家造りと風呂
「さて、家を造るのはいいが布とかはどうにかならないかな?」
「布?何に使うの?」
「そりゃあ、ロックバードの羽を入れる布団とかカーテンとかだな」
「出来るよ」
「マジで?」
「マジ。マジ。見てて」
アイリスの手のひらを合わせると白い糸が出て来た。
それをあや取りの様に忙しく動かしていく。
「ーーからの〜、せい!」
するとあっという間に、1枚の布が完成した。
「はい」
「おぉ……」
アイリスから受け取ったのは、肌触りがとても良い布だった。
いや、袋か。少し指をズラすと一辺だけ布がズレて口が開いた。
「コレに羽根を入れれば、布団は出来るでしょ。入れたら糸で塞ぐから。良い子良い子して!」
「凄いな!」
言われた通りに、アイリスの頭を撫でた。昨日何となくでしてからというものお気に入りになったらしい。
俺も嫌ではないので、撫でまくる。
「でも、どうやって糸を出したんだ」
「スライムの特性かな?食べた魔物の特性を引き継ぐの」
「何を食べたの?」
「イビルスパイダー」
スパイダーというから蜘蛛だろう。
「一応、聞くけど他に食ったのは?」
「食べたのは、レッドスコーピオン、ポイズンスネーク、エスカルゴシェルター、大ナメクジ。アレは不味かった。本当に不味かった。後、ドラゴンの鱗を、2枚程。後は、植物や果実を食べてたよ」
大ナメクジ。2回言うほど不味かったのか。というか、ドラゴンの鱗って……。
「ドラゴンの鱗はね、友達に貰ったの!おかげで、雷魔法の轟雷大竜巻とかを撃てる様になったよ!やってみようか?」
「やらんでいい」
名前からヤバイ魔法だと思う。
「え〜っ」
コイツに鱗をやった友達は何をしてるんだ!
「とりあえず、理解したから話を戻そう。糸で何処まで造れるのか?後、他に攻撃以外で出来る事はあるか?」
「シーツやカーテンは余裕。服になると辛いかな?魔法で造った方が早いし。他に出来る事って言ったら短い時間だけど眷属召喚出来るから水分の脱水や浄化出来るよ」
脱水に浄化か……コレなら風呂を造っても排水大丈夫じゃねぇ?
「オーケイ!出来る事が増えた。追加の材料取って来るからカーテンとシーツをいくつか頼むわ。ついでに」
タオルが欲しいのでコレくらいの大きさって奴をジェスチャーで示す。
「了解」
アイリスが作業を始めたのを見て、岩山に移動。
家の地盤は、やはり石だろうと考えた。地面に埋める支柱。下地をくり抜いて回収。
風呂は、木で良いかな?
石でも良いけど。あの黒い石がまだ残ってるし……と思ったがやっぱり木にする事にした。日本人らしさが欲しいしね。
回収が終了したので拠点へと戻った。アイリスは、既にカーテンを造り終えていた。
俺も負けられないなと思い次の行動へと移る。
まずは、アイテムボックスから材料を全部出す。木材と石材の山が出来た。
ついでに、トイレも家に組み込もう。トイレだけ外なのはどうもしっくり来ない。
更地にするのも基礎を設置するのも空間魔法。創る人の知識で望んだ建物構造は、把握済みだ。
それに合わせて、木材を設置するのも空間魔法。
釘は使わず、埋め込みで行えるのも空間魔法。
風呂を設置するのも空間魔法。
排水の為に微妙な傾斜付き経路を造るのも空間魔法。
空間魔法のオンパレードすること、数十分。
なんという事でしょう。
元々、何も無かった場所にそれは見事な家が出来たではありませんか!
「凄っ……」
「だろ!」
呆れているアイリスにドヤ顔する俺。
「造ったもの設置しようぜ」
アイリスの造ったカーテンを持って中に入る。
内部は、平屋建ての5LDK。トイレ風呂付き。地下室有り。
造ってから地下室の必要性に気付いた。薬剤とかの調合スペースがない。
なら、地下室に造ろう。
地下なら、後から改築出来るからな。当然、地盤強化もしたから大丈夫。
カーテンを取り付ける窓は、開き戸にした。木で出来ているから少し重いが問題無し。ガラスが良かったが流石に作れない。
一応、学生時代の知識として、二酸化ケイ素と炭酸ナトリウム、石灰石で造れるらしいが分量が分からんし。
そもそも造る設備が無いから無理だね。
どっかの街で買うか?
ベッドは、キングサイズで作成しそこに布団を引く。
予定より大きくなったから拡張をしてもらった。
ロックバードの羽根が詰りふわっふわの感触がある。寝心地が良さそうだ。
ちなみに皮だけになったロックバードは、塩焼きにして美味しく頂きました。
風呂も予定通り完成。風呂桶は木で、洗い場は黒石。なかなかの高級感が出た気がする。
「さっそく、入ろう」
タオルは、カーテンと一緒に造って貰った。
お湯は、水を貯めてから中に火の魔法を入れると、火は消え水は熱せられる。
湯桶とかも作成して設置済み。
シャンプーやら石鹸やらは無いがな。
薬師の知識にシャンプーはないかね?
一応、薬液だし。それは後で、調べるとしよう。
アイリスに入り方を教えながら入浴する。
「はぁ〜〜」
全身の力が抜ける。これも久しぶりで感動するわ。
「気持ちいい〜!なんでお湯で水浴びするのかと思ったけど。これいいね!」
アイリスも満足した様だ。
「ここなら汚れても大丈夫そうだね!昨日の続きをしようか、」
「あっ、あの〜、アイリスさん?ここは、そういう店ではないのですが」
「よくわからないけどそういう店もあるんだね」
唇を舌で舐め回しながら妖艶に迫ってくる。
「本当にスライムですか!? サキュバスとかじゃなくて!?」
「うん♪ スライム、スライム♪ それじゃあ、頂きます」
俺が食われる運命は確定らしい。今日も賢者になるのだった。