狂乱の宴 1日目 夜の部
ピン♪ ポン♪ パン♪ ポ〜〜ン♪
町内放送などで聞き慣れた音が全エリアに響き渡る。その後、夜空に大画面が表示された。
「はい、皆さん。お疲れ様です。只今より夜の時間帯という事で、ドライアドを3名派遣します。場所は、彼女たちの自由意志に任せておりますので、ランダムとなります。また、彼女たちには食料を持たせていますので、ご利用下さい」
各エリアにも食料を配置しているが、セーフゾーンに無いのは変だという配慮から用意した。また、彼女たちから受け取れる食料は、既に調理された出来たて料理となっている。
「近くに来てくれると助かるんだけどな」
ドライアドの気分次第な所も有るからセーフゾーン同士が近くなる事も極端に離れる事もあるのだ。
「それでは、現在の人数を報告します。生存者は、鬼を含め19名となっております。脱落者の名前を言う事は出来ませんので悪しからず。それでは、また明日お会いしましょう」
ダフネの姿と共に空の画面も消えて、元の夜空に戻っていた。
「うん?」
夜空に浮かぶ星の1つに違和感を感じた。意識して見ると限界高度を飛ぶアイリス。
すぐ様手を振るとアイリスは気付き、降りてきた。これで、無事合流することが出来た。
「ユーリ! トレミーを近くで見つけたよ。そこで休もう」
「ok。そうしよう」
アイリスの案内に従い、ドライアドのトレミーを目指した。
「おかしくない?」
アイリスの案内で移動する事、数分後。教会近くでトレミーに遭遇した。そこをセーフゾーンにするそうだ。
だから、他のチームが来るのも当然あり得る。だが、ここには生存者20人。全員が集合した。
「ドライアドたちもスタート地点から移動と思ったので、事前に教会を見張ってました」
「素直にユーリ様をつけてました」
「しっかり最後まで見ました。ああいうのがお好きなら、私がお相手します」
「はうっ!?」
クレアとリリンの発言に、モカが真っ赤になって俯いた。あはは、見られてないと思ったら、しっかり見られてたよ。
「いつから見てたの?」
「エロースさんを脱落させる為に色々した時には、既に居ましたよ」
ホントに最初から居たのね。というか、マジで気付いて無かったわ。どうやって追跡してたか気になる。俺は、姿を消していたし。
しかし、それより気になるのは……。
「何で、料理してんの? 俺?」
「純粋に、私が持って来るのを忘れたからですね」
という訳でメニューは、『焼肉定食』。鬼ごっこには、体力を使うから肉が良いだろうとの判断だ。
焼肉定食には、特製の焼き肉ソースを肉と野菜にふんだんにかけてある。それが、下の鉄板で弾けて香ばしい香りが食欲をそそる。
そして、備え付けに当然、白米だ!濃い味付けが、白米によく合う!
……アレ? 今、鬼ごっこ中では無かったか?
「このソース美味しい! そのまま、ご飯にかけよっと!」
「アイリスさん、さすがにそれは……」
「でも、美味しいよ。イナホちゃん」
「……ユーリ様が、その食べ方は太るって言ってましたよ」
「大丈夫。私、太らない体質だから」
『ハアァッ!?』
皆、恨みがましくアイリスを睨んでいた。
「アイリス。ズルいですよ。私も胸が太って困るというのに」
自分のおっぱいを持ち上げるギンカ。
『いや、それは違うから!!』
「もぐもぐ。あっ、白米のお替りお願いします。後、肉を少し」
トレミーからお替りを頼まれた。茶碗に白米を盛り、焼いた肉を彼女の鉄板に移す。
ドライアドが、普通に肉食ってんですけど!?
「驚く程ですか? トレントも肉を食うでしょ?」
「いやいや、完全に人型じゃん! 自身の木と一体化してる時ならまだしも!!」
「同じですよ。胃袋が移動しただけです」
という、意味の分からない説明をされた。考えても仕方ないので、俺も食事に戻る。
「そういえば、リリスたちがいないが、誰が倒したんだ?」
てっきり、屋上を陣取ってるから、生存してると思ってた。しかし、誰も自分がしたとは言わない。
「アイツら、4階建ての建物占拠してただろ? 誰か、何か知らないか?」
「あっ、それでしたら、思い当たる事が有ります」
「へぇ〜、それはどんな事?」
「ユーリ様が、街で魔力砲を使った時、建物の屋上が爆発しましたよ」
魔力砲ってのは、俺のホーリーバーストだよな? その時の衝撃で、近くに居たのに気付いて無かった訳か。
「あぁ……たぶん、アレかな?」
「私もそう思うです」
俺は、ユキとマリエルから詳しく聞くことにした。
**********
時間は、ユーリがホーリーバーストを撃つ、少し前に遡る。
「ニャニャ!!? こっ、ここは何処ニャ!?」
転移玉でランダムに飛ばされたライカ。彼女が転移した先は。
「誰だ!?」
「こんなに接近を許すなんて!?」
リリスとラズリが、陣取る4階建ての屋上だった。黙っていれば、奇襲を出来たのだが、突然転移したライカには無理な話である。
「「ライカ!」」
すぐ様、2人はライカに向かい大量の魔法を放つ。
「にょわーー!!」
ライカは、必死に逃げた。しかし、2 対 1 という事も有り、直ぐに追い詰められた。
「仲間は何処です!」
「知らないニャ! 逸れてしまったから!」
「白々しいですね。仲間がいなければ、ここまで登る事は出来ない筈です」
「アイテムのせいニャ!!」
「まだ、白を切りますか?」
何を言っても聞かない2人に、ライカは覚悟を決めた。
「仕方ない。コレを使うしか無いニャ!」
懐に手を入れ、『竜すら殺す手榴弾』を掴むとピンを抜く。
「させません!」
「ニャ!?」
ライカは、アイテムを取り出し投げようとした瞬間、リリスの射撃により倒され、光になって天へと帰る。その為、アイテムは放置される事になっているので、ピンを抜かれた手榴弾がその場に残された。
「ペンダントは奪えませんでしたが、これで脱落ですね」
「ペンダントは、隠れた仲間からーー」
2人が安心した瞬間、屋上を閃光と共に爆音が駆け抜けた。その後、空に登る光が2つ目撃された。
**********
「置きボムか……」
それで、リリス、ラズリ、ライカの3人が脱落した様だ。
「他に、変な落ち方した奴はいないよな?」
気になって聞いてみたら……いたわ。
「私たちが、ローラさんたちのチームを追っていたら、謎の閃光に彼女たちが呑まれて落ちました」
フィロとマリンが、ローラたちを追い回していたら、俺の魔法に被弾した訳か。完全に俺のせいだよな。知らない事にしよう。
その後、誰が誰を倒したとか、色々な情報を交換し合った。なかなかに有意義な時間だったと思う。
そして、真夜中。
「では、戦闘での火照りを鎮める為に協力をお願いします」
生き残った皆に、押し倒されて拘束された。
「えっ? ちょっ!? マジ!?」
その後、長い夜を過ごした。
そして、翌朝。教会側から天へと帰る一筋の光があった。何を隠そう、この俺である。
絞りに絞られた俺の息子。アレもダメージ判定入るのね。何の事かは、想像にお任せします。
光になって登る間、ホントに昇天するのでは無いかと思いました。
これにより、残り18人。




