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校長とは、仲良くなれる気がした

「よう、ベル。数ヶ月振り。元気してたか?」


「師匠! それにギンカさん!」


 職員室に入って声を掛けるとベルが近付いてきた。


「途中、エミリアを見つけてな。案内して貰ったんだよ」


「えっ? 大丈夫でしたか? 彼女の周りには、ファンクラブの子達がいて教師も近付き辛いんですけど……」


「大丈夫! 気絶させたから!」


「………はぁ?」


「……ユーリ叔父様の英雄覇気で」


「何してるんですか!?」


「いや〜、だって、無視してエミリアと会話を始めたらさぁ。小石とか投げてくるんだもん。ギンカもその内切れそうだったしな」


「あの子たちは……」


 怖いもの知らずですねとベルがため息を付いた。


「あっ、女子生徒が1人恐慌状態になってたから、後でフォローしてくれない? タオルケットを持ってるから直ぐに分かると思う」


「分かりました。フォローは、お任せ下さい」


「それじゃあ、校長室に話をしに行こうか? 今から大丈夫?」


「監視と編入の件です。大丈夫です。今から行けます」


「そういう訳だから、エミリア。ここまでの案内助かったよ。編入したら仲良くしてやってな」


「ええ、楽しみです。薦めて良かったです」


 実は、元々編入を薦めてきたのはエミリアなのだ。


 エミリアが妖精の箱庭(フェアリーガーデン)の花見に来た際、学校の事を相談した。


 主に、入学させるにはどうしたら良いかとか。どのくらいの実力が有れば良いのかとか。


 それらを話した結果が編入なのだ。


「2年時編入はどうですか? 1年で学ぶ基本は既に全てマスターしている様ですし、もっと気軽に喋れる友達が欲しかったんです!」


 と薦められたので、エロースと相談してみた。


 そして、彼女も問題ないと答えた。イナホたちには、その時から既に十分な実力があったのだ。


「それじゃあ、行くよ。気軽に遊びに来ていいからね。またね」


 エミリアと別れ、職員室を後にした。






 校長室は、職員室から少し行った所にあった。そこは、いかにも特別な部屋ですよといった感じで豪華な扉をしていた。


 コンコンコンとベルが扉をノックする。


「校長。お客様がお見えに成りました」


「おう、入り給え」


 返事が返って来たので、俺たちは校長室へ入る事にした。


「いや〜、よく来てくれた。歓迎するよ。好きに座り給え」


 校長室に置かれたソファーに腰掛け、校長と対面する。隣にはベルが座り、背後にはギンカが待機。


「「…………」」


 そして、目があった瞬間、俺の中に衝撃が走る。それは、校長もだった様だ。


 2人で立ち上がり無言で握手を交わした。


「なんか校長に親近感を覚えたわ」


「奇遇だね。私もだ。君とは仲良くなれる気がするよ」


「なんか、2人を会わせるべきではなかった気がしてきた……」


 全く何を言ってるんだ、ベルは。スマホが有れば、連絡先を交換したくなる程度なだけなのに!


