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狂乱の宴 1日目 中編

 ユーリが商業エリアで、ロギアたちを追い回し始めた頃、市場エリアにアイリスは居た。そして、彼女の足下では、複数のスライムが蠢いている。


「うんうん、分かったよ。なるほどね。ありがとう。引き続き、お願いね」


 アイリスの指示を受けてスライムたちは、散開していく。


「さて、みい〜つけた♪」


 アイリスの足は、スライムたちが見つけた、露店と露店の間に隠れる獲物へと向かい確実に歩き出した。


 数分後。一番最初に成果を上げたのは、アイリスだった。


 彼女の横には、服がはだけたフランとスファレが倒れていた。


「………(ピクッピクッ)」


「はぁ、はぁ……んんっ……」


「ご馳走様。美味しかったよ」


 満足そうな表情を浮かべ、自分の手を舐めているアイリス。


 フランは、意識がなく痙攣しており、スファレはかろうじて意識は有るがグッタリして動けない。


「でも、フランちゃんには、刺激が強かったね。つい、ユーリより先に食べちゃった。でも、ちゃんと残して有るから大丈夫だよ。後、スファレの方は、ユーリに鍛えられたのかな?」


 アイリスは、2つペンダントを揺らしながら2人に告げる。


「鬼は、捕まえた人を好きして良いルールになっているの。だから、ゴメンね。でも、このペンダントを外すと映像に映らないし、見られてない筈だよ。まぁ、知ったとしても、もう関係ないか。だって、――」


 アイリスは、2人に手を当てる。すると、バリッ!という音が響いて2人は、光の筋へと代わり空に登って行った。


「『障壁喰らい』。脱落するんだもん♪」


 これにより、ベティたちに継ぐ、2チーム目の脱落者が出た。


 残り34名。アイリスのペンダント数4。





 **********





 所変わって、住宅エリア。


 グレイとエルドラ。ライドとエフィメラの共闘グループ。


「そこの通路で挟み撃ちにしよう。俺たちが気を引くから、エフィメラたちは後方から頼む」


「「了解」」


 行動が決まったらしく、二手に別れ動き出す。


 グレイとエルドラは、敵の気を引くため通路の入り口、曲がり角で待機。


 ライドとエフィメラは、裏手から通路へ向けて移動した。声が聞こえると対応してくれるだろう。


「行くぞ!」


「おう!やってーー」


 2人が勢い良く通路に飛び出した瞬間、ガン!という激しい音が響き渡った。


「「〜〜〜っ!?」」


 グレイたちは、顔を手で抑え、苦悶の声を上げながら蹲った。どうやら見えない壁に、顔を打ち付けた様だ。


「なっ、何でここに障壁!? しかも、上だけ!?」


 しゃがんだ状態で手を横に振るが、障壁がなく、上下に振ると上で障壁にぶつかる。


「例のトラップか!?」


「いえ、私が張りました」


「「えっ?」」


 しゃがんでいた2人の後頭部に"ガチャリ"と冷たい何か押し当てられた。冷や汗を流しながら、2人は声の主へと問いかける。


「あっ、あの〜、マリーさん? 前に居たのって貴方のチームだったんですね。今気付きました。なのに、どうして後ろに居るのか? とか、聞きたい事が有るのですが、それ以前に……」


「この後頭部のモノは、何ですか?」


「私とミズキのデリンジャーです」


「「はぎゃ!?」」


 マリーは、答えると同時に引き金を引いた。その瞬間、銃口から放電が起こり、グレイたちは光となって空に登っていった。


「あっ……つい、撃ってしまいました。まぁ、ペンダントはミズキがなんとかしてくれるでしょう」


 グレイとエルドラの脱落により残り32名。マリーのペンダント数は、取得無しで1のまま。




 **********




「声がした! 行くぞ!!」


「うん!」


 ライドとエフィメラは、曲がり角から顔を出して様子を確認する。


「「あれ?」」


「誰もいない?」


「グレイたちは?」


「脱落しましたよ」


 突如、上からグレイたちが脱落した事を告げられた。


 そして、上から降ってきた者はライドとエフィメラをナイフで斬りつけた。


「うわっ!?」


「きゃっ!?」


 ナイフによって2人の服は前方が切り裂かれ、肌とペンダントが露出する。そして、ナイフの主は、着地と同時にエフィメラの横をすり抜けた。


「ダメですよ。警戒を緩めては」


「「ミズキさん!?」」


 2人の目に映ったのは、両手にナイフを構えたミズキの姿だった。しかも、右手には、ペンダントまで握られている。


「まずは、エフィメラのペンダントを頂きました。次は、ライドの番です」


「そんなナイフで、2人相手に何が出来るって言うんですか? 獲物の長さを考えて下さい」


 ライドの手には、片手剣が握られている。それに引き替え、ミズキのナイフはダガーナイフと呼ばれるものだ。殺傷能力は高いものの、片手剣と比べると2倍以上も長さに差が付く。


