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迷子のエリー

「さて、荷物を置いた事だし。予定通り、街に遊びに行こうか。見頃になるまでには、まだ時間がたっぷり有るから楽しもう!」


『おぉ〜〜!』


 俺たちは、街に繰り出す事にした。


 月光華の発光が一番綺麗に見れるのは、完全に日が落ちて周囲が暗くなった時間帯だ。


 また、開花に関しては、深夜を回った頃になる。


 理由は、月の光をエネルギーに……正しくは、月由来の魔力らしい。それをエネルギーに使い開花するので、最も光が当たる時間に開花するそうだ。


 現在の時刻は、17時ちょっと前。俗に言う、逢魔が時。


 誰かが隣に立っていても、夕日の逆光などでお互いの顔が良く見えない。まぁ、魔力感知を使えば見えるんだけどね。


「人も多いし、チビッ子ズは特に気をつけてね」


 悪魔族も俺たちを信頼してくれたのだろう。子供たちを連れて来る事に反対しなかった。


 それとも、悪魔族の大人も数人連れて来たからだろうか?


「分かってるよ。ユーリお兄ちゃん」


「大丈夫よ。ローシュ君は、私が見るから」


 そう言ってローシュを後ろから抱き締めるアフロディーテさん。


 身長差もあって、ローシュの後頭部はアディさんの胸に埋もれてた。


 なんか、ちょっと羨ましい。


「ちょっと、アディお姉さん! 人前だと恥ずかしいよ!!」


 それを恥ずかしがるローシュは、そのまま首を左右に振った。


「え〜っ……」


 そして、ローシュから少し距離を置いたアディさんが起こすエロハプニング。


 ローシュの頭の動きで着ている服の肩紐が左右とも落ちてた様だ。


 彼女が後ろに1歩引いた事で、服がストンと落ちた。


『なっ!?』


 町の道端だというのに、色々晒すアディさん。


「包囲!!」


『了解!!』


 急いで彼女を皆で囲い背中に隠した。


「何してるんすか!? 後、ご馳走様です!!」


「アディさんは相変わらずだな〜。ユーリ。後でお話が有ります」


「あっ、……うん」


「私も参加しますからね。アディさんが着替えたらそこの路地でじっくり聞きましょう」


「えっ、何で俺が責められる流れになってるの?」


「「見過ぎだから」」


「はい、そうですね」


 だって、目の前に現れたら見るだろ? だって、男だもの……。


「母さん! ちゃんと気を付けて!」


「あら〜、気を付けていたわよ。私のせいじゃないわよ」


 アディさんは、街中で露出しているのに、全く気にした素振りを見せていない。


「ごっ、ごめんなさい! 僕のせいです!! ホントにごめんなさい!!」


 ローシュは、自分のせいだと思っているので全力で謝っていた。


「もう〜、見たかったのね。お・ま・せ・さん♪ ほ〜ら、どうぞ」


「はうっ!?」


 裸のアディさんに正面から抱き着かれるローシュ。


「こらっ! イチャイチャすな! さっさと着替えて!」


 それを説教するエロースと俺たちの周りは、なかなかにカオスになっていた。


「ローシュ。頑張れ! 俺の様にはなるなよ」


「大丈夫だよ。今日は、エリーもツッコミを入れなかったし」


「マジで?」


 エリーは、ローシュがアディさんとイチャイチャしているとツッコミを入れるのが日常になっていた。


「エリーも成長したんだな。偉い……居なくない?」


『えっ?』


 そこで、皆も気付いた様だ。


 悪魔族の子供たちの数を顔を見ながら数える。やはり、1人足らないというかエリーがいない。


『迷子だ!?』


 どうやら知らない内にエリーとはぐれてしまっていた。




 ********************




 露店の1つに、色んな色をしたヒヨコ型の魔物を売ってる店があった。この魔物、寿命が短く成長しても子犬サイズまでしか成長しないので、危険性がほぼ無く露店などで売られる事がある。


 そこの店の前に、座り込む一人の悪魔族の子供がいた。


「あれ? ここは、何処?」


 そう、エリーだ。


 彼女は、色とりどりの魔物を見飽きて顔を上げた時には、見知らぬ場所にいた。


「皆、何処行ったのかな?」


 案外、迷子の本人は気付かないものだ。それは、彼女も同じだった。


「どうした、嬢ちゃん? 迷子か?」


 彼女の様子を伺っていた露店の店主がエリーに尋ねる。


「ねぇ、赤い服を来たお兄さんを知らない?」


「赤い服の男? それなら、向こうに行ったぞ」


 露店の店主は、人混みの方を指差す。それは、ユーリたちがいる方とは真逆とも知らずに。


「向こうね。ありがとう」


 エリーは、それを聞いて直ぐに駆けて行った。


「あっ、お嬢ちゃん……行っちまったか。服の特徴を聞きたかったんだが……」


 実は、店主が見たのは、赤いキルトだったのだ。


 エリーが言った赤い服と聞いて、この町を盛り上げる為にやって来た音楽隊が身に着ける男性用の衣装を指していると勘違いしたのだ。


 そもそも、春の時期に着る赤い服がコートの事だと思わなかったのだ。




 ********************



 その頃、ユーリたちは焦っていた。


「アイリス! 魔力感知で見えないか!?」


「ごめん!人がごちゃごちゃで見分け辛いの!!」


「竜体で探しますか?」


「それは、流石に騒ぎになるから止めよう!」


「ギンカ!エリーの匂いを追ってくれ!」


「分かりました。お任せーー」


 そうギンカが言いかけた瞬間、ハプニングが起こる。


「ごめんザマス。通らせて貰うわね」


 香水を大量にまぶした太っちょのオバさんがギンカの前を通ったのだ。その匂いはあまりにも強過ぎて、離れていたユーリたちも嫌な顔をする程だった。


「……ヤバいくらい吹き付けたみたいだな」


「流石に鼻がもげるかと思ったよ」


「だな。それじゃあ、ギンカ頼……ギンカ?」


「………」


 突如、ドサッとギンカが倒れた。何故か、痙攣まで起こしている。


『ギンカ!?』


 彼女の身体を起こすと白目を向いて泡を吹いていた。


「おっ、おい! しっかりしろ! いっ、一体何が起こった!?」


「……まさか?」


「……あり得ますね」


「可能性は、高いでしょう」


 ギンカが倒れた事で動揺する俺を放置して、皆は原因が分かった様だった。


「何が原因なんだ?」


『香水』


「………」


 あっ、うん。俺も理解した。あの匂いはヤバかったもん。


 それが、鼻の良いギンカなら何倍にも増したダメージになるわな。


「って、どうやって、エリー探すんだよ! エリーは、アイテムも落としてるんですけど!!」


 エリーを探す為の手段として迷子防止のアイテムを持たせていたのだが、それは落としていたのだ。


 その結果、ギンカの鼻を頼ろうとしていたのだが、ダメになったのだ。


 結局、ユーリたちは子供たちを宿へと戻し、バラバラに探す事にした。




 ********************




「あれ〜、ホントにこっちで合ってるのかな?」


 その頃、エリーは町外れの森の近くにいた。


 色んな人たちに話を聞いて回った結果、音楽隊を追いかけ続けていたのだ。


「お兄ちゃんの事だから、びっくりさせる為に外に別荘を建ててたりして?」


 エリーは、そう思いながら躊躇なく森へと足を差し向ける。


 実は、それがハプニングの始まりとも知らずに……。

今日も少し遅れました。ペースを戻せる様に頑張りたいと思います。

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