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決勝戦と即席チーム

 準決勝後のインターバルが終わり、皆が見守る中、ステージにはイナホとエミリアが立っている。


「それでは両者、試合を開始して下さい」


 審判の合図を受けて、決勝戦が始まった。


「行きなさい! 幻霧兵(ミストウォーリーア)!!」


「へぇ〜っ、あの技はそんな名前なんだ」


 さっきまで嫁たちしか見てなかったからエミリアの技名とか聞いてなかったよ。さて、それに対するイナホの行動は。


(イース)!」


 幻霧兵を氷のルーンで凍らせる戦法に出た様だ。これなら動きを封じるだけでなく、直ぐに気化させる事も出来ないだろう。


流水斬(ウォータースラッシュ)!」


「ハッ!セイッ!」


 エミリアは、幻霧兵では倒せないと思い水魔法による斬撃に切り替えた様だ。


 しかし、うちのイナホがそれくらいで倒せる訳がない。


 イナホは、小柄を活かしつつアクロバティックに避けて距離を詰める。また、避けれない物に関しては全身に纏った高魔力の刃で弾いていた。


「普通の魔法戦だと倒せそうに有りませんね。やはり、アレを出すしかない様ですね」


 どうやら、エミリアは奥の手を出す事に決めた様だ。


希望の盾(アイリスアイギス)!!」


 エミリアは、スファレとの戦いで使った水球にその身を包まれた。


「行きますよ!」


 その宣言を受けて水球の表面が波打つと棘が現れ、エミリアへと近付くイナホを襲った。


「っ!?」


 イナホは、寸前で横に飛んだお掛けで致命傷を回避した様だ。


 しかし、棘の一部に血痕が付いている。イナホを見ると肩が赤く染まっていた。どうやら、カスってしまったらしい。


「ふぅう………」


 イナホは立ち止まり、深呼吸を始めた。呼吸を整え、反撃する様だ。


 その間、エミリアはというと水球に包まれたまま動かない。伸びていた棘もそれ以上伸びる事はなく戻っていった。


「スファレの時もあの距離だったな……」


 なら、アレが基本的な射程距離なのだろうか?


「……よし!」


 呼吸を整えたイナホがとうとう動き始めた。それに合わせてエミリアも動き始める。


 今度は、棘でなく触手に切り替えた様だ。水で出来た触手がイナホへと迫る。


「(かかった!)」


太陽(ダエグ)!」 


「こっ、これは!?」


 エミリアは、イナホが使ったルーンの影響を受けて驚愕の声を上げた。


 何故なら、イナホを襲う筈だった触手が弾かれたとかでなく、突如消えたのだ。しかも、エミリアを包んでいた水球も一緒に消えた。


 イナホの使ったルーン文字は、昇って沈んで、また昇るという太陽の動きを司る。つまり、対象物の時間を経過させるのだ。


 基本、人だとレジストされて無理だが、自然現象には効果がある。


「水は、時間の経過で蒸発し、最後は乾いて消える」


 今さっき、イナホへ教えたルーン文字だ。もし、策が思い付かなかった時の為、保険として教えたつもりだったのだが……。


「一発目で成功させたよ。次から彼女にもルーン文字を教えようかな?」


「師匠。私は、止めませんよ」


 うちの弟子も同意したので教える事にしよう。


 さて、その後のエミリアとイナホの戦いはというと。


鳴振撃(シュヴァインブレイク)!」


 イナホの打撃技が、呆気に囚われていたエミリアの腹部へと命中し、彼女は場外へと吹き飛ばされていた。


『オオォーー!』


 周囲からイナホの勝利への歓声が上がった。


「イナホ! よくやった!! おめでとう!!」


「ユーリさん! 私、やりました! エミリアちゃんに勝ちましたよ!!」


「わわっ!?」


 俺がイナホを褒めると走って飛び付いてきた。どうやら、心の底から嬉しかったらしい。


 そして、すりすりしてきた。俺は、イナホがあまりにも可愛かったので、キスをしてしまった。


「しっ、師匠!? そういうのは、違う所でやって下さい!!」


 ベルから怒られた。ちょっと感動を分かち合っていたたけなのに。


 その後、アダムスが来て、編入試験は合格と告げられた。


「枷を付けた状態であの実力。誰も文句を言わないだろうさ」


「それじゃあ、ダンジョン探索はどうするんだ?」


「引き続き頼むよ。君たちのチームから最低2人を配分する形になったから」


「OK。任せてくれよ」


 こうして、長かった2日目の模擬戦が終わった。


 その後、明日のダンジョン探索に参加するメンバーが集められた。生徒たちは班毎に分けられ、担当の冒険者と打ち合わせを行う予定だ。


 また、冒険者たち同士でも話合いを行う。


「紅蓮のリーダーであるユリシーズ・ヴァーミリオンです。皆さん、よろしくお願いします」


 俺たち以外の冒険者は、最高でBランク。基本Cランクの者たちだった。冒険者たちで話し合いを行う際、ランクが高い者ほど発言力が強くなる。その為、Sランクともなると進行をさせられるのはよくあるのだ。


「私達は、深層部を目指しそうな成績上位者のグループや問題児の多いグループに関係者を2名ずつ配置し、サポートに撤する予定です。なので、皆さんにも2人組で生徒たちについて貰う形となります」


