狂乱の宴 2日目 後編
スライム天気や猫ゴーレムに皆が苦しめられている頃、住宅エリアでもリリアとベルが苦しめられていた。
「ちょっ!? 結界を再展開!!」
「ハンマーを当てる度に障壁1枚を確実に持っていくとか、鬼ですか!?」
注意。鬼では、有りません。ハンマー担いだ二足歩行でスタイリッシュなイケ猫です。
「ちょっ、ホントに止めてよね!スライムから身を守る為の障壁なんだから!!」
そんな事とは露知らず、1枚1枚確実に割っていく猫ゴーレム。
「鑑定出ました!名称は、猫ゴーレム『ゴルゴ T 』。『俺のハンマーが、障壁諸共心を撃ち抜くぜ!』って書かれてます!意味が分かりません!でも、心は折れそうです!!」
「私も意味が分からない事に、だから顔が濃いのかと思いましたよ!どういう事でしょうね!!」
「ニャゴ、ニャゴ、ニャゴォオオーー!!」
「「きゃあぁぁーー!」」
文句を言ったからか? 激情したゴルゴ T のハンマー乱舞によって、2人が展開していた多重障壁は全て割られて吹き飛ばされた。
「うう……」
「イタタッ……」
2人は、衝撃にふらふらしているが、忘れてはならぬ。今、障壁が無いことを。
「「イヤァアアーー!」」
当然、待機していたスライム群に呑み込まれたのだった。
「ムリムリ無理!入って来ないで!!」
「ちょっ、止めっ!? そこはユーリ様もまだ!?」
スライムに弄ばれる2人に影が差す。それは、巨大化したゴルゴTのハンマーであった。
「「………まさか!?」」
2人が悟った瞬間、ハンマーは振り下ろされた。大地には、その衝撃を表す網状のヒビを生み出していた。
「ニャゴ」
猫ゴーレムが、ハンマーを退かした跡からは、光と化したリリアとベルが立ち昇るのであった。
リディアとベルの脱落により残り14人。
**********
リディアたちが脱落した頃、アイリスたちの方でも変化があった。
「居ました! アイリスさんたちです!!」
「良かった。まだ、風はまだ保つよ」
スライム障壁を張ったアイリスに近付いて来るのは、イナホとシオン。彼女たちは、風魔法でスライムに濡れない様に身を包み、走ってきた。
「イナホちゃんたちだ。やっほーっ! ねぇねぇ、戦うつもり? その気が無いなら提案があるだけど?」
「ハァハァ、私たちもアイリスに提案が有ります」
「おっ、良いね! それじゃあ、同時に言おうよ。たぶん、同じ気がするし。せーのっ!」
「共闘しない / しませんか?」
「やっぱり!だったら、魔法ごと入っておいで、それくらいなら私の障壁は壊れないから」
「助かります」
「助かる」
こうして、アイリス率いる大チームが完成した。今後は、マリーたちを叩く為に動く事になる。
**********
住宅エリアの住居に隠れたマリーとミズキ。しかし、スライムは、そこにも入ってくる。
「まさか、暗所を好むから光を生み出せば来ないとは思いませんでした」
全身を雷で包み込み、発光するマリー。その横でミズキは、疲労困憊で倒れてた。
「はぁ…はぁ…もう少し前に気付いて欲しかったです」
「すみません。というか、後々考えると手段は色々有るのに案外思い付かないものですね」
「……そのせいで、イチゴ味を体感しましたけどね。それでいつまで続くんですか?」
「大体、30分で止む予定です。あまり成長されても問題ですからね」
「という事は、既に止んでいると? でも、スライムは消えてませんよ?」
「それは、スライムですから狩らないと消えませんよ」
「はぁ〜……」
ミズキは、この後の事を想像して盛大な溜め息をついた。
「とりあえず、猫ゴーレムに乱入されなくて良かったと思います」
「そうですね。運がーー」
