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危険度Sの魔物なんてただの食材でしょ?

「ユーリ。少し良いか?」


 服を届けて、卯月を紹介したので、議事堂に帰って来たら、ギルさんが待ち構えていた。


「あっ、すみません。出掛けてしまって」


「いや、自由にして良いと言ったのは俺だ。それより頼みがあってな」


「ギルさんが頼み?」


「あぁ、直ぐに狩って来て欲しい魔物がいてな。場所は、どれも一度は行った所だから直ぐに行けるはずだ」


「良いよ。何狩るの?」


「これらだ。一覧の奴らを狩って来てくれ」


 ギルさんからリストを渡された。それには、5体の魔物と場所が記載されている。それを横から見た卯月の反応は。


「横から失礼します。ギルフォード殿!これは、何かの間違いでしょうか? これ1体狩るのに、1日要しますよ!」


 あっ、やっぱりそう思うよね。


「超特急?」


「そう、超特急。出来るだけはやく頼む。狩ったら議場に直接持って来てくれ」


「了解」


「ユーリさん!?」


「それでは、任せた」


 ギルさんは、そう言うと去って行った。それでは、行こう……としたら卯月に止められた。


「姉さんたちを連れて行きましょう!直ぐに呼んで来ます!少しお待ち下さい!!」


 何故か、卯月か同行する様だ。しかも、如月さんたちも連れて行く事になった様だ。これじゃあ、転移は出来ないから転移門創るしかないな。


 転移門を部屋に創って待つ事にした。周りの人たちは、驚愕して見てるけど気にしない。


 やって来た彼女たちもびっくりしていたけど、初めて見る人はいつもこうだから慣れた。


「それじゃあ、行こうか」






 3時間後。狩り終えて帰ってきた。


 移動は楽だが、魔物を探すのに時間がかかり過ぎた。


『………』


 卯月を含め、同行した如月さんたちは、途中から静かになった。でも、探すのを手伝ってくれてたので助かった。


「やはり、探すのは時間かかるな。アイリス連れて来るんだった」


 感知の専門家といえば、アイリスの右に出るものはいない。


「……あっ、アイリスさんって、あの魔族の方ですよね。彼女なら直ぐなんですか?」


「そうだね。最大周囲2kmを感知出来るからな。俺たちが飛ぶ必要も無かった」


『2km!?』


「他の娘たちも強いよ。戦闘嫌いな娘もいるけど、皆そこそこやれるから」


 後日、手合わせした卯月の感想。


「これの何処が、そこそこですか!? 誰も彼も一小隊レベルじゃないですか!?」


 というツッコミが入るが、それは当分先である。


「議場はこっち?」


「あっ、はい。あの豪華な扉の先です」


 通路の先に豪華な扉が1つだけある。ボス部屋の扉みたいだな。誰も立っていないので自分で開ける。


「誰だ! 今、会議中だぞ!!」


 何故か、開けたらいきなり怒られた。ここに来るように言われたのに、理不尽な。


 議場には、中央には机が置かれ、それを囲む様に椅子が並べられていた。


「おっ、帰って来たか。獲物は?」


 最前列に座っていたギルさんが、立ち上がって近付いて来た。


「ちゃんと狩って来たよ。所で、このドムニラットだっけ? 巨大な白ウサギ。肉貰っていい? 美味しいらしいし」


「良いぞ。ついでに、ここで解体するといい。そこの机を使ってくれ」


『ドムニラットだと!?』


 周りは、魔物の名前を聞くと動揺した。俺は気にせず、中央に置かれた大っきな机に狩った獲物を出して行く。


「ドムニラット、タイタンゴーレム、メガロモンキー、コカトリスレイジ、アースドラゴン。以上が頼まれて狩ってきた奴。そして、コカトリスレイジと戦っていたガレオンライガーもついでに狩ってきた。こっちは報告だけであげない」