 成績上位者が進み過ぎない様にするのも必要だし、馬鹿な生徒が無茶しない様に見張らないといけない。


「これが学校側から渡された組分け表とダンジョン内の資料です。受け取った後、生徒たちがいる場所へと向かって下さい。そこからのミーティングは、各自にお任せします」


『了解』


 冒険者たちは、経験者なのだろう。資料を渡すと直ぐに行動を開始した。全員が移動したのを確認して、俺たちも生徒の元へと向かう。


「行こうか。アイリス、ギンカ」


「は〜い」


「了解しました」


 俺のグループには、従魔としてアイリスとギンカが同行する事になった。その代わり、他は生徒たちのみで構成される事になっている。


 ちなみに、アイリスはどっちの立場を選んでも良いので、任せたら従魔として参加する事になった。俺としては、色々と楽なので歓迎だ。


「おっ、あそこの生徒達だな」


 Aグループと書かれたプラカードが建てられた地点に数名の男女がいた。俺たちは、近付いて声を掛ける。


「よう、君たちがAグループかな?」


「あっ、はい! そうです!! 貴方が担当者ですか? ボクは、タクトと言います。よろしくお願いします!」


 眼鏡を掛けた学者系の少年が振り返り挨拶してくれた。礼儀正しい子で好感が持てる。


「貴方たちが、私達の担当者ですの?」


 そう聞いて来たのは、貴族っぽいツインドリルの巻き髪をした少女だった。


「おう、そうだぞ。よろしくな」


「ふ〜ん、強そうに見えませんわね? 大丈夫ですの?」


 うわ〜……久しぶりに強くなさそうとか言われたよ。やっぱり、未だにそう見えるのな。


「でもさ、ミミカ。連れているのは、例の魔物だよ?」


「ミヤノ。だからと言って、彼が主とは限りませんわよ?」


 貴族っぽい少女の名前はミミカで、その子の友達みたいなスポーツ少女はミヤノと言う事が分かった。


「私のご主人様で間違い有りませんよ」


「あ〜っ、やっぱり〜そうなんですね〜」


 3人とは、違う所から凄くおっとりした声が聞こえてきた。そこには、眼鏡を……魔眼封じを掛けた長髪の少女がいた。


「魔眼持ちなんだね。良かったら何が出来るか教えてくれないか?」


「魔眼持ちだって分かるんですね〜」


「あぁ、普通の眼鏡みたいじゃなかったから鑑定眼で見たんだ。すまない」


「良いですよ〜。出来るのは〜、魅了なんです〜」


 よりにもよって1番不味い奴ではないか。


「ネムは、魅了を使わなくても男子に人気なんですよ。ほら、この豊満なボディ!クゥー、同世代なのに羨ましい!!」


「ミヤノちゃん。私のおっぱい揉んじゃ、めっ! だよ〜」


 魔眼少女は、ネムと言うらしい。彼女に抱き着いたスポーツ少女のミヤノが教えてくれた。


「あれ、あと一人足りなくない? 確か、このグループは5人の筈では?」


「あっ、それならーー」


「隙有り!」


「なるほど。力試しか何かな訳か」


『えっ?』


「えっ? ええ〜っ!?」


 背後から男子生徒が襲ってきたので、転移で背後に周り、アイリスがちゃっかり渡してきた糸で簀巻きにして木に吊るした。


「ちょっ!? 何っ!? 何が起こったの!?」


「あははっ、何って、襲ってきた君を簀巻きにして吊るしただけだよ」


 あまりにその子が間抜けだったので笑ってしまった。


「すっ、凄い……」


「ねっ、ねぇ!ミミカ、今の見えた? ゲンタが一瞬です巻にされたよ!!」


「私には、見えませんでしたわ……」


「はぁ〜、凄いですね〜」


 他の子供たちもびっくりした様だ。


「お〜ろ〜せ〜よ〜!!」


「俺としては、試そうとした罰で吊るしたままにしたいんだけど?」


「ごめんなさい!勘弁して下さい!!」


「とりあえず、俺の実力は理解した?」


「したした!だから、降ろして!!」


 俺は、「仕方ないな〜」と言いながら男子生徒を地面に降ろしてあげた。


「それじゃあ、改めて自己紹介をしよう。俺は、ユリシーズ・ヴァーミリオン。そして、こっちが奥さんのアイリスとギンカ」


「よろしくね♪」


「ご主人様の為に頑張ります」


「「「「…………」」」」


「うん? 皆、何とも言えない顔をしてどうした?」


「今、ヴァーミリオンって名乗った様な……」


「2人を奥さんって言った様な……」


「でも、片方は魔物……だよね?」


 といった感じで困惑していた。


 彼らに説明は……止めよう。俺の場合、説明する事が多過ぎるからな。


「全部事実だよ」


「ご主人様の嫁の数は、今や全部で27名となりました」


「「「「…………」」」」


 子供たちの顔が見れないので顔を反らす事にした。


 しかし、何時までもこのままではいけない。何故なら、ダンジョン探索の為のミーティングを行わなければいけないからだ。


「オッホン! ミーティングを始めようか」


 俺は、この話を全力で流す事にした。

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