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意識だけの天使

 俺は、現在底の見えない谷底へダイブ中。


「………止めるべきだったかな?」


 俺は、落下する過程で見てきた彼女の記憶について後悔した。


 うん? 自慢の魔法で飛ばないのか?


 残念。使えないから落ちているんです。たぶん、最下層に着くまで落下し続けるのだろう。


「俺、選択肢を間違えたかな?」


 俺は、今の現状を選んだ時の事を思い出すのだった。




 ********************




「で、どうやって彼女を止めるの?」


 俺たちは、暴走する少女の攻撃を回避しながら話し合う。


 ちなみに、障壁は貫通してボロボロにされた。まぁ、攻撃パターンは単純なので助かっている。


「……それ以前に、怪我の方は大丈夫?」


「ごくごく……大丈夫。怪我は、今回復したから」


 俺は、アイテムボックスから取り出したエリクサーを飲み干してから答えた。


 しかし、初めて飲んだけど凄い効果だな。


 背中まで貫通した傷の痛みは完全に引き、あらゆる穢れが落ちた様にスッキリした気分にまでなる。


「それじゃあ、気を取り直して、策は有る?」


「ない!」


 俺は、胸を張ってドヤ顔でエロースに告げた。


「とりあえず、糸です巻にして眠らせれば大丈夫じゃない?」


「それだと根本的な解決にならないわよ? 起きたら今の繰り返すだろうし」


「だよな。なら、どうしようか? そもそも、あの子が暴走している理由って何?」


「たぶん、彼女の意識がないんだと思う?」


「その理由は?」


「最初は、怒りの感情を見せたけど。今は、感情が欠如してるでしょ?」


 確かに彼女は、機械の様に単純な攻撃しかして来ない。


 まぁ、一撃一撃が必殺みたいな技なのだが。


「なら、本人の意識を呼び起こせれば、何とかなるかもな。……なんか、良い術とか知ってる?」


「う〜ん、『天使の歌(エンジェルソング)』かな? あれなら、意識に干渉出来るから」


 ……天使の歌か。天使だけが使える特殊な技法としか知らない技だ。


「でも、彼女の意識を揺さぶりでもしないと効かないのよね……」


「あっ、いい方法があるよ。俺に任せて」


 マンガとかで見て、試してみたかったんだよね。たぶん、やったら普通の人なら止まると思うよ。


「それじゃあ、始めるからお願いね」


「おう、任せろ!」


 エロースの歌をBGMに、俺は少女へと近付いていく。


 少女は、最初はエロースに攻撃しようとしたが、どんどんと近付いてくる俺に攻撃を変えた様だ。


 俺に向かって、大量の黒剣が飛んでくる。


「………」


 それを回避しながら、後1歩の所までやってきた。少女の様子は、無言のまま変わる気配がしない。


 俺は、無言の少女へと手を伸ばして。


「………っ!?」


 キスをした。しかも、ただのキスではない。舌が生き物の様に口内を蹂躙する大人のキスだ。


「んんっ!?」


 少女の身体がビクッと震えた。それは、俺も同じだった。


「後、よろしく」


 俺は、薄れゆく意識の中、エロースに後を任せたのだった。




 ********************



 そして、現在に至る。


 道中、映画でも見るかの様、彼女の記憶を見る事になった。


 彼女も辛い経験して来たことがわかーーっ!?


「ぐはっ!?」


 突然、落下が止まり、身体へ衝撃が走る。油断していたから諸に受けてしまった。


「痛ったたた……」


 身体の節々が痛い。でも、ここが終点の様だった。


「クスクス♪ まさか、ここにまで来る人が居るなんてね」


 俺が声のした方を振り返ると、そこにはエロースたちとは別の天使の姿があった。


「君は、誰だ?」


「私? う〜んとね………誰?」


「俺が知りたいよ!」


「冗談よ。イザベルと言う名前があるわ」


「イザベル。君は何者だい?」


 俺は、単刀直入にイザベルと名乗る天使へ色々と聞く事にした。ここに居ると言うことは、暴走した少女のコトも知っているだろう。


「そうね。まず、私が何者かだけど、彼女に投与された天使。正確には羽根に宿った残留思念みたいなものね。そして、聞きたい事だと思うけど、この身体の持ち主なら奥にいるわよ。ついてきて」


