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音楽隊とは仮りの姿!その正体とは!!

 ゲンチアナの町から少し離れた森に音楽隊の宿泊場がある。その場所とは、元闇ギルドが存在した場所でもあった。


 そこを宿にしているのは、彼らの希望だった。


 音楽隊を町に招待した町長は、自分の屋敷に彼らを泊めようとした。


 しかし、自分たちには良過ぎるからとそれを断ったのだ。


 その代わり、ここを借りれないかと町長に提案した。町の宿に殆ど空きが無いことも分かった上での提案。当然、それは受け入れられた。


 彼らが、ここを選んだのには訳がある。


 彼らは知っていたのだ。元闇ギルドの地下に隠された秘密の通路。それは、暗殺を生業にする者たちが使っていたものだ。


 それからもう1つ、ここを選んだのには理由がある。


 それは、誰にも気付かれにくく、悪巧みをするのにはもってこいの場所だったのだ。


「おい、ちゃんと調べられたんだろうな?」


 リーダーらしき男がそう聞くと仲間の2人が応えた。


「あぁ、ばっちりよ!」


「町長の屋敷の前で演奏会をしたおかげで、調べやすかったぜ! 銀行の奴らも見たさに入り口へ集まってたしな!」


 町長の屋敷は、町の中央に位置し、就任中はそこで暮らすのだ。


 その周囲には主要施設が建ち並んでいる。その中には、銀行も含まれていた。


「通路を通って見てきましたが、金庫までダイレクトに行けましたぜ」


 闇ギルドの隠し通路は、暗殺目的で主要施設たちの地下に繋がっていた。


「これで、俺たち『音の盗賊団』の成功は約束された様なものだな!」


「まさか、音楽隊が盗賊と入れ替わってるとは思うまい!」


 彼らは、盗賊であり音楽隊ではない。本物たちは、今頃、他の場所で演奏している。


 彼らは、事前に目を付けていた音楽隊たちに招待が届いたので盗んだのだ。


 音楽を十分に扱える者は、貴族の屋敷に呼ばれたり、場合によっては個人的なスポンサーが付いたりする。


 彼らは、そういう者たちと入れ替わる為にマークしていた。当然、バレない様に演奏の技術も身に着けている。


 その結果が、今の状況なのだ。


「夜になったら決行だ。俺たちが、月光華の畑で演奏する内にやってくれ」


「おう、任せてくれよ!お頭!!」


「通路を通ってどんどんここに運び込むぜ!」


「全く、頼もしい事だな」


 そう言って男たちは、笑い合った。そこに変化が訪れる。


「お頭!」


 1人の男が袋を抱えて帰って来た。


「うん? どうしたんだ、その袋?」


「珍しいもんを拾いました」


 そう言って、男が袋から取り出したのは、気絶したエリーだった。


「おっ、悪魔族のガキじゃねぇか!」


「どうやら、俺たちの跡を付けてたみたいですぜ? 森で見つけたので、眠らせて連れてきました」


「跡を付けてたって……こんなガキがか? 音楽家志望とかかね?」


「どうします? 売りますか?」


「う〜ん、確かに売れなくはないんだけどよ……」


 お頭は、腕を組んで悩みだした。


「お頭! 売らねぇのでしたら俺に下せぇ! 最近、ガキはご無沙汰でして!」


「はぁ〜、この幼女趣味が。まぁ、良いか。流石に悪魔族程の希少な種族なら売ると高値が付くが、足が付きそうでよ。殺すしかないかなと思ってな」


「流石、お頭!話が分かる!!」


「ちゃんと事故死に見せかけるんだぞ?」


「ウッス!じゃあ、嬢ちゃん。覚悟してね? クックックック」


 そう言って、エリーに手を伸ばす男。


「いや、覚悟するのはお前だから」


 エリーへと伸ばした手が掴まれると横から伸びた手に掴まれて防がれた。


「あっ? 頭が良いって言っただろ? お前にも抱かせてやるから手を離っ……グギャーー!?」


 そして、男は手を握り潰された痛みで床を転がり回る事になった。


 しかし、そんな事より盗賊たちの関心は別の所へ向いていた。今、腕を潰した男とその背後の穴からぞろぞろ出てくる者たちだった。


「だっ、誰だ!お前たちは!?」


「誰だって? その子の保護者だよ」


「あっ、ここに繋がってるんだ!」


「知りませんでした。まさか、この町にこんな秘密の地下通路があるなんて」


「エリーは、無事なんですか!?」


「安心して。寝てるだけだよ」


 ユーリは、エリーを抱えるとイブへと手渡した。


「よっ、良かった!無事みたいね!」


「さて、どういう事が教えて貰おうか? 何、時間はたっぷり有るからね」


「そうですね。この通路が何なのもしっかり教えて貰いましょうか」


『………』


 盗賊たちは、ユーリたちの笑顔に恐怖を覚えるのだった。


 事の始まりは、10分程前に遡る。




