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お一人様、ご案内〜♪

「ーーという感じで大変でしたよ」


「なんと、地下にはそんな施設が!?」


 俺は、町長に地下通路は元研究施設の名残りだったと伝えた。


 しかし、当然、イザベルたちの事は黙っておいた。あの様な事が起こらない様にする為だ。


 その代わりに、防衛機能が働いて大変だったと伝えた。


「だから、あんな陥没が起こったんですね!!」


「………」


 言えない。俺が、ただ加減をミスっただけだなんて。


「ええ、そうです。私にも責任が有りますからね。埋めるのは、協力しますよ。これでも、土木工事は得意でして」


「おおっ! 風の噂で聞いてはいましたが、助かります! こちらからも話を通しておきますね」


 という訳なので、証拠隠滅出来る事になったよ。


 しかし、まさか、あんな被害が出るとは思わなかったな……。


 俺は、そう思いながら町長の屋敷を後にした。




 ********************




 暴走も収まり、俺たちの意識も目覚めたので自己紹介する事になった。


「それじゃあ、改めまして。俺は、ユーリ・シズ。よろしくな。それで、こっちの天使が」


「妻のエロースです。大変だったわね。もう研究とかは、行われていないから安心してね」


「本物の天使様……」


「あれ、何この差? 私も天使だったんだけど」


 やっぱり、1人で2人が喋る光景は不思議だ。


「2人共、自己紹介を頼む。ついでに、何方がどっちかも。エロースは知らないしさ」


「そうだった。私は、イザベラ。この身体の持ち主です」


「私は、彼女に移植された元天使でイザベルね。今、彼女の中にいるのは、ただ精神だけよ。正しくは、魂の一部ね」


 という感じで自己紹介までは順調に終わった。


「さて、自己紹介も終わった事だし。次を考えよう」


 俺は、周囲を見渡した。


 一見すると死体が大量に転がるだけの部屋なのだが、実は違う。


 ここは、魔法で隔離された空間なのだ。


「というか、なんで俺たちだけ閉じ込められたの?」


「多分、この結界が神聖系統を閉じ込める種類の結界だったからだと思う」


 そうエロースが説明してくれた。


「神聖系統……」


 そういや忘れてたけど、一応半神(デミゴッド)だった。


 そして、エロースは天使。神聖系統だわな。


「元々は、私たちを閉じ込める為だったからね。人工天使とはいえ、神聖系統なのは間違いないから」


 どうやら、現状を説明する為にイザベルに変わった様だ。


「ユーリ君は、どうにか出来ないの?」


「多分、空間自体は切れると思うけど、イナホたちを攻撃しそうなんだよな」


 見えないけど、部屋の中にいると思う。ここは、隔離された部屋の一部なだけだし。


「そうね。位置が分からない以上、攻撃するべきではないわ」


「えっ? 貴方、空間を切れるの?」


「やったこと無いけど多分いける」


 俺の愛用する白銀の剣『フラガラッハ』は、概念切断の効果があるので、意識さえすれば空間も切れると思う。


「なら、厚さは?」


「際限なし。魔力に影響する」


 俺がそう言うと、イザベルは上を指差した。


「なら、この上を切ると良いわ。そこは、本物だから」


 俺は、上を見上げた。


 加工されていないボコボコした天井。魔力感知も出来るらしく、上は先程見た住居エリアだった。


「よし、上を斬って出るか」


 俺は、フラガラッハを出し上へと構えた。


「危険かもしれないから、3人とも俺の後ろに居てね」


 俺は、3人が移動したのを確認して天井を斬った。落ちてくる残骸は、危ないので細切れにして対処した。


 でも、埃だけはどうにもならなかったわ。


「ゲホッ!ゲホッ!すまん!!埃のことを忘れたわ!!」


「ゲホッ!突然だったから、ゲホッ! 間に合わなかった!!」


「ゲホッ!ゲホッ!」


 俺たちは、少しの間咳き込む事になった。


「よし!これで脱出がーー」


「ユーリさん!」


「主様!」


「あうっ!?」


 俺は、突然マリーたちの体当たりを受けて倒れた。どうやら、今の行為で結界が消えた様だ。


 しかし、2人には心配をかけたようだ。イナホなんて、昔の呼び方に戻ってる。


 そして、マリーたちを見たイザベラたちの反応は真逆だった。


「子供に主様って呼ばせてるなんて……」


 イザベルは、ドン引きしていた。


「あっ、あのっ、初めまして。私、イザベラと言います」


 イザベラは、気にせず自己紹介をしていた。


「……ユーリさん。こちらの方は?」


「さっきまで領域に封印されてた人」


「あぁ、いつものパターンなんですね。今後とも宜しくお願いしますね」


 何かに納得したマリーが、イザベラたちと握手を交わしていた。


「……あの、ユーリさん」


「うん? どうした?」


 俺の服を引っ張る方を見たら、イナホが顔をしかめていた。


「なんか、変な音がします」


「音? どんな?」


「ビキビキビキって、ひび割れが広がる様な音です」


 ひび割れねぇ……。俺は、なんと無くで上を見た。


「げっ!?」


 そしたらなんと斬った所からひび割れが広がっているではないか。


「なんで!? 一部斬っただけだろ!?」


「………あっ」


 エロースは、何かに気付いたらしい。俺は、彼女の考えを聞く事にした。


「多分、リリスたちが上にいるからじゃないかな?」


 つまり、要約するとこうだった。


 俺が穴を開けた。天井の地盤は、古かったのでヒビが走る。


 更に、現在、リリスたちが調査の為に見ている可能性があるらしいので、被害が拡大中かもとの事らしい。


 とりあえず、二階に移動する事にした。


 そして、タイミングがとても良い事に、地下三階は崩壊に飲み込まれてしまった。


「やべぇ……間一髪!」


「……ユーリさん」


 まだ、何かある様だ。イナホの顔は、とても険しい。


「音が上と下の両方からします」


「………」


「(ねぇ…聞こえる?)」


「(アイリスか!?)」


 このタイミングでアイリスからの念話が聞こえてきた。


「(良かった!無事だったんだね!って、それより不味い事が起こってるの!)」


 俺は、嫌な予感がして聞いてみた。


「(それは何?)」


「(古い施設に私たちが大勢押しかけた事や内部で暴れた事が重なって、あちらこちらに陥没が始まったの!)」


「………」


 どうやら、リリスたちが居る事による加重が原因ではない様だ。原因は、陥没。


 だから、イナホの耳には、上と下から聞こえてくるヒビ割れの音が届いた訳だ。


「全力撤退!」


 俺たちは、全力で外へと向かった。その後、一時して町の一部が陥没する事件が起こったのだ。


 幸いな事に怪我人はなく、嫁たちも危険を察知し逃げており無事だった。





 後日、スキルを全力で駆使して、バレる前に埋めてしまった。


 誰も気にしていないから良しとしよう。


 そして、イザベラたちを妖精の箱庭(フェアリーガーデン)に連れて行った。


 彼女たちには行き場がないし、封印を解いた手前、放置する気にはなれなかった。


 だけど、住む以上は何かしらの仕事をして貰わねば。


「ユーリさん。この娘を私たちの方に回してくれませんか? 経理が大変で……」


 如月さんに頼まれたので、そっちに渡す事にした。


 なんでも、売上が伸びており、事務仕事が大変なのだとか。


 すまん。そっちは、認証だけするから後は任せた。


 そう、心で手を合わせたのだった。

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