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新たなる騒動の幕開け

 朝の光を浴びて、目を開けると見知らぬ天井だった。そして、身体を横に向けると如月さんの顔が目に入ったので全てを悟った。


「また、やってしまった……」


 ユーリは、両手で顔を覆い、自分の弱さに後悔する。


 嫁が増え過ぎとか言ってるくせに、誘惑に負けて黄昏れる男の姿がそこにはあった。


「すう……すう……」


 どうやら如月さんは、まだ寝ている様だ。


 俺は、起こさないように布団から抜け出す。気持ち良さそうに寝ているので、音で起こさない様に着替えを魔法で済ませて部屋を出た。


「昨晩は、お楽しみでしたね」


「………」


 部屋から出た直後、部屋の前で体育座りした卯月に遭遇した。


 意味深な言葉や目の下に隈が出来ている事から部屋を監視でもしていたのだろう。


 俺は、卯月を立たせ、一緒に広間へと向かう。昨日、朝食はそこで出すと言われたからだ。


「とりあえず、どういう事か詳しく聞こうか?」


 広間に着いたら2人だけだったので、早速卯月に聞いてみた。


「どうって、そのままです。如月姉様が夜這いするので、部屋の警備と監視をさせられてました」


「……自分の姉と旦那が寝るの有りなの?」


「正直言えば、あまり好きでは有りません。でも、仕方ないと思ってます。それに1人だと身体が持たないですからね……姉も思い知ったはず」


「思い知るって、乱暴とでも言いたいのか?」


 皆の性癖にちゃんと付き合ってるし、俺もSっ気のあまり色々するけど、そこまで乱暴にしてるつもりはないのだが……。


「あっ、そうじゃないですよ。ただ、スタミナ凄いなって話なだけですから」


「それなら良いけど。……さて、アイリスたちになんて説明しようかな?」


 大抵は、アイリスたちが事前に許可を出さないと手を出さない様に心掛けているのだが、今回はこっちから誘ってしまった。


「それなら大丈夫です。ちゃんと許可済みです」


「えっ?」


「コレをアイリスさんたちに飲ませて、酔った所を説得しました」


 卯月の手には、『ドラゴンキラー。どんな竜も少量で酔う、この威力!』と書かれた1升瓶が握られていた。


 どんな竜もか……帰りに、それを買って帰ろう。


「それもあって起きて来るのは、時間かかるかもですね」


「そんなに酒精が強いのか?」


「酒精というより香りですね。香りだけでも少し嗅いでみます?」


「うん」


 器をアイテムボックスから取り出して少し注いで貰った。酒の香りを嗅ぐと桃の香りがした。


「この香り……如月さんからも……」


「部屋に入る前、如月姉様も1杯呑みましたからね。別名、『桃香酒』と言って、一時的に体臭を桃の香りにする効果を持ちます。その道では、大変な人気ですね。体液も甘くなるみたいですし。でも、これだけの物なので、数も少なく値段も高いんですよ」


「ちなみに、幾らくらい?」


「白金貨1枚」


「高っ!?」


 どうしよう。買えなくないけど、高いぞ。


「でも、バカ売れらしいですよ。常用すれば、桃の香りがする挙体芳香の体質になれるとかなんとか。勝負服ならぬ勝負酒として用意していた如月姉様の覚悟がみてとれます」


 ヤバい人に手を出したかもしれない。


 そう思っていたら、ドタドタドタという足音が近付いてきて、障子が開かれると。


「「「ユーリお兄ちゃん!」」」


 浴衣を着たイナホたちが広間に飛び込んできた。


「おっ、浴衣が凄く似合ってるじゃないか! イナホとユキは、めっちゃ可愛いぞ!」


 イナホとユキは、浴衣をいい感じに着こなしていた。特に、イナホは、巫女服とか色々着ているから違和感がない。


「えっ? ありがとうございます」


「ありがとうなのです」


「私は?」


「フランは、……エロいな」


 丈が合っていない様だ。しゃがむと色々見えそうだし、豊満なおっぱいは、いつポロリしてもおかしくない。


 ホント、これで未成年とか……俺、後1年耐えれるかな?


