女装が原因で色々起こった
死んでしまいそうだ。
「ふっふっふっ、ユーリはまだ気付いてないのね」
突然アイリスが、いたずらっぽく笑った。
あれ、なんだろう? アイリスが悪魔の様に見えるよ?
「実は……」
「実は?」
「いたずらしちゃった♪」
ほう、アイリスがいたずらとは珍しいな。エルフのリリンなら良くやるけど。
「その服……今日一日脱げなくしちゃった」
「はぁ?」
俺は、確認の為に浴衣の胸倉を掴み、力を入れた。
しかし、どんなに力を入れても少し開くだけで完全に脱ぐ事が出来ない。まるで、呪われた装備を着た気分だ。
ちなみに、裾を捲って下から脱ごうとしたが、腰から上に上がらず無理だった。
「何してくれてるの!? ってか、どうやったの!?」
これ、デバフだよね? 俺、デバフを受け付けないはずでは?
「ユーリに抱き着いた時に『武装固定』の魔法を……」
「あれで癒やされてたのに! 俺の癒やしを返して!」
女装による荒んだ心をアイリス胸で癒やしていたのに、まさかそんな事をされているなんて……。
ちなみに、これでレジスト出来なかった理由が分かった。デバフでなく、バフをかけられていたのだ。気付いていれば抵抗出来たが、気付かぬ内にかけられたのではレジスト出来ない。
「これ、知ってると思うけど『武装解除』の対策魔法だから時間経過でしか解除出来ないよ」
魔法で定番の武装解除。相手の持つ武装を指定して吹き飛ばす事が出来る。
ただし、実際に使う場合、相手との魔力差に勝たないと発動しない。
複数解除するならその都度使わなければいけないので効率は悪い。また、対策魔法があるので使う者はまずいないのだ。
「リリンちゃんから教えて貰ったんだ。魔法の変わった使い方に関しては、妖精の箱庭で1番じゃないかな?」
なるほど、理解した。よ〜し、帰ったらお仕置きしよう。あの娘、今までにも色々してるしね。
とりあえず、ロープで縛って動けなくしてから薬草の原液塗ってやる。もちろん塗ったら痒くなる奴だ。
ふふふっ、掻きたくても掻けない気持ちを味わうがいい!
「アイリスは、帰ったら3日間おやつ抜きね」
「なんで!?」
「俺が寛容になれない事も有るんだよ」
「そっ、そんな〜!!」
だが、アイリスの罰は、凄く甘い事に気付いていない。だって、自分で買ってくる分は含まれていないのだ。
「それじゃあ、町に行こうか」
「あっ、結局行くんですね。そのままの格好で」
「武装解除を俺にかけてもダメだったから諦めた。まぁ、堂々としていたらバレないだろ? マリーが保障してくれたし」
「ユーリさんのメンタル凄いですね」
という訳で女装したまま町に出た。
「意外とバレないものだな」
甘味処に寄って女性限定メニューの善哉セットを食べる女装した俺。女性限定メニューには、お団子も付いてくるみたいだ。
「そりゃあ、意外と似合ってるからね。しかも、声が高いし」
元々、俺の声は、男にしては高い方なのだ。
「女ですと言われても信じれそうですよね」
「そうか? だったら、俺の隠し芸という事にしておこう」
最初の頃に比べて、女装する事を気にしなくなっていた。女装した状態で町を散策したからかもしれない。
「他の人の反応も見てみたい所だ」
「如月姉さんたちなら、今冒険者ギルドにいますよ」
冒険者ギルドは直ぐそこだったな。
「なら、1人でちょっと行って来るよ。バレないの分かったし」
「ユーリ、1人で行くの? だったら、私はここら辺の店を周っておくね」
「了解」
俺は、女装に自信が付いたから1人で行動する事にした。
「俺と結婚してくれ!」
「何故だ!断る!」
「貴方が好きになりました!是非私と結婚して下さい!!」
「私は貴方が嫌いです。お断り致します」
「僕の子猫ちゃんにならないかい?」
「死ね。意味が分からん」
皆聞いてくれ! 俺が1人で行動し始めたら野郎共に告白されたぜ!
とりあえず、回れ右してから逃げる事にした。
「「「待って!」」」
「待つか、バカ!振られたんだから追って来るな!!」
クソッ!着物だと走り難いな!
俺は、苦労しながら冒険者ギルドに駆け込んだ。
「何の騒ぎです?」
「ラッキー! 如月助けて! 何故か追われているの!!」
運良く、1階にいたので、彼女の背後に隠れた。
「事情は分かりませんが騒ぐのは関心しませんね。貴方たち止まりなさい!女性を追いかけるとは何事です!!」
如月が止めに入ってくれた。
「如月様! 私は、ただその娘と結婚したくて……」
「私も……」
「僕もだよ」
「だから、嫌だと言ってるだろ!何で、野郎同士で結婚せねばならん!」
「君は男なのか!?」
「そうだよ」
「「「………」」」
男たちは、直ぐ様お互いの顔を見合わせた。
「すまない。私たちの勘違いだ。忘れてくれ」
「同じく。済まなかった。さらばだ」
「残念だったよ。バイバイ」
男たちは、あっさり謝罪すると去っていった。
「何がどうなってるの?」
「貴方の帯紐が原因では?」
「帯紐?」
「知らないのですか? そのピンクの紐は、処女の証。しかも髪飾りは、結婚相手募集の示すものですよ」
なるほど。俺の服装が問題だったらしい。
1人になった所で来たのは、大勢の前だと恥ずかしとかだろう。
「助かったよ。如月」
「お嬢さん。私はここではそこそこ立場のある人間です。なので、形式上『様』を付けてくれませんか? それに初対面の人間に呼び捨てされるほど、私は気安く有りませんよ?」
「嫁を『様』付けするのはちょっと……。ってか、気付いてないのか?」
「はい?」
「俺だよ、俺。君の旦那さんのユーリだよ」
そう言った瞬間、視界が高速で動き出す。理由は、如月が俺を脇に抱え走り出したからだ。
そして、誰もいない小部屋に入って降ろされた。
「ちょっ!?」
如月が、俺の裾をたくし上げるとパンツまで脱がせた。
「ほっ、ホントにユーリさん?」
「そうだよ。だから、パンツ履かせて」
今、俺の息子は如月の前で完全にあらわになっています。
「可愛いぃいい!」
「おわっ!?」
突然、如月に押し倒された。
「イテテッ………」
「すみません。でも、今したくなりました。責任取って下さい」
「はっ? えっ? マジっ!? このままするの!?」
その後、如月に女装した状態で食べられたのだった。
後日、理由を尋ねると『女の子に犯されてみたかった』らしい。人の趣味は分からないものだと思った。




