ユーリとアイリスは、深く後悔した
「え〜っと、優勝? 優勝おめでとう! 報酬を渡すから内容を考えておく様に!」
「「「ヤッター!!」」」
「………」
鬼ごっこの勝者は、ユキ、マリエル、モカ、ミズキの4人に決定した。
3人共、凄く嬉しそうだが、ミズキだけは精神疲労も相まって、返事すらキツイ様だ。
「ミズキ。ポーションいるか?」
「……いいえ。その代わり、2人っきりで慰めて下さい。後、ついでに3日分のバストアップトレーニングに付き合って下さい」
「了解」
それで復活するのなら、喜んで協力しよう。でも、3日分のバストアップトレーニングを1日でやっても効果あるのかな?
「いや〜、まさか、近くに隠れてるとは思わなかったよ」
「ふふっ、凄いでしょ!」
「どうやったの?」
「それはねぇ〜」
「光と風の下位精霊による複合精霊魔法です」
アイリスが、リリンに聞いたら、何故かリリスが答えていた。
「精霊魔法? あぁ、だから、魔力感知で見えないのか!」
精霊魔法は、自分たちの魔法と違い、意思が介入しない自然現象の様な物だ。また、精霊は、自然の一部の為、人や物として魔力感知で探した時に把握する事が出来ない。
「ちょっ!なんで、リリスが言うのよ!!」
「戦うでもなく、そうそう負けた者の僻みですが何か?」
「あはは……その、ドンマイ」
「ご愁傷様」
「ううぅ……」
グズってるリリスの肩をトントンと叩く者がいた。誰を隠そうラズリである。
「良いじゃないですか、クエスト。私なんて!私なんてねぇ〜!!」
ラズリが選択したのは、クッキー1枚。
当然、彼女は泡を吹いて倒れました。その後、療養の為、完成間近の平穏なる小世界に丸1日引き篭もり、やっと復活して帰ってきた。
まぁ、帰って来るのが遅かったのは、途中で様子を見に行った時の事が原因な気がしなくもない。
というか、俺の方こそ腰が痛いから引き篭もって良いかな?
温泉エリアに設置するもの決めたし。それで、療養するのも有りだと思う。
設置予定の物は、岩盤浴。
チムジルバンでも設置しようと思う。あれは、50~90℃程度の韓国式低温サウナで、老化防止や疲労回復、血液循環、皮膚美容などに効果があるとされる。
日本では、スーパー銭湯などで岩盤浴の一種として取り入れられてる物だ。俺も昔は、よく行った。
体験すると色々流れ出る気がして、スッキリする。
よく考えると冷温室も必要だよな。火照った身体を冷やす為。
というか、建築スキルで作れるかな?
まぁ、材料を集めながら考えよう。スキルで出来ずとも、原理は単純だから普通に組み立てる事が出来そうだしな。
「師匠! あのゴーレムは何なんですか!!」
「うわっ!?」
ベルに首元を掴まれ前後に激しく揺らされた。めっちゃ揺らされてるので吐き気がして来た。
「べっ、ベル!ちょっ、待って!? はっ、吐きそう!!」
「あっ、すみません」
ふぅ〜、なんとか吐かずに済んだ。危うく美少女を汚物塗れにする所だったよ。その場合は、責任取らされそうな気もするし、危なかった。
「私も聞きたいわ。あそこまで、優秀なゴーレムを私は知らないもの」
ルイさんも話に参加して来た。なので、実物を見せる事にした。
「5人揃って『猫レンジャー』!」
机に置かれた拳大の猫ゴーレムたち。全部で実は5体いる。
「あの〜、大きさ違くないですか?」
「これがコイツら本体の大きさだよ。中には、倍率改変せずに入れてるから。本当なら実物大にしたかったけど、材料足らなかったもん」
「ユーリ君。材料って、何を使ったの?」
「ギンカの毛」
「「はぁ?」」
「あぁ、私の毛代わりで、抜けた毛を大量に持っていったから、何に使ったかと思えばそれですか。砕いて良いですか?」
「やめて!? 初めてにしては、よく出来たの!!」
皆さん、羊毛フェルトをご存知だろうか?
