーリ様! 貴方、正気ですか!?」
「正気、正気」
「貴方、飢えた女エルフが、どれだけヤバいか知ってるでしょ!?」
「有無を言わさず、食われるよね」
「「なら、なんで!?」」
「いや〜……なんとなく?」
実際の所、軽い気持ちで受け入れてしまった。うちなら余裕が有るし良いかなって。
「「何となくで決めんなや!!」」
そんな空気を把握したのか、2人から必死さが絶叫となって良く伝わってくるよ。
いや〜、俺にハッキリと意志を言える様になるなんて、嬉しいね。
「あの〜、そんなに不味い事なんですか? 差し出がましいですが、里が燃えて行く場所がないなら可愛そうに思うのですが。それに、ユーリ様は既に拡張されましたよね」
悪魔族の男性が、そう言ってきた。
彼の向ける視線の先には、新しく拡張された土地が広がっていた。
「うん。受け入れる気まんまんだからね」
もう、ラズリ経由でラファエラさんに伝えてある。
「そんな!? また、悪夢が再発するのか……?」
「俺たちの安寧は短かったな……」
何やら絶望して黄昏て絶望するロギアたち。
「いやいや、それは大丈夫でしょ? 今回は、こんなにも未婚男性がいるし」
俺は、今回招集した悪魔族たちを見る。悪魔族の男性は、そこそこいるので一部のみを呼んだ。
彼らは、元々結婚していなかった組やコマチと一緒に助けた娘たちと結婚しなかった組だ。
「あっ、確かに! 未婚男性がいれば、そっちを優先しますね!!」
「スペックに関しても問題はない!」
『ええっ!?』
悪魔族たちは、突然の話で目を白黒させていた。
彼らの容姿は、全く問題ない。むしろ、イケメン揃いだ。世の中、不公平だと思うね。
実力に関しても毎日訓練を行っているので、出会った時より強くなっている。そこらの冒険者よりは強いだろう。
最近、周辺の狩りに同行できる様になったしな。
「先を越された連中が羨ましいだろ? 今までそういうの出来なかったというか、考える余裕すら無かったし」
「それはそうですが……」
種族が増え過ぎたら森では生きて行けないし、かと言って減りすぎるのも問題なので、基本的に長の許可が必要だったそうだ。
「そんな訳で、受け入れは問題なしだな! 建物も自分たちで建てるそうだし!」
だから、用意するのは木材と道具のみ。
土地は広いし、好きに造ると良い。家具は……有るのか?
無いなら作れば良いか。最近、家具は作ってないし。スキルのトレーニングにもなるしさ。
「だが、問題が1つ!」
最初聞かされた時は、どうなんだろうと思った。
「問題ですか?」
「それは、一体?」
俺の空気を感じ取ったのか、周囲に静寂が生まれた。
「確定でエルフ嫁が増える事になった!」
「はい、解散〜!」
『おぉ〜』
ロギアの合図で皆が帰ろうとする。
「なんで!?」
「いや、だって、今更ですよね? どういう経緯かはさて置き」
「ここ1ヶ月で、2人程増えてますよね? 手は出してないみたいですけど。というか、二重人格に見えるけど実際は3人ですよね?」
イザベラとイザベル、モモちゃんの事だな。
「俺だって、増やさない様に気を使ってるんだよ!」
「増えてたら意味ないですよ」
「ですよねぇ〜」
嫁フラグ回避しても、つい自分で受け入れちゃうんだよ。
「でもさ〜、ユーリ様でないとハーレムとか無理だよな。金銭面とか、スタミナの面で」
それを聞いて、確かにと頷く男連中。
「そうなんだよ! 夜とかやべぇんだよ! 2人同時とか、捕食者と被食者の関係になるし!」
そう言ったのは、俺でない。
嫁さんが2人居るグレイだった。
元を正せば、俺が原因なんだが、仲良くやっている様だな。
「おい、グレイ。2人くらい頑張れよ。こちとらなぁ……5人同時だぞ」
いや、まぁ、凄く満たされますよ。欲望の限りを尽くすって感じだしさ。
ただ、問題が有るとすれば、たまにいつ寝たか分からなくなる時が有るくらいかな?
「あれ? でも、今は皐月が妊娠中だからティアしか無理だよな?」
彼女は、報酬で渡したポーションを使い、グレイとニャンニャンした結果、現在は妊娠中。
この前、ティアから皐月の検診結果を聞いたが良好な様だ。
「ティアがですね。悪魔族の子供たちが元気に遊ぶ様を見て、2人目を欲しがりまして……」
だから、毎日限界まで絞られ続けているそうだ。
これは、妊娠も早そうだな。サポート要員の手配をしておこう。
『………』
「まぁ、頑張れ。色々相談に乗るからな」
グレイも金銭的には余裕が有るし、問題ないだろうよ。絞られ続けて、快楽とかより運動になりかけてるみたいだけど。
「嫁は、1人で十分ですね」
「右に同じく」
「あはは、来年には増えてたりしてな!」
「「………」」
2人から凄い圧力で睨まれた。
そんなに嫌なのね。どんだけトラウマを押し付けたんだよ。
「所で、確実に増えるってどういう事ですか?」
「あっ、一応、話を拾ってくれるのね」
俺は、皆に移住者からされた提案を話す事にした。
「元を正せば、ロロの奴が原因なんだが、『ユーリは、誘惑に弱い上に、責任感が強いですからね。1人2人出せば、皆を守護してくれますよ』って言ったらしい」
「「あっ、察し」」
ラズリ曰く、『他のエルフとイチャイチャしまくって、リリィに愛想尽かされろ』がロロの本音らしいが。
「うちの従兄弟がすみません。多分、リリィさん絡みですよね?」
「あの人、妻子居るのになぁ〜」
「うん、俺もそう思う」
あんな美人な奥さんがいて、美少女の娘まで居るのに、何でちょっかい出すのかな?
まぁ、リリィに惚れるのは理解出来るけどな。あの容姿に加えて、大人を掴む熟練度の高さ、うちで一番ヤバい。
「そして、ラファエラさんがツッコミを入れれば良かったんだけど、普通に俺の説明をしたらしい。容姿は、送っておいたラズリとのツーショット写真で見せたらしい。
それもあってか、アピールの書かれた手紙が大量に届いて、紙の山が出来たよ」
アイテムボックスから取り出した手紙の山を見せた。
「どうしよう? この中から候補を選んでくれって」
「どうしようも無いので、頑張って下さい」
「知ってる名前が有ったら情報提供しますよ」
という訳で、やっぱりこの件は後回しにしよう。
これを最後に、今日の相談会は終了した。
「しかし、ユーリ様のお嫁さんたちは仲が良いですよね。普通は、多少なりと出てくるのに」
「確かに、一緒に買い物とか遊びに行くの良く見るよな」
「何でだろうな。王族と貴族のハーレムだと良く有るのに」
俺も最初はそういうのが起こるから無理だと思っていた。
「思い当たる事といえば、一緒に寝た次の日には連帯感が出来ているんだよな」
なんか、握手を交わしている光景とか見た事がある。
『それだな』
どうやら、皆には理解出来た様だ。どういう事なのだろう?
「誰か、教えてくれないか?」
「知らない方が良いです。お嫁さんたちの仲を維持する為に」
そう、ロギアに諭されたので考える事を止める事にした。




