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マリアナ・ヴァーミリオン

 急いで向かった先には、巨体なドラゴンが佇んでいた。それは、エメラルドの鱗に包まれた翡翠竜とも呼べる存在でその美しさに目を奪われた。

 竜の頭が動いたので意識が戻り警戒しようとしたら、竜の視線がアイリスの方を向き喋り出した。


「ここに居たのね、スライムちゃん。何故か、森の中にいつの間にか家があって驚いたから寄ったのだけど貴女の家?」


「あっ、マリーだ!おっ、久〜!うん、私たちの家だよ!」


 アイリスと竜のやり取りを聞いて昔の会話が蘇る。

『ドラゴンの鱗を2枚くれた』とか、『デカイ!そして強い!』とか。

 友達は、ドラゴンか。そりゃあ、デカくて強いよな。


「そこにいないで家においでよ」


「そうね。そうさせて貰おうかしら?生態変換(クリエイト)


 アイリスも使う魔法だ。竜の巨体が消えて、翡翠竜の印象を残した緑髪の少女が姿を現した。

 しかし、その身長は竜から想像も付かない程に小さかった。

 アイリスですらギリ高校生くらいだが、この娘は、中学生。もしくは、小学生と言われても納得しそうな程に小さくて幼い姿になっていた。


「あら?この人は初めて会うわね?私は、マリアナ・ヴァーミリオンと申します。マリーとお呼び下さい」


 マリアナで、マリーか。

 というか、今になって俺の存在に気が付いたらしい。


「えっと、マリーさん。俺はーー」


「マリーと呼び捨てで結構ですよ」


「オーケイ。マリー、俺は、志津勇凛(しずゆうり)。アイリスの旦那をやってます。ユーリと呼んでくれ」


「はい?」


「スライムちゃんは、名前を得たのです。アイリス。ユーリの奥さんです」


 アイリスは、ドヤ顔で胸を張る。


「えっ、ええ?」


 マリーは、目を白黒させて困惑している様だ。


「とりあえず、我が家にどうぞ」


 マリーを連れて家に戻った。




「悪い。茶葉が無いから白湯になるが」


「いえ、お構いなく。突然訪れた私が悪い訳ですし」


 アイリスは、スポーツ少女って感じだが、マリーはお嬢様って感じがするな。


「お腹減ってない?ユーリのご飯があるよ」


「そうだな。食事中だったし、一緒にどうだ?」


「良いのですか?では、御一緒させて下さい」


 マリーの分もスープを用意する。


「あら、美味しい。ロックバードの骨でダシを取ったのね。こんな使い方があるなんて」


「よく分かったな。鶏ガラは、理解出来ても種類まで当てるなんて」


「それは、これのおかげですわ」


 マリーは、自分の目を指差しながら言う。


「竜眼。鑑定の最高位の能力です。ついでに貴方も確認させて貰いました。スラ…アイリスちゃんの旦那様ですもの。気になって。従魔契約は、どうだろうと思いましたが、魂の契約をしているから安心出来ましたよ」


「鑑定って成分まで見えるのか。知らなかった。俺もやってみよう」


 種類:スープ

 説明:ロックバードのダシにグラディス山脈産の岩塩、カリーナ産の胡椒で整えたものに野菜を加えて煮込んでいる。


「流石に、竜眼ほどでないと……」


「確かにロックバードって出てるな。岩塩とかもどこ産か出てるわ。今までは、意識してなかったから見えなかったのかな?」


「えっ?はい?産地?私には見えないのですけど!?」


 あれ、これ言ったら不味かったのか?

 俺の鑑定は、スキル由来だから産地が分かるのかもしれない。


「ふふっ、彼凄いでしょう!」


 また、アイリスがドヤ顔してる。褒められて嬉しい様だ。


「信じられません。竜眼以上の眼を持つなんて……」


「たぶんスキルの影響だって。それに、一応半神(デミゴッド)だからな」


「それより今日どうして来たの?」


 そうだ、それ。理由も無く竜が来る訳ないよな。


「そうです!家出して来ました!」


 はぁ? 竜が家出って……。


「今日という今日は、怒りました!お父様ったら、結婚しろって言うんですよ!それも知らない人と!」


「それ大丈夫なのか?」


 マリーの外見を改めて見る。


「マリーって、私より年上だよ。私が100年くらいだから3倍くらい?」


 見た目と違い完全に年上やん!

 アイリスが、年上なのは気付いていたが、100歳超えなのは今知ったのだが。


「相手は、例の人?」


「そうですよ。オマケな事もあり、私たちには拒否権が有りましたが、今回は強制にするみたいで拒否権が与えられませんでした」


 何のオマケなんだろう。拒否権無しに結婚って辛くないか?

 竜だから政略結婚なのだろうか?


「だったら、良い方法があるよ」


 何故か、アイリスがこっちを見た。俺は、何故か妙な胸騒ぎを感じる。


「ユーリ、街で冒険者ギルドに登録したり、素材換金とかガラス製品買いたいとか言ったよね」


「うん、言ったな。近い内に街に行くかって」


「マリー、ちょっと耳を貸して」


 俺に聞かれない様に内緒話を始めた。


「えっ?……それは……なるほど、それも手ですね。私は賛成です」


「よし、決定!ユーリ!街に行こう!」


「はい?どうやって?」


 まだ、街に行った事はないから転移で行けないのだが。


「私の背で運んであげますよ。うちの国まで1時間程ですから」


「うちの国って、ガチでお嬢様だったのか?」


「マリーは、お嬢様。超お嬢様」


「マジかよ」


「そんな凄いものじゃないですよ。では、いつ行きますか?早い方が、可能なら3日以内が良いのですが」


「あ〜っ、1日待って。売却用の獲物を狩ってくるから。アイリス、モンスターのテリトリーいくつか教えて」


 カリーナの森の事は、アイリスの方が詳しい。


「りょうか〜い、任せて!あっ、でも、上から探した方が楽かも」


「私は、いいよ。早く終わるなら」


「ありがとう。後、そこの部屋使って良いからね。その為に造って貰ったし」


「じゃあ、使わせて貰うわね」


 こうして、狩りと街に行く事が決定した。

 そして、マリーの短い家出も終わった。

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