異世界では、意外な物が高値で売れる
「では、1樽に付き、大金貨15枚で購入させて貰います。3樽有りますので、大金貨45枚となります。ご確認下さい」
そう告げたカリスさんは、目の前に大金貨を10枚ずつ積んでいった。
「まさか、『ごま塩』がこんなに高く売れるとは思いませんでしたよ」
「私も、これには予想出来ませんでしたよ。以前、ユーリさんから頂いた物を貴族の方に出したら好評でしてね。その後、購入した物を贈ったら、貴族間で話題になりました」
飲み会とかに呼んだ時、ごま塩だけのオニギリを美味しそうに食べていたので、プレゼントした。
そしたら、数日後、1瓶売ってくれというので渡した。どうやら、それが反響を呼んだらしい。
そういう訳も有って、今回は樽での販売となった。作るのに苦労したぜ。
「薬味として、あの美味しさは病みつきになりますからね。しかも、塩分も補給出来るとあって、冒険者たちにも人気となっています」
「塩分控えめのも1樽有りますけど、どうします?」
今回売ったのは、市販品などで見かける顆粒状になった塩と胡麻を混ぜ合わせた物だ。
何故、市販品は塩が顆粒状になっているかと言うと、胡麻と塩を均等に出てきやすくするためなのだ。
塩振りの容器に入れた際、塩が小さい粒のままでは、次第に塩が下に沈み振っても胡麻のみが出てくることになりやすい。
これは、塩と胡麻を比べると胡麻の方の比重が大きい為だ。
「塩の結晶が見当たりませんね?」
「ええ、こっちの物は、胡麻を塩でコーティングした物ですから」
これは、炒った胡麻に濃い塩水を加えた後、水分を蒸発させる事で作った物だ。安価に造れる上、塩分の摂取量を控える事が出来る。
「試食をどうぞ。味に変わりは有りませんよ」
カリスさんにアイテムボックスから出した小さな器に胡麻塩を盛り、スプーンを添えて渡した。
「頂きます。……うん、確かにそうですね。私個人としては、こっちの方が好きですね。香ばしい胡麻の香りもしますし」
「向こうは、細かく砕いた塩をそのまま入れてるだけですからね」
さすがに、量が量だったから炒ってはいない。
「とりあえず、様子見として、大金貨5枚程で構いませんか?」
「はい、良いですよ」
後日、好評により白金貨2枚になっていた。やはり香りは重要らしい。
「では、コレも『サクラ印』の商品として販売しておきます」
サクラ印とは、うちが商会に卸しているモノたちに付けたブランド名だ。
カリスさんの薦めで特許登録をしたが、ライセンス料の受取り先が俺個人となっていた。
もし、俺に何かあった場合、権利はアイリスたちになるが、嫁が多過ぎる為に争いになるかもと思った。そこで、商会を造り、そこに流れる仕組みにしたのだ。
商会の名前は、『サクラカンパニー』。
妖精の箱庭のシンボルである桜から来ている。ブランド品のロゴを考えた時、桜の花びらの印だと他人も分かりやすいと思ったからだ。
ちなみに、管理運営は商会ギルドに一任している。商会が得る利益の2割をギルドに納める事で契約した。
また、更新契約に関しては、俺が出来ない場合、うちの各種族代表が会議によって決定する。
代表は、アイリス、マリー、フィーネ、ミズキ、イナホ、リリス、エロース、ガーネット、クレア、卯月、イブだ。
ギンカや精霊は、加えない事にした。彼女たちは、契約が切れたら自由になるからだ。
「それと専用容器が完成しました。どうです?」
専用容器と言っても、木で出来た円柱の容器に穴の空いた蓋とキャップを付けたに過ぎない。
尤もキャップには湿気るのを防止する刻印入りだが。
「なるほど。このキャップで湿気るのを防止するのですね」
「その上、キャップがある事で振っても溢れないので、中身を混ぜ易くし、均等に出易くします」
「これだと生産までどれ程の時間が? 円柱物は、魔法やノミによる加工に時間がかかるので値段も上がりますよ」
「案外、簡単に出来ますよ。そうですね。それ1個だと、刻印まで入れて30分ですかね? コストも木とノミ、少量の魔力だけと安価ですよ」
「はぁ!?」
カリスさんは、目を見開き驚いた。製造にも詳しいからこそ、余計に驚いたみたいだ。
「他の工房とは違い、ちょっと特殊な製造方法を取り入れているんですよ」
やり方は、こうだ。
水車の力を利用して歯車をまわし、それに木材を固定して回転。ノミを押し当てる事で削る。
異世界では、魔法に頼り過ぎる余り、そこら辺の技術があまい様だ。
刻印は、専用工具を用意した。
木槌を加工したもので、押し当てた後に魔力を流すと付与出来る。
魔力コントロールが出来る者なら可能なので、悪魔族の子供たちがしてくれている。危険性は少ないので、任せられる。
ちなみに、ノミを使った加工は、大人たちが引き受けた。利益の5割を彼らに還元する予定だ。
「はぁ、相変わらず、ユーリさんの所は規格外ですね。でしたら量産をお願いします。量の確保が可能な為、安価になりますが、その分売れるでしょう」
その後、値段は銀貨2枚となった。
同じレベルの物だと、通常の職人が1日かけて1個作り、金貨1枚程する。うちだと1時間で2個作成。速い者だと3個作っていた。
容器は、値段が安くて質もいい。結果、庶民から貴族までバカ売れした。現在、予約制にして販売中。それでも予約が殺到する程だ。
「そういえば、お店の件は順調ですか?」
現在、皆から要望されていたお菓子が楽しめる店の計画を進めている。
「ええ、順調です。既に土地は確保して置きました。建物は、ご自身でされるのですよね?」
「はい。要望通りに造れる職人を他に知りませんから」
「確かに、デザインを見せて貰いましたが、私の知る限りでは難しそうですね」
そもそも、この世界にその様な店は少ない。観光都市で行った場所ですら普通のレストランの様な場所だった。
それもあって、他の人にオシャレな店の建築は望めない。
「従業員の方は?」
「現在、男性2名、女性5名で募集をかけています。サクラカンパニーの店とあって応募が殺到してますね。サクラ印の周知具合が伺えます」
「その子たちと面接しても?」
「構いませんよ。選ぶ権利は、ユーリさんに有りますからね。商会の一室をお貸ししましょうか?」
「そうですね。あっ、だったら……」
俺の思い付いた面接法をカリスさんに話した。
「へぇ〜、それは面白そうですね。確かに、それだと時間はかかりますが、能力とは別に人間性も見られますね。その上、商品のアピールにも繋がります。是非、やりましょう」
という事で、俺の面接方法を試す事になった。