「あら、知らないのですか? 師であるアンナさんも言ってましたよ。メイドの嗜みに、ナイフ術があることを!」


「っ!?」


 ミズキは、ペンダントを仕舞うと代わりに新しいナイフを取り出し、それを投げた。ライドは、それを剣で弾くが、気を取られて一気に距離を詰められてしまう。


「ハアァァッ!」


 ライドの懐で、ミズキのナイフによる高速乱舞が巻き起こる。


「やばっ!?……痛くない?」


「ユーリさんも言ったでしょ? 衝撃は有るけど、痛くないって」


「えっ?」


 バン!という音と共に、振り返ったライドは光の筋に変わった。


「撃つのは、不味かったですか?」


「いえ、ペンダントを1個だけ獲得したので問題有りません。最低ラインは、クリアです」


「なるほど。なら、後は腰を抜かしているエフィメラを排除するだけですね。なら、銃の確認に使っても?」


「ええ、お好きにどうぞ」


「ひいぃぃ!」


 マリーとミズキがエフィメラに微笑むと彼女は悲鳴を上げた。その後、住宅エリアの通路から上がる光の筋が目撃された。


 ライドとエフィメラが脱落。残り30名。ミズキのペンダント数2。




 **********




 あちらこちらで戦闘が激化する頃、商業エリア。


「……ロギアたちに逃げられた」


 ユーリは、ロギアたちに手加減し過ぎて逃げられていた。


「どうしよう? 誰か別の人を探すか? それより、発見する方法を考えよう。魔力感知は、周囲3mまでしか感知出来なくしてるからな。目印でも……あった」


 ユーリの視界には、壁際を歩く小型の自動ゴーレムが目に付いた。直ぐ様、鑑定を行い、正体を確認する。


 その結果、エロースの自爆ゴーレムだという事が判明した。その上。


「あ〜あっ、エロースの奴。ミスったな。情報収集も兼ねたんだろうけど裏目に出てるぞ」


 ユーリの目には、ゴーレムと主とを繋ぐ魔力供給パスが見えていた。その糸を辿れば、最低エロースは、いる訳で。


「たぶん。アイリスも楽しんでるだろうし。俺も遊ぶかな? 水精霊魔法『ミラージュコート』」


 薄い水の膜がユーリを包むと路地から姿が掻き消えた。




 **********




「なるほど。このエリアには、軽く確認しただけで、鬼を含めた7グループ。4階建ての建物にリリスちゃんたちが陣取り、ロギアたちが3グループで共闘。イナホちゃんのグループは、ゴーレムに気付いて破壊したから移動したかも。鬼のユーリ君は、ゴーレムの前で水に包まれたら姿が消えた。あの感じは、水精霊魔法かな? それと私たちね」


 エロースは、左目を押さえ、各チームの状況を挙げる。


「そんなに、分かるものなの!?」


「ゴーレムの視界によるものよ。今回は、動くものに反応して視覚を繋ぐ様にしたの。そしたら魔力消費も少ないわ。実は、ドライアドたちを真似たやり方ね。彼女たちの場合は、種子や植物を使ってやっているわ」


「先生って、実は、凄かったんですね!よく鼻血を出して倒れる変態じゃなくて!」


「あはは……変態。私って、そう見られてたんだ……」


「あっ、気に触ったならごめんなさい!悪気はーー」


 モカが喋っている途中、ブチっという音と共に彼女のペンダントが地面に落ちた。


「ペンダントが!? 拾わな……ええっ!? 動けない!?」


「モカちゃん? 何か起こっ……なっ!?」


「ちょっ、エロース先生、なんとかして!なんか、身体が動かないの!?」


「ごめんなさい!私も動けない!!」


「それじゃあ、どうすれ……きゃ!?」


 モカは、エロースの前で身体が勝手に動き、バンザイをした状態にさせられた。


「待って!今、鑑定魔法で原因を――」


 エロースが、自分の鑑定でモカの状況を調べようと視線をしっかり向けた、瞬間。


「はい、注目」


 モカのパーカーは完全開放され、エロースは彼女の全てをその目に焼き付けた。


「ふぁんたすてぃっく!?」


「エロース先生!?」


 エロースは、それが原因で、盛大には鼻血を吹き跪いた。


「今の内に、ペンダントを貰うわ」


 エロースからペンダントが外れ、独りでに宙へと浮くと消え、モカのペンダントも同じ様に虚空に消えていった。


「この声は、お兄さん!」


「正解です」


「何処!? 何処にいるの!?」


 モカは、動揺した。何故なら彼女の目には、ユーリの姿が一切見えないのだ。また、獣人の持つ優秀な鼻をもってしても匂いが感じられなかった。


「さぁ、何処だろうね」


「ひゃあん!?」


 モカは、見えない手に胸を触られる感触を受けた。しかし、振り払ったり、掴んだりしたくても手足が動かない。


「なぁ、エロース。鼻血もダメージ判定に入るんだよ。なら、モカのあられもない姿を特等席で見せられたら、君はどうなるんだろうな?」


「ユーリ君!? まっ、待って! 正気なの!? 妻である私を殺す気!?」


「おっ、お兄さん! ボクに何をする気なの!?」


「イケナイ事。ってか、死なないって言ったろ?まぁ、実感すれば分かるか。という事で、エロースの拘束が解ける前にやるわ。覚悟してね」





 数分後。


 路地裏から立ち昇る一筋の光が目撃された。


「はぁ…はぁ……。お兄さんのバカ……」


「おかげで、エロースが落ちたよ。助かった」


「ううぅ……穢された。もう…お嫁に行けない……」


「お嫁って、俺の所に永久就職するんじゃないのか?」


「えっ? 良いの?」


「良いよ。後で話し合おう。でも、今はそれより……ムラムラしてるんだよね。今のが原因で」


「待って、お兄さん! まさか!? ここで最後までする気!?」


「………(ニコッ)!」


「私に、そんな趣味は無いよ!?」


「大丈夫。意識とは裏腹に身体が正直なのは、さっき確認した。対価としてペンダントは残して上げる」


「えっ、嘘! 止めっ、イヤァアアーー!」





 数時間後。


 商業エリアのとある商店の1室に、気を失ったモカが寝かされ、枕元にはペンダントが1つ置かれていた。


 エロースの脱落により、残り29名。ユーリのペンダント数3。

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