エロースの母来る!
悪魔族の話が続いたので、天使族の話をしようと思う。
つまりは、うちの奥さんの1人であるエロースの話だ。容姿端麗、頭脳明晰、ただし、美少女好きで変態になるという残念な子。
俺に永久就職した事で、合法的に女の子とイチャイチャ出来る様になり大人しくなった。その為、最近ではハイスペックな面や優しい教師の面ばかりが見える。
そんな彼女には冒険者たちからある渾名が付けられていた。血染め天使。俺が、バルトに紹介した時に知った。
強者を屠り、その返り血に身染める姿から付いたと言われ、冒険者たちに知れ渡っていた。
しかし、現実は違う。美少女との触れ合いで鼻血を吹き、血に染まっただけのこと。血溜まり沈む彼女を見れば分かることだ。
今回は、そんな彼女の天敵について話そう。そうと言うのも、妖精の箱庭にある天使が来客したからだ。
最近、俺たちの朝食はいつも遅い。理由は、うちには赤ちゃんたちが沢山いるからだ。
俺の奥さんたちは授乳を優先して、自分たちの食事を後にしている。俺は先に食べても良いのだが、1人で食べるのも虚しいので、いつも終わるのを待って一緒に食べる事にしている。
だから、来客が朝食に参加する事も間々有る。今日は、孫を見に来たルイさんと一緒に食事をしている。
「そうそう、アディが仕事を終わらせたので、近々帰還します」
ルイさんは、食べている途中に思い出したらしく、そう告げた。
「!?」
『?』
エロースの手からデザートを掬っていたスプーンが落ちる。デザートは、彼女の好物なので可愛そうだと思い、空間魔法でキャッチした。
しかし、エロースが動揺するとは珍しい。ここは、近くにいるマリーに聞こう。
「マリー。アディさんって誰? どんな人なの?」
「エロースさんのお母さんですね。正式名称は、アフロディーテさんです。あの人は……その……少々変わった方です」
マリーが、アディさんについて口を濁した。これだけで、ヤバい人なのが分かる。
「るっ、ルイ様!? じょっ、冗談ですよね!?」
「どうやら、マジの様です」
「あの仕事は、後数十年は終わらない筈では!? それを知って押し付けたのに!!」
エロース。自分の母親に仕事を押し付けるとか、何をしてんの。
「どんな仕事をしていたか、分かる?」
「確か、東の大陸で起こっている国同士の争いを仲裁しに行ってた筈です」
「そう、仲裁の義理は無いのだけど、どちらも天使を崇めている国でね。お願いされたのよ」
ルイさんには、しっかり聞こえていたらしい。
「もう百年争っているですよ!なのに、どうやって終結したんですか!?」
「あら、簡単よ。彼女が、2つの国を壊滅させたのよ」
「「「!?」」」
何をしてるんですか!? お義母さん!?
「まぁ、正しくは、彼女を取り合って各国の王族並びに貴族が奮起。戦争が一気に激化して、大規模魔法による撃ち合いの結果、全滅。現在、民による新しい国造りの最中ね」
「……なんとなく、状況は察しました。それでも、戦争が激化する要因になりますかね?」
「それは、彼女が皆を拐かしたからよ。なんでも、孫をはやく見たかったからとか」
「あの人は、何しとんじゃあぁぁーー!」
おっ、エロースが叫ぶの初めて見た。
「……それで、いつ帰ってくるんですか?」
「報告を聞いたのは昨日だから、私のカンだと今日かしら?」
「ユーリ君、お願い!お願いが有るの!」
エロースは、近寄ってくると俺の手を握った。
「はい? エロース、お願いって一体何?」
「数日家を空けて欲しいの!」
「何故?」
「お母さんに会って欲しく無いの!あの人をユーリ君に会わせるのは、ホントにマズい……」
「エロースのお母さんだろ? なら、挨拶しない訳にはーー」
「ユーリ君の身がヤバい」
「………」
俺の身がヤバいって、ガイアス爺さんみたいに襲って来るって事だろうか? それとも……。
「ユーリ君が鋼の精神を持っていれば大丈夫よ」
ルイさんのフォローで、しっかりと理解した。
あっ、やっぱり、そっち方面なんですね。母娘は、一組で十分です。
「ユーリさん。今から皆でラグスのダンジョンにでも行きましょう。私も会わせるのはマズい気がしてきました」
マリーも会わせるのはマズいと思った様だ。素直に従おう。
「それじゃあ、セレナたちにも連絡して行くとーー」
「ユーリ様。屋敷の外に天使族の方がお出でになっています。エロースさんに用が有るそうですが、どうしますか?」
食堂に入ってきたティアに、来客を告げられる。どうやら、アフロディーテさんとやらは、もう到着していたらしい。
「とりあえず、談話室に通して」
「了解しました」
「「遅かったか……」」
マリーとエロースが、深いため息を付いた。
「そんなに不味い人なの?」
当然と言えば当然だが、アイリスも会った事は無いらしい。
「俺的にもエロースの母親だし、会っておくべきだと思うが?」
「……そうね。先に言っておくけど、あの人に靡かないで」
「ムラムラしたら、直ぐに私たちに言って下さい。平穏なる小世界でどんな要望でもお相手をしますので」
えっ、どういう事? 俺がエロースのお母さんに手を出すと思ってるの? 心外だなぁ〜、手を出す訳ないじゃん!
「あっ、入る時は私も入る!」
ちゃっかり、アイリスも参加表明してた。とりあえず、我慢すれば、どんなプレイも有りという事か。よし、頑張ろう。
という訳で、談話室に移動。
「初めまして、アフロディーテと言います。気軽にアディと呼んで下さいましね」
そこには、超ほんわかお姉さんがいた。容姿は、エロースの強化版。そして、この圧倒的なバブ味はヤバい。
俺は、談話室に天使を見た!いや、天使族だけど!くそ、語彙力が無い事を悔やむ!
「では、今後ともよろしくお願いしますね」
「えっ?」
アディさんこと、アフロディーテさんは、俺に近付きハグをする。
「んん!?」
それから唇を奪われた。なんとギンカ並みのキステクだ。
『アーーッ!』
俺は、嫁たちの叫びを横に、どう説明しようか考えるのであった。




