表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/484

魔王国のダンジョン

 アルスマグナ魔法学校がある街には、魔王国の街ダンジョンが存在する。


 学校からの距離もそう遠くはない。むしろ近い。そんな場所に魔法学校が有るのには訳がある。


 それはアルスマグナ魔法学校が元々はダンジョンを調査する国の研究機関だったからだ。

 アダムス曰く、ドロップしたアイテムを学校の先駆けとなった研究所にて調査していたらしい。


 そして、このエリア一帯自体もダンジョンの為に生まれた。


 ダンジョンは、その利益性から竜王国の様に国家が管理に乗り出す。軍隊を送って入るのを制限したり、溢れ出て来た魔物を狩ったりだ。


 そして、次は冒険者や商人が来る。


 人が集まれば、彼らの寝床が出来て、食事処が出来てとどんどん建物や一般人が増えていく。そしたら竜王国のティラノスの様に街が出来るのだ。


「それじゃあ、準備は良いか?」


『はい!』


 ダンジョンに入る為の長い待ち時間が終わり、俺たちを含む学校関係者が順番に入っていく。


 しかし、入って直ぐに1階層では無い様だ。光の魔法で周囲を照らし、長い長い階段を降りていく。


「あのっ! ユリシーズさん!!」


「ん? どうした? 何か問題でもあったか?」


 俺たちの前方を歩くタクトがこっちを振り返り聞いてきた。


「さっき、入る手続きをした時、冒険者ギルドの方に言われてた話はホントですか?」


「う〜んと、何だっけ?」


「ティラノスのダンジョンを踏破した事よ」


 タクトの代わりに、リリカがそう教えてくれた。


「そうです! その話です!!」


「それは、事実だよ。ベルのチームと共同で攻略したな。本来ならゆっくり攻略する予定だったんだけど、イレギュラーがあってね。ギンカに頼んで救助した人たちを連れ転移して貰ったのさ。そして、俺たちは面子が減ったから最短ルートで攻略する事にしたんだよ」


「ベル先生も!? 凄いなぁ、憧れます!!」


「最短ルートって……ダンジョンの構造を把握してたの?」


「意外と知られてないけど、色々と調べる方法はあるよ。例えば、魔力感知の応用だったり、精霊を使ったりとかさ」


「えっ、どうやって?」


「それはねーー」


 タクトたちとダンジョン話で盛り上がりながら進んで行く。500m程降りた辺りだろう。俺たちは、光と共に明るい空間へと出た。


「おお、噂通り1階層はフィールドタイプだな」


 階段を降りた先は、野原だった。手つかずの木や草が自然と生い茂っていた。


 しかし、よく天井を突き破らないものだと思ったが、天井で曲がった木も見当たらないので、ダンジョンによる制限がされている様だ。


「さて、ここからの行動は君たち次第だ。アドバイスが欲しいならして上げるよ」


 そう言って、タクトたちに行動を委ねた。


「わっ、分かりました。まずは、地図を広げて……」


 他の学生チームがそうしている様に階段から離れた位置で、作戦会議が始まった。


「今いる地点がこの場所で、下の階層への階段がここだね」


「距離にしておよそ3kmって所かしら?」


「遠っ!? そんなに離れているの!?」


「フィールドタイプは、ラビリンスタイプと違い複雑じゃない分、色々優先出来るからどうしても広くなりがちだそうですよ〜」


「だったら、俺のアースゴーレムに乗って行こうぜ! 移動も速いし、攻撃も出来るからよ!」


 どうやら、ゲンタの操るゴーレムで移動する事にした様だ。


「さぁ、見て驚け! これが俺のゴーレムだ! ……あれ!?」


「ほう、なかなかのデカさじゃないか」


 ゲンタが、懐から取り出したゴーレムのコアを地面に投げて魔法を使うと、土が徐々に盛り上がり3m程の人型が出来た。


「なんだ、これ!? いつもより小さいぞ!?」


 ゲンタは、ゴーレムに近付き確認しだした。


「そうなのか?」


「はい。いつもは、5mを超える奴が出来るんですけど……」


「マジか」


 何故、それを模擬戦で使わないのか? 使えば、トーナメント残るくらいは行ったのでは?


