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花見の準備と来客

 敷地内を薄紅色の花びらが舞う。俺たち妖精の箱庭(フェアリーガーデン)のシンボルでもある一本桜が咲き誇った。


 前回の記録から今年も春の間ずっと咲くだろう。


 その期間、およそ4ヶ月。通常の桜と比べ物にならないくらい長い。


 それに対して、青葉の期間は6ヶ月、落葉は2ヶ月、葉無しの期間が4ヶ月だった。青葉の期間が長く、落葉が速いことから少しでも溜めたエネルギーを逃さない様にしてるのだと思う。


「ユーリ様、酒は何処に置いときましょう」


「神社に置いておいてくれ」


 順調に宴の準備が進んでいる。


「分かりました。後、マリーさんが探してましたよ。見かけたら転移門(ゲート)まで呼んでくれって」


「了解。行ってくるよ」


 俺は、マリーの元へと向かう。話にあった通り、彼女は地下の転移門側におり、設置した受付の机で各所に出した招待状の返事を確認していた。


 基本は、ここで通行時の記録を取ってもらっている。転移門があちらこちらに繋がっている為、各所より要望があったからだ。防犯上としても仕方ないと思う。


「探してたって聞いたけど?」


「あっ、ユーリさん。実は、コーリス伯爵の件なんですが……」


 一度、うちに直接招待しようと思って花見の招待状を書いて貰ってたんだった。


「何か、あったの?」


「ここに来るためには、王宮の転移門を使わないと行けないんですが、その場合、王宮に数日留まる形になりますよね?」


「外から見たらそうだね。中から別の所に行ってるとは見えないし」


「はい。それで、伯爵は領地経営がV字回復したとはいえ、貴族としての力までは完全に回復していません。なので、王宮に数日留まるとあらぬ噂が生まれる事になりそうで……」


「これは、ギンカにでも頼んで迎えに行って貰った方が良いかな?」


「その方が、無難かと」


「それじゃあ、その方向で招待状を頼むよ」


「分かりました」


 これで、招待客の方は問題ないだろう。でも、しょっちゅう来てる連中ばかりだから招待状要らなかった気もしなくはないのだけど。


「さて、俺はステージ作成に戻りますか」


 宴会といえば、宴会芸。それの為のステージを作っている。


 とはいえ、芸なんてそうそう持ってないから、歌を披露する場にするつもりだ。メロディノーツたちを改良して、持ち運び出来るカラオケセットを造ったからな。


 しかも、意外に好評なのだ。特に、商会のカリスさんに貸してくれと言われるくらい。やはり、大声を出せるのが良いのだろう。


 それとも音楽鑑賞や集客の為かな。メロディノーツは、BGMとしても使えるからな。音楽は、注目を引く為にも役に立つ。


「ユーリ君、頼まれたお肉調達して来たわよ」


「久しぶりにグランドベアがいた」


 セレナとシオンの声がして振り返るとリリスたちと一緒に狩った獲物を引きずっていた。


 どうして、セレナとシオンがいるかというと、来客用の家に住み着いているからだ。


 カトレアが休業している間は、うちのチームと行動を共にする事にしたらしい。定期的に、何人かで組んで出掛けているのを見る。


「私が狩りました!以前、主……ユーリさんが狩ったのより小さいですが、グランドベアです!」


 イナホが駆け寄って来ると成果を自慢した。俺は、イナホを抱き締めて、くるくる回る。やはり、イナホの抱き心地は最高だな。それから恒例の撫で撫でタイム。


「あはは、凄いじゃないか!立派になったな!後、無理して呼び方を変える必要はないぞ。ゆっくりでいいからな」


「はい!」


「……イナホちゃんの時だけ反応違くないですか?」


 リリスたちにジト目で見られた。イナホだけを特別視してはいないはずだが? 少しスキンシップとベットに連れて行く回数が多いだけだ。


「気のせいだって! リリスたちもお疲れさん!」


 リリスたちの頭も順番に撫でてあげる。頑張った子には、良い子良い子が一番。


「あっ、あのっ!もういい歳なのでそれは……ちょっと……」


「そういうのは、2人だけの時にして下さい……」


「うう……恥ずかしい」


 こんな風に撫でると恥ずかしがるんだよな。だから、余計に撫でるのだが、気付いていないのだろうか? まぁ、気付いてもするけど。


「うう……ユーリさんがイジメます」


「イジメてないよ。褒めてるんです」


「はいはい、分かったから嫁たちとイチャイチャしないの!それより、ベルはまだ帰って来てないの?」


 ベルは、セレナたちと違い、ここに住んではいない。


 何でも、以前から魔王国のアルスマグナ魔法学校で講師を頼まれていたらしい。いい機会なので、カトレアが休業する間だけという条件で臨時講師をやっているのだ。


「確かに遅いよな。結構前に、ギンカが迎えに行ったからもう帰って来ても良いはずなんだけど……」


「あの〜、ユーリ君? ギンカちゃんって、魔物よね? それを魔法学校に行かせるって危険じゃない?」


「……ヤバい気がしてきた。見た目は、美人だからバレないかもしれないけど、魔物避けがあったら反応するぞ」


 ギンカがバレて襲われたとして、並の攻撃でヤられるとは思えないが、騒ぎにはなる気がする。


「心配だからギンカの所へーー」


「只今、帰りました」


「「………」」


 普通に帰ってきた。彼女の動きや服の痛みがない事からケガとかはしてない様だ。


「少々色々あったので、魔力供給お願いします」


「はいはい」


 慣れた動作で、人前なのにキスをして魔力を受け渡す。というか、俺からやったよな!? 今のキス!?


「凄く自然な動作でやったわね」


「自然過ぎて違和感が無かった」


 仕方ないだろ!ほぼ毎日キスしてたら、こうなるって!!


 ……はっ!まさか、これはギンカの策略なのか!?


 今回、ただキスを楽しみたいのか、魔力を吸われなかった。


「ご馳走さまでした。満足です」


「それで、少々って何かあったんだ?」


「少々戦っただけです」


 戦ったのね。これは、完全に魔物とバレた流れかな?


「何処が、少々なんでしょうか?あんなに大量の人を倒しておいて」


 青髪の美少女にツッコミを入れられた。しかし、初めて見る娘だな。ギンカやベルと一緒に来たのか。


「ベル。この娘は誰?」


「師匠の姪になるんでしょうか? 現在、アルスマグナ魔法学校に通っている1年生でエミリア・ヴァーミリオンさんです」


「はじめまして、ユリシーズ叔父様。ユーフェミアの娘、エミリア・ヴァーミリオと申します」


 たまに、話に出てきたマリーの姉の娘か。確か、水竜だっけか? だから、髪が青色なのかな?


「あっ、こちらこそ、はじめまして。ユーリ・シズです」


 久しぶりに自分の名前を名乗った気がする。もう、ユリシーズで定着しているしな。


「……で、何があったか、教えてくれないか?」


「ええと、まずは謝罪を。この度は、申し訳有りませんでした」


 そして、エミリアの謝罪を皮切りにギンカの大暴れを聞く事になったのだった。

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