無事生還からのお約束
睦月所有の屋敷。とある一室にて。
「あ〜っ、死ぬかと思った」
サーペントトータスで作った鍋を突っつきながら、ユーリはしみじみと言う。
「少しは反省してくれない? 視界から爆発と共に消えて、凄く心配したんだよ。しかも、イナホちゃんたち大泣きして大変だったんだから」
「私も血の気が引く思いをしました。次からは、お気を付け下さい」
「ごっ、ごめん。次からは気を付ける!」
ユーリは、素直に頭を下げる事にした。イナホたちの事も把握しているので、迷惑掛けたと思っている。
「ホント、次からは気を付けてね。あっ、これぷにぷにして美味しい」
「私たちが、交代で護衛しておくので、ゆっくり傷を癒やして下さいね。こっちの唐揚げもサクサクしてますよ」
2人は、料理を気にいった様だ。先程からどんどん減っていくので、足し続けている。
まだ、締めの雑炊とか有るんだけど、食べれるのかな?
サーペントトータスのスープは、濃厚な割にあっさりしていて美味い。醤油との相性も最高だった。
これに、睦月さんが提供してくれた上質な米を加え、卵を落として作る雑炊は、楽しみで仕方ない。
「でも、どうやって助かったの?」
谷間を倍にする程の威力だったしな。それを間近で受けて、擦り傷で済んでるのは、不思議だよな。
「それはなーー」
*******************
ユーリが甲羅に着火した時の話に戻る。
「あっ?」
皆、事故にあった時、世界がスローモーションに見えた事はないだろうか?
つまり、何が言いたいかというと、現在死にかけてます。周囲は、火と宙に浮いた無数の甲羅で埋め尽くされていた。
死にたくないので、障壁を展開。
「(なっ!?)」
作った瞬間に障壁は砕け、火と甲羅が迫る。
更に、障壁を展開するも砕ける。そこからは、障壁展開と砕ける事の繰り返し。
仕方なく、自分の最強防御である空域断裂領域を使っても防ぎきれなかった。どうやら、特級魔法を超える程の衝撃らしい。
「(どうする!? 最低でもこの場から離れないと助からないぞ!)」
必死に助かる術を探して周囲を見る。そこで、ある事に気付いた。
「(甲羅が砕けない?)」
下から立ち昇る火を受けても宙に浮く甲羅が、それ以上砕ける様子がないのだ。
空間制御を自分に纏う。
「(昔、漫画で見たな!)」
甲羅を足で踏む。下からの威力が強すぎて、宙に固定した板の様だった。だから、階段を駆け登る様に甲羅の上を駆け抜けた。
爆発による衝撃は、ここにまで届きマリーに回避を取らせた。
「ユーリ!?」
アイリスが再び下を見た時には、ユーリの姿が掻き消えており慌て出す。
「マリー!」
「分かってます! 衝撃に気を付けて下さい!!」
マリーは、急いで着陸し、人型になる。
「「魔力感知!」」
アイリスとマリーは、急いで魔力感知を行う。今いるメンバーの中では、最大範囲をカバー出来る。
「嘘っ!?」
「ギンカさん、匂いは有りますか!?」
「……残念ながら匂いを感じられません。爆風で、匂いも飛ばされた様です」
「そっ、そんな……」
「アイリスさん、マリーさん。ユーリさんは?」
顔色が蒼白としたイナホがふらふらしながら寄って来た。
「お兄ちゃん……」
「死んだのです?」
「そっ、それはね……」
フランたちになんと答えるべきか、悩むアイリスたち。それを打ち破ったのは、イナホの叫びだった。
「死んでない! 死ぬはずがない!だって、寿命で死ぬまで居てくれるっていったもん!言ったんだもん!!」
「イナホちゃん……ぐすっ」
「お兄ちゃん……」
泣き崩れるイナホ。それにつられてフランたちも泣き出した。
『………』
大人故か、悲しいけど彼女たちみたいに泣けないアイリスたちだった。
「ごめんなさい。私に責任があるわ。恨まれても仕方ないと思っているわ」
如月は、自分の行動に後悔し、俯いていた。どうやら責任を感じてる様だ。
「っ!?」
アイリスは、ある事に気付き急いで振り返った。
「まだ、生きてる!」
甲羅が弾け飛んでも生きていたサーペントトータスが、自分たちに食らい付こうとしていたのだ。
「皆、逃げーー」
「うちの嫁たちに手を出してんじゃねぇ! このクソ亀野郎!!」
ユーリの叫びと共に、サーペントトータスの首が撥ねられた。
「おっと! 着地着地!!」
ゆっくりとユーリは着地してきた。何故なら、先程まで空高くまで走って登っていたのだ。
アイリスたちが気付かなかったのは、マリーが衝撃を受けて回避行動した時には、既に空まで登っていたからだ。
「ユーリ?」
「おう、俺だぜ。いや〜、死ぬかと思ったよ。皆無事で良かったよ」
「ユーリ!」
『ユーリさん!』
「おわっ!?」
皆が飛び付いてきたので、ユーリは押し潰された。四方から柔らかい感触が押し寄せる。
背中をぶつけて痛いけど、これはこれで……。
皆を心配させておいて、マシュマロの様な柔らかさを満喫するユーリであった。
その後、魔物の回収や起きた睦月さんと色々あって、屋敷に招待される事となったのだ。
ちなみに、卯月は、如月さんに捕まって連行された。あれから見ていないので、何をしてるか分からない。
*******************
「ーーという訳」
「魔力感知で見えなかったのは、地形優先で空まで見てなかったからなんだね」
「衝撃を避けるので、精一杯で私も気付きませんでした」
「次は、ホントに気を付けるよ。皆を心配させたくないし」
ユーリの視線の先では、お腹を満たされた事で、疲れが出てきて寝てしまったイナホたちがいた。
「飯も食ったし。解散しよう。彼女たちを部屋で寝かせてやりたいし」
「そうだね」
「ユーリさんは、離れの部屋みたいなので、私たちが連れて行きますよ」
睦月さんの屋敷は、客室を備えているが、俺たちの様な大人数は想定していなかった。その為、空いている部屋という事で、各自個室になったのだ。
「頼む」
「お任せ下さい」
マリーは、イナホをお姫様抱っこして連れていく。竜種の為、力があって余裕なのだろう。
「………」
幼女が、中学生をお姫様抱っこ。不思議な光景だった。
「それじゃあ、お休み」
「ご主人様、お休みなさいませ」
アイリスとギンカが、それぞれフランとユキを連れていく。
「それでは、私も行きます。お休みなさい」
フィーネも部屋へと帰った。俺も帰るとしよう。
部屋は、客室でないとはいえ立派な部屋だった。灯りを消して、布団に入る。
「1人で寝るのは久しぶりだな」
いつも誰かが隣にいたので、寂しく感じる。
「うん?」
物音を立てない様にドアが開き、誰がか入ってきた。
殺気がないし、シュルシュルと服を脱ぐ音がするから夜這いかな?
もう慣れたものなので感覚が麻痺し、非日常を受け入れるユーリだった。
相手は、暗くてよく見えないが、羽根が有るから卯月だろう?
毎日やってる訳で、今日も来たのだろうと思い、ユーリは布団を開いて招く事にした。
「おいで」
「……はい」
ユーリは、相手の声が違う事と側に来た事で卯月じゃない事に気付いた。
そこに居たのは、一糸纏わぬ如月さんだったのだ。




