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魔法学校の生徒は元気だね

 ベルからの返事を受けた数日後、詳細の打ち合わせをする為に、俺はアルスマグナ魔法学校を訪れた。


「身分を証明する物もしくは紹介状はお持ちですか?」


 守衛のいる小屋で手続きをする。


「俺のギルドカードと校長からの手紙。これで良い?」


 俺は、ギルドカードだけでなく、ベルが同封してきた校長からの手紙も一緒に出した。


「Sランクのギルドカード! 拝見致します。……なるほど。ベル先生の師で有りますか。手紙も拝見しても?」


「どうぞ?」


 守衛は、校長からの手紙も確認する。


「確認終わりました。ユリシーズ殿は問題有りません。しかし、後ろの彼女は……」


 守衛の視線は、後ろにいるギンカを見ていた。


 彼女は、前回の事が有り行きたがらなかったが、多少なりと校内の事を知ってはいるので、俺が頼み込んで連れてきた。


「ちゃんと通達しましたし、警報対策もしているので大丈夫です。もし、何かあった場合は私が責任を取ります」


 ギンカのチョーカーを改良して、魔物として結界や警報に認識されない様にした。


「……そうですか? では、お通り下さい」


 俺とギンカは、門を超えて魔法学校へと足を踏み入れた。


 そして……目の前に倒れた生徒がいる。


「これで何人目?」


 俺はギンカへと尋ねた。


「4人目です」


「……何故、こうなった?」


 そもそも、どうして生徒が倒れているかというと俺の反撃により気絶させたからだ。


 反撃という言葉から分かる通り、攻撃されたのだ。


 しかも、その理由が酷い物だった。


「俺が勝ったらその従魔を寄越せ!」


 ギンカは、物じゃねぇんだよ。だから、当然、格の違いを見せ付けてやったよ。


 まず、攻撃を受け止める。ただし、障壁により無傷。


 その後、相手が動揺した隙を付いて、腹部を殴る。慣れたもので、一発KO。気絶して倒れ伏した。


 介抱は面倒くさいので放置。見学していたギャラリーが、どうにかしてくれるだろう。


「うん? この匂いは……」


「ベルを見つけたか?」


「いえ、この匂いは確かエミリアだったかと?」


「おっ、マジか。会って行こう。案内してくれ」


 エミリアに案内して貰った方が確実だなと思いもしたので、会いに行く事にした。


 ギンカの案内に従って行った先は、バラ園だった。


 学校の物にしては手入れが行き届いており、色とりどりのバラたちが咲き誇っている。


 その中央には、白いテーブルが置かれ、数人の少女たちの姿が見えた。その中には当然、エミリアの姿もある。


「お~い、エミーー」


「おい、貴様!!」


 エミリアと叫ぼうとしたら怒鳴られた。目の前には、男女のグループが立ちはだかる。


「エミリア様を呼び捨てにしようとしたな!」


「あっ、うん」


 リーダー格の男の問いに素直に答えた。


「貧相な顔をして、何処の田舎貴族だ! しかも、エミリア様を呼び捨てにしよう等言語道断! 魔王国の大貴族である俺の目の黒い内にはそんな事はさせないぞ!!」


「……ギンカもこういう感じだったの?」


「……こんな感じでした」


 げんなりしてギンカに聞くとギンカの時もこんなだったらしい。


 いつものギンカなら怒って脅すのに、しないという事は、余計に面倒くさくなると思っているのだろう。


「(エミリアに転移で近付くぞ。内部だから妨害はない筈だ)」


「(了解しました)」


 俺たちは、各自で転移してエミリアに近付いた。


「よう、エミリア。元気にしてるか?」


「ユーリ叔父様!? それにギンカさんも!?」


「悪いな。友達との歓談中。あっ、これ、俺の店が出してるお菓子だよ。お茶に合うからどうぞ」


『どっ、どうも……』


 俺たちが突然現れた事で硬直している娘達にアイテムボックスから出したお菓子を提供してあげた。


「エミリアもいる?」