「助かった。しかし、また、どえらい物を狩って来たな」


「がっ、ガレオンライガーだと!? そんなバカな!? それは幻とまで言われた魔物だぞ!!」


 ギルドマスターの1人が動揺して席から立ち上がった。


「らしいですね。肉は、ステーキにすると美味いらしいので楽しみです」


「すっ、ステーキにする……」


 なにやらショックを受けた様で、立ち上がったギルドマスターは力無く座り込んだ。


「ギルさん。毛皮は要らないので、後でギルドに卸しますね」


「おっ、マジか。良い値が付きそうだ」


「卯月。ユリシーズ殿は、この短時間でホントに狩って来たのですか?」


 睦月さんが、席から立ち上がり一緒にきていた卯月へと質問した。


「索敵は手伝いましたが、狩りは手伝っていません。発見した瞬間、ユーリさんが速攻で仕留めていたので。魔物の死骸を見て頂くとご理解頂けます」


「だそうです。ユリシーズ殿の実力に問題ないと判断致しますが、如何でしょうか?」


 睦月さんは、妖艶に微笑むと立ち上がって周囲を見渡した。


「何かあったの?」


「西と東の連中が、総会の議題としてお前のギルドランクに異議申し立てをしたんだよ。だから、総会中には、狩れない量の魔物を狩れたら認めろと言った」


「みっ、認めん! どうせ、グルになっているに違いない! これだけの量を短時間で狩れる訳がない!! 東を馬鹿にするのも大概にしろ!!」


『そうだそうだ』


 東のリーダーは、凄く否定的だ。それに仲間も同意する。


「西は、認める。うちの冒険者たちと比べものにならないのは、昨日の件で把握した。それに魔物を指定したのは我々だ。なのに、Sランクの魔物を複数用意出来る訳がない」


 西のリーダー格の老人が発言すると周囲もウンウンと頷いた。どうやら、こっちは納得の様だ。


「はぁ…、これでも納得しないって、東はどれだけ質が悪いんだ?」


 ギルさんが小さくボヤいたつもりの様だが、悪口って意外に聞こえるもんだよね。東の連中がそれに反応した。


「なんだと!」


「では、どうやったら納得する? 納得していないのは、貴公たちだけだ!」


「ふん!実力を測るには、模擬戦が一番だろ!うちのエースを呼んでこい!!Sランクの実力を教えてやる!!」


 模擬戦をやらされるのか……と思っていたら、東の副官らしい男性が慌て出した。


「……それは、マルコフの事でしょうか?」


「そうだ!当然だろ!」


「昨日、冒険者を辞めました」


「……はい? そっ、それはどういう事だ?」


「ユリシーズ殿と戦って実力差を感じ、恥ずかしさの余り辞めると」


「なっ、なら、コブリを!」


「居ますが、彼もまた実力差に打ちのめされたそうです。ランク降格の申請がされています。また、申請したのは今回同行したSランク冒険者全員です。そんな彼らが、ユリシーズ殿と戦うと思いますか?」


「………」


 東のリーダー格の表情がどんどん青褪めていく。いや、青を通り過ぎて白っぽいな。


「納得した様だな。これを持って、ユリシーズのSランクを正式に認めるものとする。では、残りの議題に取り掛かろうか!」


 なんか、知らない所で争われ、勝手に決着していた。


「まぁ、元気だせって。これやるから」


 俺は、同情から串焼きを1本置いてやった。東のリーダーは、一瞬困惑したが拒否しては軟弱と見なされると思ったのか、豪快にかぶり付いた。


「もぐもぐ……美味いな。何の肉だ?」


「グランドベア」


「ぐふっ!?」


 食べてる途中で咽せた。少し欠片が飛んで来たので緊急回避。ばっちいな、おい。


「Sランクの魔物を食材にしたのか!?」


「Sランクだろうが、食える奴は食える。そして、大概美味い。これ真理」


「あはは、お前にとってはそうだろうよ」


 ギルさんが爆笑している。普通は、研究施設に回したりするそうだからな。食うのは、俺たちくらいなものだ。


「じゃあ、部屋に戻りますんで」


「ああ、手間をかけた」


 その後、総会はなんなく進み、その日の内に終了した。そして、俺たちは、予定よりはやく帰路につく。


 余談だが、東のリーダーは、今回の件で恥をかき解任された。また、東の冒険者ランクの基準を厳しくする事になったそうだ。

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