よく考えたら、初めて女の子に告白されました
冒険者ギルドの小部屋にて。
「ふう……満足しました」
如月は、服装を正しながらつやつやした顔だった。
しかし、女性の割合が多い世界なので、百合プレイに偏見は無いが、実際は躊躇してしないのか。そういえば、エロースもだったな。
今度、女装した状態でエロースと寝てみよう。面白い反応をする気がした。
それより、入った時から結構時間が経過した気がする。俺は、部屋の隅に置いた巾着から愛用の懐中時計を取り出した。
これは、実はアイリスたちからの誕生日プレゼントだ。
異世界暦だと俺の誕生日はズレたりして分かり辛いので、放置していた。そしたら、アイリスたちが異世界に来た日を誕生日にすれば良いとプレゼントをくれたのだ。
おかけで、また、大切な物が増えたよ。生きる気力が湧いてくる。
そんな訳で、時計を確認すると入った時から今までを数えると大体2時間程経っていた。つまり、その間ずっとやり続けていたのか。
「しかし、ホントにその浴衣脱げませんでしたね。ユーリさんでもディスペル出来ないんですか?」
「出来なかったよ」
一応、呉服屋で武装解除の魔法を試してはいる。
「そうなんですか? てっきり座敷牢みたいにあっさり解呪出来ると思ってました」
「アレは、剣の力で……待てよ」
俺は、フラガラッハを取り出した。コレの術式破壊効果ならイケる気がした。なので、袖に押し当てた所で手を止めた。
「いや、コレだと浴衣がダメになるな。……こうしよう」
フラガラッハの形状を糸切りバサミに変えた。それを使って浴衣の糸を1本断つと。
「おっ! おおっ! 脱げる!!」
俺は、浴衣を無事脱ぎ捨てる事が出来た。なので、魔法を使って一瞬で着替える。
「あぁ、残念です。帯紐とかを変えれば問題無かったのに……」
俺が着替えたのを見て、如月は凄く残念そうな顔をしていた。
「今度、夜に着て上げるからね」
「ホントですか!?」
如月は、凄く喜んだので、俺も要望を出す。
「うん。その代わりに如月も色々着てもらうからね」
「分かりました。どんな服でも着てあげます!」
帰ったら何を着せるか選ぶとしよう。
競泳水着とか、身体のラインが分かって良さそうだな。女性教師の格好もいいな。当然メガネ付きで。
俺は、帰ってからの楽しみに胸を膨らませるのだった。
「じゃあ、さっさと出るか」
流石に、冒険者ギルドの小部屋を何時間も認識出来なくするのは不味いと思った。
「部屋に漂う匂いは、魔法で消したし大丈夫。他は……問題無いよな?」
「ええ、大丈夫だと思います」
2人で部屋の確認をしてから外に出た。
「きゃっ!?」
勢い良く開けたドアの後ろから女性の悲鳴とドサッという音が聞こえてきた。
「あっ、悪ぃ! 大丈夫か!?」
「イタタタッ……」
直ぐにドアの後ろを確認すると鬼人族の娘がいた。
その娘が、痛そうに尻を撫でている。どうやらドアの衝撃で尻餅を付いてしまったらしい。
「おや? 彼女は、確か……」
如月の知り合いの様だ。なら、彼女は何処かの令嬢だろうか? 座敷牢に閉じ込められていた娘たちと同じ雰囲気がする。
「マジで済まん。起き上がれるか?」
「はっ、はい。大丈夫だと思います。それと此方もすみません。従者も付けずにうろちょろしてましたから」
俺がその娘に手を差し伸べると、彼女は握り返し立ち上がった。
しかし、ドアの衝撃は強かったのか、彼女は立ったもののふらついて倒れ込んできた。
「おっと!」
今度は、倒れない様に彼女を胸で受け止めた。
「すっ、済みません!? 直ぐに退き……」
離れようとした彼女は何かに気付いたのか、俺の服を掴み、再び俺の服へ顔を埋めた。
「くんくん……」
どうやら俺の匂いを嗅いでいる様だった。
「すまんな。やっぱり臭うか? ……少し運動しててな」
嘘ではない。アレも運動の一種だ。ただし、快楽が伴うけどね。
「良い匂い……」
「えっ?」
今の俺は、汗臭いはずなのに良い匂いって言ったよ、この娘。匂いフェチか何かかな?