「自己紹介が、まだだったね。私は、アダムス・ヒューズという。好きに呼ぶと良い」


「ok。俺は、ユリシーズ・ヴァーミリオン。こっちが一般的なんで、よろしく。じゃあ、アダムスと呼ぶからユーリと呼んでくれ」


「あぁ、分かったよ。ユーリ」


 校長は、なかなかに気前の良い人だった。


 見た目は、年より凄く若く見えるタイプで、老人なのだろうが中年の様に見える。


 また、鑑定による種族は、こうだった。


 名称:アダムス・ヒューズ

 種族:吸血鬼


 吸血鬼といえば、美男美女のイメージなのだが……。いや、イケ爺さんなのは確か。


「あっ、そういえばお2人は似てますね。嫁が多い点で」


 ベルが俺と校長の共通点を挙げてくれた。


「えっ、マジで?」


「ほう?」


「マジです。校長も奥さんが5人程いますよ」


「違うぞ、ベル君」


「あっ、そうなんですか?それは、すみまーー」


「7人だ。しかも、現在結婚を迫る女性がいてね。……更に、増えるやもしれん」


 2人増えたね。しかも、増える予定もあると。


「なぁ、アダムス。今度、飲みに行かないか?」


「ああ、そうだな。色々話そうではないか。例えば、妻が多いと夜の営みの回数も増えて大変だとか」


「分かる。他にも記念日が多過ぎて覚えるのが大変とか」


「そうだ! その上、忘れると拗ねられる! 機嫌を治すのにも一苦労なのだ!!」


「多妻あるある!? 」「本題は!?」


「おっ、そうだった」


「やべぇ、危うく忘れる所だった。ベル、助かったわ」


 ベルのツッコミで、俺たちは正気に戻った。


「確か、編入の話と昇級試験での依頼だったかな?」


「ああ、うちの子達……俺の嫁たちだな。彼女らの2年時編入の試験を頼む。それから昇級試験で俺に生徒たちの護衛して欲しいんだったか? なんでまた?」


「それは、ーー」


 校長の話を要約するとこうだった。


 アルスマグナ魔法学校は、実戦重視の教育方針を取っている。


 理由は、学んだ事を実戦で活かせなければ、魔法使いとしての存在意味が薄れるからだ。戦場においては、火力要員としてよく用いられる。


 その為、昇級試験には知識を確認する筆記試験が1つと実技試験が2つあったのだ。


 実技試験の1つは、一般的な模擬戦。生徒同士による魔法バトル。


 これは、なかなかの見物で一般人から貴族まで見学に訪れるんだとか。


 そして、もう1つがダンジョン探索。冒険者たちにより危険性が少ないと判断された5階層まで挑む事が出来る。


 こちらは希望者のみなのだが、ドロップ品を貰える事や模擬戦より評価を貰えるとあって参加者が多数。しかも、無茶をする子が多いのだとか。


「一応、冒険者を雇って各チームに1人は付けて監督させているだけど、それでも怪我人が多いのさ。しかも、過去には死亡例もある」


「だったら、参加者に制限をかければ良くないか? 成績上位者のみとか? それで余った冒険者を監督に回すのは?」


 そうすれば、チームの総数は減り、監督役が2人付く事になる。


「それも考えたんだが、元々が落第点回避の一環でね。それをすると意味が無くなるのさ」


「え〜っと、つまり、アレか? 学校側としては、昇級させたいが、そう簡単に点数を渡せない。なので、危険性のあるダンジョン探索と?」


「そういう事だね。だから、採点法も階層到達によるものでなく、内部での戦闘回数を重視したものにしているさ」


「ok、分かった。では、本題。俺たちを雇うとなると高く付くよ」


 これでもSランク冒険者なので、金額は高い。Aランクのフィーネたちですら、Bランク冒険者をチームで雇える程の金額になる。


「分かっている。なので、相談だ。昇級試験を編入試験の代わりに受けさせないか? また、その子達の入学費用などの初期費用も免除でどうだろう」


「ひゅ〜っ♪」


 なかなかに面白い案だったので、口笛を吹いてしまった。


 つまり、イナホたちの為にやる編入試験を昇級試験で置き換える事で、ダンジョン探索にも行かせるつもりなのだろう。


「チームの事は、調べさせて貰ったよ。編入予定の子達は、最低でもAランク冒険者だそうじゃないか」


 なるほど。しかも、バラバラにして各チームに加える事で、実質護衛役が2人の様な状態にする訳だ。


 そして、入学金など諸々の初期費用。人数が多い為、結構な額になる。その額は、俺1人を雇える程だ。


「それでも足りないというので有れば、足りない分は払うよ」


「いいや、今ので十分だよ。ただ、希望なんだが、エミリアと同じクラスにしてくれないか? やはり、友達が近くにいた方が楽しいだろう?」


「分かった。その要望に添えるよう配慮するよ」


 こうして、俺たちの話し合いは終わった。






「ちなみに、話は変わるが、どういう経緯で結婚迫られてんだ?」


「学校側の森で魔物騒動があってな。取り残された生徒が居たんで助けに行った結果、惚れられた。生徒だから断ったんだが……卒業したらokだよね?と卒業間近故に猛アピールされている」


「つまり、その生徒が卒業したら……」


「うん。多分、結婚だな。逃げられぬ。嫁たちとも仲が良く、歓迎されておった」


 外堀から確実に埋められたのね。俺は、校長の肩に手を置き応援する。


「頑張っ」


 そして、俺たちは学校を後にした。


 結局、昇級試験の見学の予定が編入試験に変わってしまったが、問題ないだろう。


 それから数週間後、編入試験の知らせが届く。念の為、編入の件をイナホたちに再度確認をしたら意外とやる気だった。


 最初は、ここを離れる事を嫌がっていたのに、毎日の通学をここから出来る様にしたら行く気になった様だ。


 俺も離れ離れになりたい訳ではないので、転移門(ゲート)を創るマジックアイテムを頑張って量産した。


 そして、夏が近付く6月。彼女たちの試験が始まる。

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