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悪魔族たちのその後はこうだ。

 悪魔族の住んでいる体育館に俺はやって来た。


「では、事前連絡通りに会議を始めます」


 俺は、形としてうちの各部門の責任者を連れて来た。アイリス、マリー、リリス、ミズキ、エロース、ダフネだ。場合によっては、うちに組み込むかもしれないことになる。


 悪魔族の方は、長の男性を中心に、昨日来たリーダーの男。それから数名の男女が並び、他は傍聴する形となっている。


「まず、現状の確認。村は荒らされ、安全に住む事が出来ない。小さいながらに有った畑も復旧には時間がかかる。その為、寝床と食料の確保が今の第一番の問題。あってますか?」


「はい」


「では、こちらからの提案に入ります。この場所、妖精の箱庭(フェアリーガーデン)で仕事をして頂けるのでしたら、寝床と食料問題の解決。また、安全と意思の尊重を約束しましょう」


『ざわざわ』


 俺の提案にざわめきが起こる。


「仕事とは、何でしょうか? また、どの様な形で解決を?」


「主に、農作業になります。我が領内には、大規模な畑、果樹園、それから農業試験場が有ります。そこで働いて頂きたい。うちでは、常時人手が不足していますからね」


 畑をもう少し拡張したいが、人手が足りない。屋敷のメンバーを回せば済むとはいえ、拡張は急ぎで無いので回す気はない。それに屋敷の清掃もあるしな。


「寝床に関しては、各家庭に1軒用意しましょう。昨日、見られたのなら分かると思いますが、直ぐに造れます。希望するなら定住でも構いません。食料問題は、畑の作物を報酬として与えましょう。皆さんの分と販売する分。それらを賄えるだけの余裕が、当方には有りますからね。現物支給が嫌なので有れば、現金化しても良いです」


『………』


 これだけしてもまだ納得しない様だ。


「ついでに、子供たちの教育も提供しましょう。途中までして放り出すのも問題ですからね」


「途中まで?」


「気付いていた方がいるかもしれませんが、子供たちには当方で魔法と読み書きを教えていましたよ」


『!?』


 大半の大人が驚いたな。気付いていなかったのか?


「……少し考えさせて頂けないでしょうか?」


「良いですよ。なら、明日回答を聞くとしましょう。あっ、それから竜王国で暮らすのも有りですね。その場合は、知り合いを紹介しましょう。特に商会ギルドの長とは、顔馴染みですから」


 それでは。と言って席を立った。もう、こちらから提案する事はない。あとは、彼らが判断するだけさ。








 翌日。


 悪魔族たちは、提案を受け入れ、一時的な定住が決まった。だから、フェアリーガーデンの住居区画に色々作る事にした。


 まずは、急ピッチで家を建てていく。


「よし、完成。最低限の家具も設置完了」


 相変わらず、悪魔族の大人たちは、口をあんぐりと開けて驚いている。そのままだと虫が入るぞ。


「兄ちゃん、凄ぇ!!」


「どうやったら出来るの!」


「う〜ん、才能と知識?」


 1軒建てる度に、盛大にはしゃぐ子供たちを見ていると気分が良くなる。


 次に、水路やら第二溜池やらの水関連を造る。今までは問題無かったが、人数が増えた為、増築する事にした。


 しかし、やる事が多過ぎて魔力が足りない。その為、平穏なる小世界(イレーネ・コスモス)を3度程行き来した。


 ちなみに、入る度に毎回違う同行者がついて来た。その為、出る時は賢者モードに入っていた。


 それらが終わったら、最後の仕上げに木を植えた。皆を守る為のゴールドアッポだ。これで、ここは完全に大丈夫だろう。


「さすがに、疲れた。甘い物が食べたい。……皆もおやつを食べるかい?」


『食べる!』


 甘い物という言葉に反応して、こちらを見てくる子供たちの視線がとても熱かった。


 全く、子供をついつい甘やかしてしまうな。


「では、皆さん。設備の確認をお願いします。問題なければ、シーツやカーテンなどを屋敷のホールに用意して有るので、各家庭で運び込んで下さい」


 屋敷みたいに、アイリスにお願いしようかと思ったけど、出ていくかもしれないから市販品を用意した。代金は、農作物の収益から引いておこう。


「それじゃあ、行こうか」


『うん!』


 子供たちと食堂でおやつにする事にした。無性にプリンが食べたいからそれにしよう。


 食堂でプリンを食べ出したら、何故か、かなりの人数が集まってきた。仕方ないので、アイテムボックスの保管プリンも出す事になった。







「あっ、やっぱりここに居たのね。人が沢山居たから子供たちもここだと思って」


 食堂で、プリンを食べていたらエロースが来た。彼女の分も用意する。


「はい、エロース。それでどうした?」


「ありがとう。実は、そろそろ今日の授業しようかな〜と」


「エロース先生。何やるの?」


「空間魔法の適性検査よ」


『空間魔法!』


「ユーリ君の魔法に興味があるみたいだったしね。適性が有れば、入れ替え(チェンジ)くらいは使える様になるかも」


「チェンジ?」


「これだな」


 俺は、ケーキの乗った皿とジュースの入ったピッチを入れ替えて見せた。


「凄い!! 手品!?」


「手品じゃないよ。れっきとした魔法さ。しかも、これって、応用が効くんだぜ」


 忘れてるかもしれないが、木から直接加工するのにコレを使用している。


「そういう訳だから食べたら来てね」


『は〜い!』


 エロースは、しっかり先生をしている様だ。抱き着かれると鼻血を吹くのは変わらないが。


「エロースも頑張ってるみたいだな。ご褒美をあげよう」


「うん? 何くれるの?」


「コレさ」


「こっ、コレは!? 良いの!?」


「ああ、先生を頑張ってるみたいだしな」


「ありがとう!……うへぇへぇ」


 俺が渡した物を見て、エロースの顔がだらしなく歪む。


 渡した物とは、エリーたちの写真だ。ただし、普通の写真ではない。村人ファッションでなく、俺たちのイメージする悪魔衣装を着せたものだ。


 本人たちが無邪気な事を良いことに、着せて撮影した。


 他のコスプレ写真に混ぜたから悪魔族の大人たちにはバレていない。渡した写真も写りが良い物だけを厳選した物を渡したおかげかもしれない。


「ユーリ様。紅茶が入りました」


 メイド服を着たイブに紅茶を差し出された。


「ありがとう、イブ」


 何故、彼女が紅茶を差し出しているのか?


 それは、イブがメイド服を着ている理由でもある。実は、彼女は仲渡しという名目で俺に送られてきた。


 しかし、裏向きの理由としては、イブを好きにして良いから自分たちとの契約を保障してくれという事らしい。つまりは、……うん、そういう事です。察して下さい。


 誰も生娘を寄越せとは言っていないのだが……。


 そういう訳だから、ミズキたちの仕事に組み込んだ。だから、メイド服という訳だ。


「部屋は、どう? 体調は?」


「すこぶる快適です。体調も問題有りません」


 先程の様な事情により、イブには屋敷の部屋を与えたのだ。


「家族の方に住んでも問題ないんだよ?」


「いえ……私は、ユーリ様のモノですから……」


 なにやら、相当重い覚悟を持って来ている様だ。村人たちによる生贄みたいな物だし仕方ないといえば仕方ないが。


 とりあえず、頭を撫でる。もう、俺のクセだな。


「無理し過ぎない様にね。うちでは、嫌なら嫌って言って良いんだから」


「……はい」


 そういう感じで、フェアリーガーデンの人数が増えたよ。

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