固めた羊毛に専用の針でつつく事により、繊維を絡めながら任意の形に成形できる手芸の一種だ。
実は、ギンカも季節の変わり目に毛代わりをしたのだ。一応、あれでも犬だからするらしい。
そこは、向こうの犬と同じなのな。今度、フリスビーに反応するか試してみよう。
という事があったので、ギンカの毛を集めて作ってみました。犬にしなかったのは、犬はギンカで間に合っているからだ。
「羊毛フェルトならぬギンカフェルトで作ったのは良いんだけど、何故か動き出した。しかも、コイツら魔法も使えたりするんだよね」
だから、俺の武器の失敗作を渡した訳だ。とはいえ、失敗作でも特殊級から伝説級だったりする。
これで、遠近両用タイプになったね。並の冒険者なら勝てないよ。よくマリーは、コイツらに勝ったな。改めて、マリーのおかしさに気付いたよ。
「……ユーリ君。その毛を集めた時に、何かしなかった?」
「そうです。例えば、中に何か入れるとか?」
「………」
やべぇ……。頭には、毛玉を作った時に軽過ぎるからと入れた物が思い浮かんだ。
「入れたのね?」
「入れちゃったんですね?」
「……入れちゃった」
「何を入れたんですか?」
ギンカの問いに俺は答える。毛玉の中には入れた物とは。
「魔力結晶。イレーネコスモスが精製した俺の魔力の塊……」
「「………」」
ルイさんとベルは、額に手を当て皺を寄せた。
「正式なゴーレム作成手順ですね」
「あっ、やっぱり?」
そんな気がしなくはなかった。魔力結晶……魔力核を中心に人形を動かす。よくある手順だ。遊びで出来るとはな。
「だから、魔法まで使えるのね……」
「ちなみに、階級は?」
「そんなの下位に決まってるじゃん!」
「そうですか……ほっ」
「あっ、でもね。ゴジラキャットだけは、何故か、特級の風が使えるよ」
「「はぁあ!?」」
「魔力結晶にマリーの魔力も入ってるからかな?」
「という事は……」
「一種の竜骨兵みたいな物なのでしょう……」
何故か、2人にドン引きされたよ。ふっしぎ〜。
ちなみに余談だが、俺の命令だけでなく、マリーの命令も聞く様だ。
鬼ごっこ中にマリーへと向かったのも命令を受ける為だったらしい。だから、戦闘も起きず逃亡出来た様だ。
後日。モカとミズキから報酬が決まったとの事により狂乱の小世界へやって来た。
「ここで何をするんだ?」
「リリィさんから貰って来たポーションを鑑定せずに飲んで欲しいんです。何、ただのジョークポーションですよ。効果は、1日で消えるので、それを我慢するのが報酬って事で」
「「ポーション?」」
俺とアイリスは、顔を見合わせた。
「まぁ、毒じゃないんなら別に良いけど」
全てに耐性有るから麻痺や毒でも心配ないな。
「私も良いよ。1日我慢すれば良いだけでしょ?」
「2人から了解も貰えましたし。それでは飲んで下さい」
俺たちはポーションを受取るとゴクンと飲みほした。効果は直ぐに現れる。
「「熱っ……」」
身体の発熱共に前が重くなった。視線を下げると下が見えない。
「野郎に、おっぱい作らせてどうするんだ?」
「お兄さん。ホントに野郎なの?」
「えっ?……まさか!?」
その言葉で違和感に気付く。いつも感じている息子の気配がない。急いでズボンを開けて見るが、影も形も無くなっていた。
「女の子になってる!?」
「ゆっ、ユーリ……」
アイリスのか細い声が聞こえた。横を見るとアイリスのおっぱいが消えている。直ぐ様、彼女に断りを入れて、半ズボンの中を見ると見慣れた物が生えていた。
「男の子になっちゃった」
おかしい。確かに、似たジョークポーションは作りはしたが、完全に性別が変わらない様にした。
「リリィさんの努力の成果だそうです」
「リリィ!なにしてんの!?」
「では、お兄さん。覚悟は良いね?」
「えっ?」
パカッと地面が開いて、俺は落下した。下には、スライムが埋め尽くしており、そこに飛び込む形になった。
「お兄さんは、女の子の気持ちを少しは知るべきだよ」
モカの言葉を最後に天井は無慈悲にも閉じられた。そして、スライムの蹂躙が始まる。
「ユーリ!?」
「アイリスさんは、こちらですよ」
「ミズキ!これは一体!!」
「仕返しですよ。仕返し。今回のね。皆さん、協力お願いします」
ミズキに押し倒されるアイリス。
「みっ、ミズキ? なっ、何をするつもりかな……?」
「貴方が、ユーリさんによくやる事ですよ」
「いや、ちょっ、まさか!?」
「しっかり限界まで絞って上げます」
「イヤァアアーー!!」
こうして、俺とアイリスは、今回の件でやり過ぎたと後悔したのだった。