「ゲンタ。ダンジョン内の土を使って作ったからじゃないのか? 土もダンジョンの一部だしな」


「あっ、有り得る……」


 ゲンタは、ゴーレムの大きさに納得した様だ。


「でも、困りましたわね。このサイズだと2〜3人という所じゃない? もう一体作れないの?」


「魔力が足りない……」


 ゲンタの魔力では一体が限界だった様だ。仕方ないので、俺はギンカに頼む。


「ギンカ。他の子たちも乗せてくれないか?」


「了解致しました」


 そう言うと魔物体に戻ったギンカ。サイズも本来の大きさに戻った為、凄い迫力がある。


「やっぱり、こっちも良いな。もっふもふのふっかふかだ。しかも、カッコいい!」


 俺は、ギンカの身体に抱き着き毛に埋もれた。


「光栄です。それではどうぞ、ご主人様」


「メンバーの内、2人はそっちな。残りは、ギンカに乗ると良い。ただし、ちゃんとお礼を言う事。後、ゲンタは後日ゴーレムの作成を見せること。これで良い?」


『はい』


 というやり取りが有り、各自騎乗する事にした。


 結局、ゴーレムの方には、ゲンタとネムが乗る事となった。アースゴーレムは、2人を両肩に乗せて進む。


「んっ?」


 俺は、アイリスへと視線を向けた。彼女も頷いているからそう言う事なのだろう。


 タクトたちはというと……気付いてない様だ。


「MoOOoooo!!」


「っ!? アースゴーレム!押し留めろ!!」


 草むらから突然突っ込んで来る者がいた。ゲンタは、気付くなりネムと共に飛び降りた後、アースゴーレムへ指示を飛ばし捕獲した。


 襲撃者は、バッファローを攻撃的にした様な魔物だった。獲物を貫かんと正面を向いた両角をアースゴーレムは掴み押し留めている。


 名称:ギュイスア

 危険度:B-

 説明:肉は、食用可能。突進による攻撃は強力なものの、耐久力がない。

 オススメ:しゃぶしゃぶにして、ぽん酢や胡麻ダレで召し上がれ


「皆、今だ! 押し留めている間に仕留めろ!!」


 ゲンタの声を受けて、皆が攻撃魔法を次々に放っていく。次第に抵抗していた魔物の勢いは弱まってきていた。


「これで、最後だ!」


 アースゴーレムが角ごと持ち上げると地面に叩き付けた。ゴキッという鈍い音と共に魔物の姿が消え、肉の塊が落ちていた。


「あっ、ドロップしたよ」


「食品ですわね。どうしましょう? かさ張りますし」


「う〜ん、放置で良いんじゃない? 今、食料足りてるし」


 どうやら、放置する流れの様だ。超勿体無い。しゃぶしゃぶ美味いんだぞ。


「俺が貰っても良いか?」


「ユリシーズさんが? 僕は、良いです。皆は?」


 タクトが聞くと良いよという声が上がった。


「サンキュー。なら、これで美味しいご飯をご馳走してやるよ」


 一応、ダンジョン探索は往復で1週間という事になっている。その為、食料を大量に持ってきてはいるが残せるなら残した方が良いだろう。


「ありがとうございます。楽しみにしてます」


 ドロップした肉の塊をアイテムボックスに入れるとダンジョン探索を再開した。


 その後も色々な魔物と戦闘したが、火力や柔軟性は有る様で、特に危なげな所はない。


 ただ、魔物の接近を感知出来る能力は無い様で、攻撃されたり飛び出てきたりするまで反応出来ていない。これでは、何れ怪我するかもしれない。


「と、思ったらコレだよ」


『えっ?』


 飛行タイプの魔物に空から強襲された。皆が動けなかったので、代わりに仕留める事にした。そのままだと怪我しそうだったし。


 そして、ドロップしたのは魔石だった。


 このサイズなら大銀貨3枚くらいはするだろう。子供のお小遣いとしては丁度良い。


「ほれ、やるよ。俺は要らないし」


 タクトたちに投げて渡した。彼らは、凄く驚いた顔をしている。


「良いんですか?」


「良いよ。そのサイズなら人工で作れるし」


 平穏なる小世界(イレーネコスモス)で模擬戦でもすれば、中サイズの魔力結晶が出来る。


 魔石は天然物、魔力結晶は人工物って違いしかなく、結局は同じ物なのだ。だから、術式を知っていれば直ぐにでも出来る。


「それより小さくても良いなら、この場で作れるぞ。……ほらな」


『はぁ!?』


 いつも使ってる術式を使い、俺の魔力を結晶化させて見せた。そしたら、皆の表情が凍り着いた。


「あれ〜、僕の常識が崩れていく気が……」


「規格外過ぎ……」


「そりゃあ、Sランクになるよね」


「すっ、凄いですね〜……」


「ホント凄ぇよ!俺に教えてくれよ!!」


 ゲンタだけは、凄く食い付いた。彼は、ゴーレムマスターなだけあって、魔石は必要だしな。というか、皆驚き過ぎだろ。


「あれ? なんかミスったか? まぁ、良いや。後で教えてやるよ」


『ホント!?』


 どうやら、タクトたちも習いたそうだ。道中教えるとしよう。でも、まず教えないといけないのは。


「魔力感知による索敵からな。それをマスターしたら教えてやるよ」


 という事で、今日は1階層のボスを倒した後、セーフゾーンで休む事にした。1階層のセーフゾーンには、他の生徒たちは居らず、どうやら殆どが下に降りた様だった。


 俺は、そのチャンスを活かし、タクトたちに魔力感知の索敵を教える事にした。結果は、直ぐに出る。彼らは、魔法学校の生徒という事だけあってその日の内に使い方をマスターした。


「よし!なら、実践しに行きましょう!!」


『うん!』


「ダメに決まってるだろ。明日な」


 時計を見ると夜になっていた。このフィールドは、時間の変化が分かり難い為、俺たちが時間把握をしてあげる事にした。


 翌朝、2階層へと俺たちは踏み入った。そこは、フィールドタイプではなく、普通の迷宮だった。


 タクトたちは、己の成果を確認したい様でどんどん進んで行くのだった。それを微笑ましく思いながら俺たちも進む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 試験の為の護衛なのに手出しして助け過ぎ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