薬屋 テリーゼ
現在、アンナの案内でポーション等を扱う薬屋の前にいる。
「ここが我が国一番の販売店薬屋テリーゼです。中へどうぞ」
案内されるまま中に入った。
店内は、色々な薬草が瓶に詰められて飾られている。
ポーションを詰めるガラス瓶なんかも飾られてる事から販売している様だ。
後で買わねば。
「すみません。買い取りをお願いします」
アンナさんが店の奥に声をかける。
「はいな〜」
気怠い声と共に奥から褐色の姉さんが現れた。
鑑定。
種族:ハイエルフ・ダーク種
ダーク種?人間の黒人みたいな位置付けか?
スキル:薬師。賢者。
薬師は、同じだけど劣化版みたいだ。
賢者。鑑定、魔力A、詠唱速度A、耐性魔A、属性ブースト、古代呪文、魔法知識理解の効果あり。
魔法のエキスパートみたいだ。
「買い取りだって?何を持って来たの?」
「ガラス瓶が無かったので、石瓶に入れていますがエリクサーを持って来ました」
ピクッ。おっ、耳が反応した。
「エリクサーだって?ちょっと見せて」
エリクサーの入った石瓶を渡す。
お姉さんは、気怠そうだった態度から一変。
瓶を受け取ると数滴足らし、色々確認しだした。
その後、頷いている事からこれが本物のエリクサーだと納得した様だ。
「偽物が多いから確認が必要でね。久しぶりに本物を見たわ。しかも、既存のものではなく最近造られたモノ。アンタが造ったの?」
よく分かったな。あぁ、石瓶で渡せば気付くか。
「えぇ、そうです。材料の一部見せましょうか?」
アイテムボックスから月の雫を取り出す。
証拠として見せるなら一番入手し辛いモノが良いだろう。
お姉さんの乾いた笑いが響く。
「ははっ、驚いた。それも売らない?」
「ダメです」
俺とアイリスの愛の結晶ですから。
さっさと、アイテムボックスに仕舞う。
「そうか、残念。で、誰もが所持すら秘匿するはずのエリクサーを売るって事は、材料の入手法を知ってるって事だよね?」
「知らないです」
「そんな気軽に売ろうとするのに?しかも、手作りを石瓶に入れて?」
やっぱり完全にバレてら。
「……知ってます。入手が難しいですけどね」
アイリスといちゃいちゃしたら出来ます。
「その情報に白金貨30枚出してもいい、どう?」
マジか。
それは、相当の金額だった。
この世界は、紙幣は無く硬貨が流通している。
基準となるのは、重さ。
余談として、マリー曰く、重さが基準になっているので、硬貨の柄には国別の特徴があるらしい。
硬貨の価値は、小銅貨=100、中銅貨=250、大銅貨=500、銀貨=1000、大銀貨=5千、金貨=1万、大金貨=100万、白金貨=1千万って感じだ。
白金貨30枚は、3億円って言ってるのと同じだ。
「なんなら、倍でどう?」
6億入りました。宝くじの額ですね。
「秘密だってなら、誓約を行ってもいい。私の身体すら差し出してもいい。それだけの価値がある」
エルフの姉さんは、おっぱいを揺らしてアピールする。
男ですからつい目が奪われるな。
ベシっ。
分かってるって。
「薬師なのに知らないんですか?それより嘘かも知れないのによく信じますね」
「私は、長命な種族なだけあって500年程生きているけど入手法を知らないわ。エリクサーの材料である月の雫の名前は、古文書を読み解けば分かるけど、入手法は秘匿されて、どれだけ調べても出て来ないのよ。それに証拠で月の雫を見せる奴は普通いないわ。それが信じる理由」
俺は、顔に手を当てて考え込む。
ミスった。石瓶に入れて売るんじゃなかった。
それならまだ誤魔化しが出来たのに。
そして、売るなら素直にポーションにしとくんだった。
これ、話すまで納得しない流れだぞ。
「誓約に追加を加えて納得してくれるなら構いませんよ」
そうそう入手出来ないだろう。
「ホント!?」
めっちゃ身を乗り出して来た。
顔が近い。顔が近い。
年上のお姉さんなだけあってドキドキする。
……ツッコミがない。
これは仕方ないって判断なんですね。
「おっ、落ち着いて下さい。そもそも、契約紙はあるでしょうけど金はあるんですか?」
白金貨60枚だぞ。
「その心配は、大丈夫。元々、薬屋は儲かるもの。しかも、今回の祭りの為に大量買いされてね。持ち合わせは十分」
「なら、契約紙をお願いします」
「分かったわ」
机の引き出しから羊皮紙が出される。
羊皮紙には、既に『任意による他者への情報提供は如何なる方法であっても禁ずる』旨が書かれていた。破った場合は死。
これに追加文を継ぎ足す。
『エリクサーの買取りを優先的に行うこと。原料栽培並びに作製を補助する事』
知ったからには売るのはここだけにしよう。
ついでに栽培とかを手伝わせよ。
スキルだけじゃダメな気がするし。
「これでどうです?」
「喜んで。どう?私も付ける?スタイルには自信があるのだけど?」
「その話にはそそられますが、奥さん居るので結構です」
個人的にはダークエルフとか好きだけどな。
彼女がサインした事で、契約は成立した。
名前は、リリアーヌと言うらしい。
契約書の名前が発光したから本物だろう。
「そうそう買い取りは?いくらで買ってくれる?」
「忘れてた。量が2本分程だから白金貨2枚でどう?」
1本、白金貨1枚。
「アンナさん、どう思う?」
一応、アンナさんにも聞いてみた。
「妥当では?上級ポーションが金貨5枚くらいですし」
「じゃあ、それでお願いします」
今日一日で大金持ちになった。
麻袋に入れられた白金のコインを渡された。
あっ、ガラス瓶と試験管買わなきゃ。ついでに薬草も。
結局、薬草やらガラス瓶やらを買って白金貨5枚を消費しておつりで大金貨5枚渡された。
瓶は、安かったが薬草が高かった。
やはり全種類は不味かったか。
薬師スキルで栽培するし、初期投資だと思う事にしよう。
帰り際に、約束通り情報をお姉さんに耳打ちした。
「はぁあ!?」
入手法を聞いたお姉さんは、大変驚いた。
そりゃあ、驚くよね。俺も知った時は驚いたもん。
普通は、手に入らないってね。
「気が向いたら何時でも良いからね〜」
去り際に、凄く魅力的な事を言われながら店をあとにした。