昨日の今日で惚れられた
ギルドの総会2日目。今日も部屋で待機となった。
2日目故に案内はなく、卯月と2人で部屋へと向かう。待機出来る広い場所がそこしかないからだろう。
「うふふ……ユーリさん」
「何? どうかした?」
「うんうん。好きになった人の名前を呼びたかっただけ。えへへ……」
卯月は、俺の腕を抱き、すりすりしてくる。超ご機嫌だ。なんか、朝起きた時からデレモードに移行してた。
昨日は、そこまで好意を寄せていなかったのに。昨日の今日で惚れたりするものかな?
思い当たる原因には、昨日一緒に寝たくらいか? しかし、いつも皆にする様に気絶するまで相手をしただけだぞ?
「それともあっちか?」
それは、アイリスとマリーに嫁の1人にする許可を貰った件。
さっき、ここに来る前に転移で一度屋敷へ帰った。そして、彼女たちに会わせて来たのだ。
まずは、アイリスたちが優先という事で会わせた。呆れられたものの許可は貰えた。その後、卯月の着物を捲り、秘密を教えた。
アイリスは目を輝かせた。まるで、玩具を見つけた子供の様に。一緒に寝る時が楽しみって言ってたから遊ぶ気まんまんだ。
さて、そんな思考しているとあっという間に部屋の前へ着いた。
昨日の出来事が有るから気を引き締めて扉を開ける。
「………」
『すいませんでしたーー!』
扉を開けると土下座した集団を目撃した。俺は直ぐ様、バタンと扉を閉じた。
幻かな? 昨日の夜、やり過ぎて疲れたのかな? でも、俺は気を失ってないし、大丈夫の筈だが。
「どうしたの?」
「変な奴らを見た」
「はい?」
どうやら、卯月には見えていなかった様だ。では、もう一度扉を開けよう。今度は、違うだろう。
『ユリシーズ殿!この度は、すみませんでした!』
幻とかでなく、ガチで土下座した集団だった。少しドン引きする。
そういえば、コイツらには見覚えがある。昨日殴った連中だ。しっかり復活したのね。
「昨日、絡んで来た奴らか……。邪魔なので解散して下さいね。今回の件は、不問にします」
『分かりました!ありがとうございます!』
こうして、冒険者たちは解散していった。これで、大人しくなるだろう。
「おはようございます、ユリシーズ殿。それから卯月」
この後、どうしようかと思っていると如月さんたちが挨拶にやってきた。なら、報告もしないとな。
「おはようございます、如月さん。実はーー」
「姉さん。ユーリさんと結婚する事になりました。睦月様の許可も頂いております」
俺が言う前に、卯月が報告した。しかも、部屋に入る時に離れたのに、また腕を掴んで抱き寄せすりすりしてくる。
「ええっ!? 昨日の内に何したの!?」
「卯月! 魔法を教わりに行ったんじゃないの!?」
「だから、姉さんは朝帰りなのかと思ったのに!?」
事情は、連絡されていなかった様でびっくりされた。
「いや〜、色々あって、私は女だと理解させられました。そりゃあ、女の子が集まる訳ですよ。後、近い内に女が確定すると思います」
「「「詳しく聞かせて貰いましょうか」」」
卯月は、如月さんたちに拉致られていった。そのせいで、俺は放置される形となった。
「近場で狩りでもしようかな?」
朝からギルさんに、今日は自由にして良いと言われたしな。
「あっ、ここね。ありがとう」
また、誰か案内されてやって来た様だ。部屋に入って来たのは。
「あっ、居たいた。ユーリ君!見つけた!」
そう、俺がよく知っている天使族こと、奥さんのエロースだった。
「エロース? 何故、ここに?」
「紅蓮のローブが完成したから届けに来たの。丁度、この近くの店だったしね。それに、アピールするなら総会やってる、ここが1番でしょ?」
エロースの手には、箱の入った紙袋が下げられている。一般人の入室有りなのか? まぁ、目的地が護衛部屋なら有りなのかな?