「あっ、ありがとうございます。……じゃなくて、どうして此方へ?」


「ちょっと野暮用でね。良かったら、終わった後で職員室へ案内してくれないか? ベルに会っておきたいし」


「でしたら直ぐにでも……」


「いや、後ろの子達を落ち着かせるのに、時間がかかると思うからのんびりしてて良いよ」


 俺たちの後ろでは、集団が怒りを顕にしている。


「所で、あの子達なに?」


「え〜っと……」


「エミリア様のファンクラブですわ」


 エミリアの隣にいた貴族っぽい娘が答えてくれた。


「おっ、ファンクラブか! 凄ぇじゃねぇか!!」


「いえ、それ程でも……むしろ、常時気が抜けなくて困っています」


「あ〜っ、分からなくもないな。じゃあ、コレをやろうか?」


 アイテムボックスから鍵を取り出して、エミリアへと渡す。


「これは?」


「俺が作った妖精の箱庭(フェアリーガーデン)行きの転移門(ゲート)を創るマジックアイテム」


「そんな高価な物を良いんですか!? 白金貨10枚はくだらないですよ!!」


『げほっ!?』


 周囲で傍聴しながら紅茶を飲んでいた娘たちがむせた。良家の娘たちなのか、吹くことなかった。


「試作品だから安いよ。魔力も自分の使わないといけないし」


 元々は、イナホたちの登校用に作っているものだ。完成版には、魔石を取り付け起動させるので、魔力要らずだ。


「あの〜、エミリア様の叔父様ですよね?」


「うん。そうだよ。マリアナ・ヴァーミリオンの旦那で、ユリシーズって言うんだ」


「なら、ファンクラブの子達も納得するのでは?」


「あっ、それね。多分、無理じゃないかな? さっきから地味に嫌がらせしてくるし。ちょっとお仕置きしょうかなと」


 魔法を使ってやっているのだろう。エミリアたちから見えない角度で石とかが飛んで来てる。


「あのっ、手荒な事はお止め下さい」


「いや、大丈夫だって。ちょっと威嚇するだけだから」


 俺は、エミリアたちから離れ、ファンクラブの元へと向かった。


「おい、貴様は一体何者だ!? さっき聞いたんだが! その連れの女は、この前校内でーー」


「君たち、喧嘩を売る相手は気を付けた方がいい。見た目で判断してると失敗するよ」


「何を言って……」


 リーダー格の男は、突然白目を向いて倒れ伏した。また、その周囲でも生徒たちが次々に倒れていく。


 そう、毎度お馴染みとなった英雄覇気を使ったのだ。


 和王が色々詳しかったので、話を聞いたり資料を見せて貰った事でコツを掴んだ。おかげで、以前より精度が向上し、心置きなく使える。


 しかも、威嚇によって心肺停止を起こすことも無い。気絶と恐慌状態だけを付与させれる様になった。


 大勢を相手にするには、やはりこっちが便利だ。しかも、今回は女子生徒も混じっていた訳だし。


「ひぃい……」


 あちゃ……1人だけ残っちゃったよ。しかも女の子。高魔力保持者だと恐慌になるんだよね。


 彼女を見ると尻餅を付いており、スカートには徐々にシミが広がっていた。


 男でもあんなになる訳だし、粗相をしても仕方ないよね。


 アイテムボックスからタオルケットを出して彼女に近付く。


「いっ、嫌っ!こっ、来ないで!!」


 尻餅を付いたまま、彼女は後退る。どうやら、足が震えて立てない様だ。


 俺は、一気に近付くとスカートにタオルケットをかけた。


「コレをあげるから隠すといい。それと、もう2度とこういう事はしてはダメだよ」


「(コクコク)」


 激しく首を縦に振っているので納得した様だ。


「さてと、エミリア。案内頼んでも良い?」


「えっと、はい。大丈夫です」


「あっ、エリクサーを置いて行くから体調の悪い子がいたら飲ませてあげてくれないかな?」


「あっ、はい……」


 多分、エミリアの友達だろう? に、エリクサーの劣化版を5本渡す事にした。その後、俺たちはエミリアの案内に従い、職員室を目指すのだった。

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