良いと言おうとした瞬間、グシャという音と共に隠れていた建物が半壊し、マリー達の姿が顕となった。そして、半壊させた主とその目が合う。
「なっ、何ですか!? あれは!?」
「来ましたね。最強の猫ゴーレム『ゴジラキャット』!」
「それは、一体!?」
「ゴジラキャットとは、ーー」
ユーリが時間をかけて作った大型の猫ゴーレムで、三等身のデフォルメされた猫である。
必殺技は、『猫パンチ』と『猫クロー』。
猫パンチ。どんな障壁も柔らか肉球の弾力で粉砕するぞ。
猫クロー。実は、ただの爪研ぎ。でも、巨大な為、あらゆる物を削り取る。
「ーーとなってます」
「よし、逃げましょう!キャラ崩壊とか言われそうなくらいですけど逃げましょう!!だって、全然攻撃が効いている気がしませんからね!」
ミズキのデリンジャーからは、色々魔法が飛んでいるがゴジラキャットは、ダメージを微塵も感じさせない。
「ストームトルネード!」
マリーの放った魔法により、ゴジラキャットは竜巻に包み込まれた。
「今の内に視界から消えましょう!」
「はい!」
2人は、今回初めて逃げる事を選択した。
**********
スライム天気は止み、アイリスは障壁を解除した。
「これで、もう降ることは無いよ。一度降ったら、数ヶ月降らない事になってるから」
「ありがとうございます、アイリスさん。でも、スライムがうじゃうじゃ居ますね」
「それも大丈夫。私に任せて」
アイリスは、手をパンパン!と鳴らすと宣言した。
「全スライムに伝達します。プレイヤーの状況並びに猫ゴーレムの配置を教えなさい」
そうアイリスが宣言すると巨大なスライムが近付いて来て、ぽよんぽよんと跳ねた。
「……なるほど。マリーたちは、猫ゴーレムから逃走中。ユキちゃんたちは、雨宿り。フィロちゃんたちは、捕食され中。クレアちゃんたちは……えっ?誰も見かけていない!? という事は、ユーリの言ってた隠密系の魔法かな? そして、それ以外は、脱落と」
アイリスは、巨大スライムからの情報を元に今後の作戦を練る。
「よし、フィロちゃん助けて貸しを作ろう! 少しでも戦力は欲しいーー」
アイリスが方針を決めた瞬間、ドゴォオオーー!!という音と共に、市場エリアから火柱が立ち昇った。
「特級魔法の発動を感知しました! フィロ並びにマリンは、失格となります」
「………」
フィロを仲間にしたかったが、ダフネの放送によると失格したらしい。どうやら、スライムの捕食から逃げる為に特級魔法を使った様だ。
「……スライム全員に通達します。マリーとミズキを全力で襲いなさい。それ以外には、手を出す事を禁止します」
アイリスの指示に従い、スライムたちは移動を開始した。
通常、スライムへ名指しによる命令は行えない。しかし、アイリスからの情報伝達により、それは可能になっている。
「皆、スライムたちに襲わせているから今の内に準備しよう」
『了解』
まずは、アイテムやトラップを集めるのも良いだろう。報告によるとフィロたちは、かなり集めていた様だ。
「決戦は最終日。報酬は、生き残った人にペンダントを渡します。それじゃ、夜の内に準備しよう!」
『おぉーー!!』
最終日へと向けた長い夜が始まった。
夜になって、現れたドライアドのトレアの側では、スライムが溢れていた。理由は、セーフゾーンを求めてマリーたちがやって来たからだ。
「セーフゾーンでも襲ってくるって、どういう事ですか!?」
「私が、むしろ知りたいですよ!明暗関係なく来てますし!!」
「ルール上は、問題無いので頑張って下さい」
トレアの無慈悲な言葉が聞こえる。スライムは、NPCの様なものなのでカウントされないのだ。
「「そんなぁああーー!」」
こうして、スライムに弄ばれる事が決定した。彼女たちにも長い夜が訪れる。