 ********************




「どうだ、何か見つかったか!? こっちは、見当たらなかった!」


「こっちもダメ! しかも、人が多過ぎてやっぱり全然見えない!!」


「こっちとも同じです。ギンカさんさえまともならば……」


 俺とアイリス、マリーは一旦集まって情報交換をしていた。


「マリー。上から見るのはダメ?」


「……ユーリさん」


 アイリスの提案を受けて、マリーが竜体になって良いのかと俺の顔色を伺ってきた。


「……頼む。マリー」


 俺は、最終手段として上から探す事を認めた。


「では、戻ります」


「あぁ、分かった。……って、ここでやったら不味いだろう! 底が抜けるぞ!」


「大丈夫ですよ。この町の地盤はしっかりしていてーーきゃっ!?」


 竜体になったマリーの身体が突如倒れた。良く見ると足が埋まってしまっている様だ。


「おい、大丈夫か!? ほら、やっぱり重かったんだって!」


「イタタッ……すみません。まさか、地面がホントにヌケルん……っ!? これは!?」


 マリーが驚きの声を上げた。


「どうかしたのか、マリー。頭でも打った?」


「ユーリさん!地下通路が有ります!!」


 マリーの足元を見ると確かに人が通れる程の空洞があった。


「いや、地下通路なんて珍しくもーー」


「この町に地下通路なんて無い筈なんですよ!!」


「「えっ?」」


 俺とアイリスは、意味が分からず顔を見合わせた。


「……アイリス。地下に迷い込むって有り得るかな?」


「それは……ちょっと見るだけ見てみようか」


「頼む」


「うん」


 アイリスは、地下通路に降りて先を魔力感知で伺う。


「う〜ん……大体しか分からないけど、町の中央と外とを繋いでいるみたい。町中の地下通路は、特に入り組んでて、よく分からない」


「外ねぇ……外へと向う通路はどっちの方角?」


 俺は、アイテムボックスからこの町の地図を出して、アイリスが指した方角を確認する。


「こっちの方角は、闇ギルドがあった場所の方だな」


 以前、ギンカと二人で潰しに行ったので直ぐに場所が分かった。


「ユーリさん!!」


 地図を広げていたらイブが駆けてきた。


「エリーの情報を見付けました!」


「「「ホント!?」」」


「はい、リリバードを売る店の店主が、私を見て声を掛けてくれたので……」


 詳しく聞くと、ただでさえ希少な悪魔族が居たから姉妹だと思って声を掛けたらしい。


 何でも店主は、赤い服を着た男を知らないかと尋ねられたので、音楽隊を教えてしまったと言ってきたらしい。


 彼らの服装の一部は、赤いキルトなのだそうだ。


「それで、音楽隊はどっちの方に?」


「こっちの方角にある森だそうです!」


「「「………」」」


 俺たちは、イブが指した方角と地図で気になった方角を比べるが間違いなさそうだった。どうやら、闇ギルドがあった方に向かったらしい。


「地下通路を行ってみよう。行き止まりなら転移で抜ければ良いし」


「「了解!」」


 その後、他のメンバーも集めて地下通路を探索し始めた。


 そして、分かった事は、町中に張り巡らされた通路は最終的に1つのルートに合流していたのだ。


 それを辿って行けば、エリーに会えるかもしれない。


 俺たちは、探索に乗り出した。




 ********************




「……さぁ、覚悟は良いか?」  


 そして、俺たちは、盗賊たちを殲滅した。


 その後、男たちを引き渡した際に、ある事に気付く。


 偽物とはいえ、彼らが音楽隊だ。彼らが演奏しないと演奏会は中止になる。


「……メロディノーツで我慢して貰おう」


 俺は、サクラカンパニーの販売試作品の発表会という事にして、クラシックを大音量で流し、彼らの代わりにする事にした。


 その反響は凄いもので、メロディノーツを欲しがる者たちから増産の依頼が沢山来てしまった。


 これは、何れ売り出さないと不味そうだ。


 演奏会が終わった頃には、日もしっかりと落ち、月光華は綺麗な緑の発光を行っていた。


 その光景は確かに幻想的で、皆が何度も訪れる理由が理解できる程に美しかったのだった。


 色々とゴタゴタとしていたけど、終わり良ければ全て良し。


 最高に、ハプニングの尽きない1日はこうして終わった。

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[気になる点] サブタイ 音楽隊とは仮始の姿!その正体とは!!       ↓ 音楽隊とは仮りの姿!その正体とは!! かな?
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