「好きです!」
「「ええっ!?」」
いきなり告白に、俺と如月は凄く驚いた。
えっ、でも嬉しいな! 女の子に告白されるなんて初めてだぞ!
「頑張って子供を産むので、最低3人作りましょうね、旦那様!」
「「進み過ぎっ!?」」
初めての告白は、付き合うとかの話はなく、子供を強請られた。
「ハッ! そうでした……」
流石の彼女も自分の言動のおかしさに気付いた様だ。
「そうだよ。まずはーー」
「一緒にお風呂へ入ってから床まで行くのでしたね! 侍女に聞きましたわ!」
「付き合うとか、結婚とかだよ! 君、アホなの!?」
「ああ、何故でしょう。罵られるとゾクゾクしますわ……」
彼女は、自分を抱き締めて悶えはじめた。
「如月。ここに変態さんがいるよ。この娘、何者?」
「……彩音と言う、和王のお孫さんです」
如月も見た事を認めたくないのか、視線が違う方を向いている。
「あっ、如月さんじゃないですか!お久しぶりです」
「……ええ、お久しぶりです。彩音さん。どうして此方に?」
「そう、そうでした。この度、お爺様よりある方に嫁げと言われまして、その関係者である睦月様に相手の事を教えて頂こうとやって来たのでしたわ。しかし、残念です。今、運命の人を見つけた所だったのに……」
「彼は、私の夫なので勘弁して下さい」
如月は、彩音の前に立ち俺を自分の背中に隠した。
「あら、そうなんですか? おめでとうございます! ご結婚されたのですね! 弥生も教えてくれれば良いのに!!」
「弥生とも、親しいの?」
「彼女とは、学友でしたの!」
「今から5年程前ですね。それからの交友だと思います」
やはり、10代の内に学校へ行かせるべきなのだろうか?
元々、考えてはいた。今は貧しく無いので、イナホたちを学校に通わせるだけの余裕は十分に有る。
うちのでも教育は十分らしいが、それ以外の特に友達を作るには外に出るべきだと思うんだよ。
「睦月様なら2階のマスター室にいますよ」
「あっ、そうなんですね。なら、今度は気を付けて行くとします。所で……」
彩音は、俺を見詰めると。
「パンツを売ってくれませんか? 大金貨で買いますよ? それか、抱き枕として添い寝しません? そちらは、白金貨でも……」
「ごめんなさい。無理です」
「そうですか。残念です」
彩音は、ホントに残念そうな表情をし、トボトボと2階へ向けて歩き去っていった。
こうして、俺の初めてされた告白は散々な物に終わったのだった。
「ユーリさん」
彩音が去った後、如月は真剣な表情をしてこっちを向いた。
「何?」
「私は、貴方の強い所が好きです。貴方の優しさには、甘えたくなります。抱き締められると胸が高鳴りますし、頭を撫でられると溶けそうになります。それから……」
辿々しい言葉で紡がれる如月の想いの言葉。それは、彩音のとは違い、優しく甘酸っぱく胸に溶け込んでくる。
「……助けて貰った時に一目惚れして始まった関係ですが、改めて私を……私も貴方のお嫁さんにしてくれませんか?」
人生2度目の告白は、とても心を打つのだった。
「如月。俺は、嫁が沢山いて、君に嫌な想いをさせるかもしれない。だけど、俺のお嫁さんになって下さい」
「はい!」
こんなに緊張するプロポーズは、アイリス以来だなと思った。
「それでは、もう一度交わりましょう!」
「えっ?」
「私が、しっかり女になるまで頑張って貰うので覚悟して下さい!」
「今、そういう流れだったっけ!?」
「はい!」
結局、いつもみたいなオチで終わるのだった。