 俺は、イザベルの後を追いかけて奥へと進んで行った。


 そして、その先には座り込む幼女がいた。


 見た目は、大人をしていたけれども、ベースは10歳前後の少女って書いてあったからアレが本当の姿なのだろう。


 俺は、少女の目の前にしゃがんで話掛ける。


「いつまでこんな所に、引き篭もっているんだい?」


「!?」


 少女は、びっくりして顔を上げた。その後、警戒した顔付きに変わる。


「あっ、別に敵じゃないぞ。よく見ると良い。研究者じゃないだろ?」


「……じゃあ、何者?」


「ユーリ・シズ。通りすがりの冒険者だ。君に刺されたね。それで、肉体の主である君の名前は?」


「……イザベラ」


「2人共、名前が似てるな。君の方がイザベラで、天使の方がイザベルか」


 名前の最後が違うだけだ。間違え無いように気を付けよう。


「彼女に名前を付けたのは、私です。イザベルは、名前を忘れてたみたいだったから」


 通りで名前が似ていると思った訳だ。


「それで、ここに何をしにきたの?」


「眠れる美少女をキスで起こす王子様をやりにきた」


「「………」」


 あれ、2人の目が冷たいよ。


「……まぁ、正しくは、君の意識を覚醒させにきた」


 別に、ここでキスをする必要なんてない。俺が触れさえすれば、俺の影響を受ける様になる。


「確かに、意識がここに居るから、肉体の方は暴走しているもんね。身体に刻まれた憎悪に任せちゃってるから」


 イザベルが、暴走の原因を教えてくれた。


「あぁ、なるほどね。なら、一緒に起きようよ」


 俺は、過去に何があったかを知ってる。心の底に引き篭もりたい気持ちも分からなくない。


 でも、無責任だけど彼女へと手を差し伸べて、一緒に起きる事にした。


「私もそれが良いと思うわ。はやく行きなさい」


 イザベルは、イザベラを立たせるとその背中を押した。びっくりして、イザベラは後ろを振り返る。


「ここに居るのは、私だけで十分よ。貴方は、夢があるのでしょ? それを叶えなさい。なんなら、目の前の自称王子様でも良いんじゃないかしら?」


「………うん」


 おい、何だ、その間は。


 そう思ったけど、とりあえずスルーする事にした。


 そして、イザベラは、何かにの覚悟を決めた様で、イザベルに再び背を向けた。


 そして、起きる為に俺との手を繫ぐ。


「バイバイ」


 そう言って立ち去ろうとするイザベル。


 でも、そうはいかない。何故なら、俺がその手を握り立ち止まらせたから。


「え?」


「理由はどうあれ。こんな所に美少女を置いていく主義じゃないので、付き合って貰うか。まぁ、何かあったら責任取るよ」


「えっ? ええっ!?」


 という訳で、イザベルの意識も覚醒させる事にした。


 俺は、2人の手を握り締めながら起きろと強く念じた。それにつられて、世界が徐々に白け始めた。


「起きたら今後を相談しよう」


 その言葉を最後に、再び意識が落ちた。




 ********************




「あっ、お帰り」


 目を覚ますと、俺はエロースに膝枕をされていた。


 横に、視線を向けると黒い天使が正座していた。どうやら、暴走は収まったらしい。その少女と目が合う。


「貴方が変な事をしたから。彼女と意識が混ざったじゃない!」


 なんか、怒られた。この口調は、さっきのイザベルという天使か。


 なら、イザベラ。少女の方は?


「私としては、貴方が消えなかったから構わない」


 あっ、混ざったってそういう事ね。二重人格みたいになった訳か。


「貴方が良いならいいけど……」


 天使イザベルは、少女イザベラに受け入れられた様だ。


 でも、傍から見たら一人芝居にしか見えないな。


 なんか、良く分からない感じにグダグダしたけど、結果良かったのではと思うのだった。

ここの所、投稿が安定しなくて、ごめんなさい。

しかも、細かく詰めれてないし。

でも、何とか毎日投稿するのでよろしくです。

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