「で、そんなに慌てて、どうしたよ?」


「そうです! どういう事か、説明を求めます!」


「お兄ちゃんを起こしに部屋へ行ったら!」


「如月さんがベットで寝てたのです!」


「あ〜っ……」


 俺は、卯月を見やる。卯月は、手を合わせてごめんなさいのポーズをしていた。


「彼女たちは寝ていたので、説明してないんです」


 それに対する謝罪らしい。


「おっほん。3人に連絡が有ります。君たちの後ろに立っている如月さんもお嫁さんに加わる事になりました。文句は、俺がちゃんと受け止めるから彼女と仲良くしてね」


 3人は、後ろを振り向くと如月さんが手を振って微笑んでいた。


「結婚適齢期を過ぎた姉ですが、私からもよろしくお願いします」


「誰が適齢期過ぎよ!まだ、23歳でしょ!!」


「普通なら10歳で婚約、14〜20歳で結婚と言いますよ」


「言い過ぎだよ。だって、俺より若いじゃ……」


 ここである事を思い出した。異世界暦では、1年が16ヶ月。


 つまり、向こう換算する場合、年齢 × 4ヶ月したものを12で割り加算する必要がある。23歳の場合は、約7歳ほど加算される事になるので……。


「……ユーリさん? 何か良からぬ事を考えていませんでしたか?」


「いえ、何も、全く。ただ、如月さんの様な美人が、俺みたいな奴の嫁になるのは申し訳ないなと思っただけです」


 如月さんの笑顔が怖かったので、褒めて誤魔化す事にした。


「あら、やだ。ユーリさんに、面と向かって美人と言われると恥ずかしいです」


 如月さんが頬に手を当ててもじもじしている。


「俺の物になれって言われた時も嬉しかったですが、これはこれで……」


 あれ、如月さんにそんな口説き文句使ったっけ?


 ベットの上なら言わなくはないが、昨日は言った記憶ないし……。


「………」


「……覚えていませんか? サーペントトータスの前で言った言葉を?」


 黙っていたので、俺が忘れていると疑われた。


 サーペントトータスの時にそれっぽい言葉なんて………言ったわ。俺が如月さんを貰う! 的な言葉だったな。


「亀にやるくらいなら俺が貰うって感じのを言った気がする」


「はい。ですので、如月と呼び捨てにして下さいませ。私だけが変えるのも変ですし」


「分かったよ、如月」


「はい、アナタ」


 うわぁ……なんかゾクッってした。うちでは珍しい呼び方に、嗜虐心が駆り立てられたらしい。如月さんを虐めたいと思った。


「イナホちゃん、良いの? 如月姉様が加わって? 私は、身内だから何も言えないけど」


「ユーリさんが良いなら気にしません。それに私はユーリさんの子を既に産んでますし、回数もアイリスさんやマリーさんの次に多いので」


「1児の母の余裕か……」


「えっ?」


 なんか、如月さんが凄く驚いている。


「えっ、子持ち? まだ、幼いのに?」


「そうですよ、如月姉様。子持ちです。ちなみに、今居るメンバーだとアイリスさんとマリーさん、フィーネさんもですね」


「俺の子供なら全部で12人居るよ。従者の子も入れるともっと居るよ」


「たぶん、ユーリさんの種が優秀なんですよ。結婚から数ヶ月で妊娠してますし、双子も多いですから」


 そういえば、助産師たちも言っていたが、色んな女性と数寝たからと言って、そんなに何人も妊娠する訳がないそうだ。


「そっ、そうですか。分からなくも有りませんね。アレだけの雄々しさですし。(なら、排卵剤でも飲んでやれば確実に……)」


 今、如月さんから獲物を狙う目をされて、ビクッとした。


 所で、皆似たこと言うよね。今度、皆がどう思っているか詳しく聞いた方が良いかもしれない。


 ドンドンドン!


「朝早くに申し訳有りません!急を要する為、至急睦月様にお目通りを!!」


 激しく屋敷の扉を叩く音と男の切羽詰まった声が、ここにまで聞こえてきた。


「……ちょっと、確認してきます」


 如月さんは、さっきまでのデレデレから凛とした立ち振る舞いに戻って出て行った。


 マリーとかを見ていて思うが、立場が高い人ほど切り替えが速いな。


 数分後、帰ってきた如月さんは慌てていた。


「ユーリさん! お力をお貸し下さい!!」


 なにやら、新たな騒動の気配がした。

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