「どうやって、入って来たんだ?」
「下に知り合いの天使族が居てね。旦那に荷物を渡しに来たって言ったら通してくれた。まぁ、一応、手荷物検査は受けたけど。それより着る?」
「確かにそうだな。早速、着るとするよ」
近くのテーブルに移動して広げる。箱の中には、デザイン通りの紅の刺繍が施された白いローブが収められていた。
「少し丈を弄ったわ。ユーリ君たち意外に体術も使うから足の可動域を広める為にね」
渡されたローブを着てみる。なるほど、丈は膝上まで、左右に腰までのスリットが有り、横蹴りにも対応可能となっている。
「凄く良いな、これ!」
着心地は、ゆったりして最高。肌触りもさらさらと上質。しかも、魔法糸を使用しているから自動修復、物理・魔力の両耐性付き。
サイズも、ある程度は魔法で変動するからコートの上からも着れなくない。しかし、あまりしないだろう。これ、冒険者をする時用だし。
「エロースのは、どんななんだ?」
エロースやイナホたちは、種族影響により構造が違っている。例えば、エロースの場合、背中空きしか着れない。羽根で破く事があるからだ。
「こんな感じ。同じ形が良かったけど破きたく無かったし」
エロースが魔法を使って着替えた。
……なんか、割烹着みたい。背中を空けるからこんな感じになるのか。前で止めれない分、首と腰で止めるのな。
「似合うじゃないか」
「本当? ありがとう。ユーリ君も似合っているよ」
「あの〜、ユーリさん。この方は?」
2人で服を試着していたら卯月さんが帰って来た。
「ちょっと壁まで移動しようか」
エロースには、紹介していなかったので、2人を連れて壁まで移動する。流石に、何が起こるか分からないしな。
「卯月。彼女は、エロース。俺の奥さんの1人だ。そして、エロース。この子は、新しく増えた嫁です」
「………」
あっ、これ、見慣れた表情だな。またかとか、やっぱりとか入り混じった何とも言えない顔。
「卯月の秘密を知って色々あった結果、そうなった。後で、エロースにも教えるから」
「なるほど。こうやって増えて行くのね。分かったわ。卯月ちゃん、よろしくね」
「よろしくお願いします、エロースさん」
「しかし、秘密ねぇ……。種族特性の半陰陽の事だったりして?」
「「!?」」
エロースは、天狗族の秘密を知っていた。卯月は、動揺する。
「どっ、どうして、それを!?」
「あっ、やっぱり? これでもユーリ君に嫁ぐ前は、重要役職に付いてたしね。色々知る機会があったのよ」
そういえば、ルイさんは竜神殿の長だったな。そのサポートなら当然か。
「たぶん、マリーも知ってるんじゃないの?」
「あっ、だから、あまり反応しなかったの!」
アイリスと違い、珍しいモノを見たけど知ってたって感じの冷めた反応だった。
「2人には、もう会わせたんだ。許可は貰った?」
「アイリスとマリーからは、許可貰ったよ」
「なら、心配ないわね」
エロースからも許可を貰えたの所で、ある事を尋ねる。
「エロース。時間があって暇だから、狩りにでも行きたいんだが、近場で良い場所ないか?」
「それなら西に森が有るわ。でも、時間有るならローブを運んでくれない? 数が多くて大変なのよ」
「分かった。転移で運ぶの手伝うよ。人数的に、転移門使う必要も創る必要もないな」
「そうね。談話室にでも転移して貰えないかしら?」
「了解」
「私も手伝います」
という訳で、一時帰還する事になった。その後、談話室に皆を集めて紹介を行った。
「いつもみたいに新しく増えた嫁の卯月です。仲良くする様に」
他の嫁たちの反応は、どうだろうと思ったら、意外にあっさり受け止められた。




