皆でやろうよ!狂乱の宴!!
要望の多かった、中に入って色々やる第一弾です!
「よし、完成だ!」
「おおっ……!」
「おめでとうございます!」
アイリスとマリーが、パチパチと拍手を叩く。3人の目の前には、完成したマジックアイテムが置かれている。
その名も『狂乱の小世界』。
開発中の平穏なる小世界より先に、暴れる事を目的として作ったモノだ。
お忘れかもしれないが、レギアスさんに依頼された演習場の試作品でもある。実戦を想定して、直径1kmの範囲内に竜王国の街並みを再現した。
「取り敢えず、特級魔法を同時に使用されても3発なら確実に耐えれる様に改良出来た。自動修復も良好。現実で1日経てば、中の街も元に戻る」
「最初は、一発で壊れたのにね」
それが原因で、かなり修復に時間がかかった。
「すみません……」
「謝る事じゃないさ。上級をいくら使っても大丈夫だったから、調子乗って特級を奨めた俺が悪い」
「でも、凄いよね! 私たち3人が、特級魔法を使っても壊れないなんて!!」
「そのエネルギーを無力化するのにどんだけ苦労したか……。だから、ちゃんと耐えて貰わないと困るよ」
「ユーリさん、特級魔法を4発同時使用したらどうなります?」
「理論上壊れて、内部の人間は外部に放出され、元のサイズに戻る。一応、緊急措置としての機能で残した。まぁ、現実問題難しいけど、うちなら竜撃弾を一点集中で4〜5発撃てば壊れると思う」
「ねぇ、ユーリ。もし外部から壊したらどうなるの?」
「結果は同じ。内部の人間は、外部に本来のサイズで放出される」
「そういえば、内外の時間差は、結局どのくらいにしたんですか?」
「通常の1日が、内部では3日間。だから、8時間で1日だな」
「おお、イレーネコスモスと同じだ」
「結局、それが安定だったのさ。それに、1泊2日より2泊3日の方が余裕を持てる」
「確かに、そうだね」
「所で、イレーネコスモスは、まだ完成しないんですか?」
「殆ど完成したよ」
「アイリスの言う通り、殆ど完成しているよ。ただ、温泉エリアが、まだ微妙なんだよ。エリア1と2は、何時でも大丈夫。現にアイリスと何度も使って確認してみた」
イレーネコスモスの構成は、3エリアに分けられている。
エリア1。リゾートホテル。
ベースエリアにして、海岸と海の上のホテルがある夏の世界。しかし、実は海水でなく、真水。その為、しょっぱくない。砂は、ダンジョンで取ってきた、白い砂を使用している。
エリア2。白銀世界。
こちらは冬の世界。冬のスポーツが楽しめる様に雪山を作成した。ゴンドラも設置したので、登り降りも楽に行える。
エリア3。温泉。
各種温泉を取り揃えている。使える場所も多数有るが、設備に納得がいかないので、まだ調整しているという訳だ。
「そうなんですか。なら、今度使わせて貰いましょう。ユーリさんも一緒で」
アイリス以外の意見を聞くのも重要だよな。
「ok。分かった。今度行こう」
「さて、それじゃ中でさっそく暴れよう!」
アイリスが我先にと移動用の魔法陣に移動し始めた。
「ちょい待て」
俺は、アイリスの手を握り止めた。彼女はこっちを振り返る。
「えっ、まだ、ダメなの?」
「ダメじゃないが、やるなら盛大にヤラないか?」
「どういう事?」
「私も気になりますね」
マリーも食い付いて来た。なら、俺の考えた計画を話そう。
「やるなら盛大にやろう。まずは、ーー」
数日後、ユーリ並びにアイリス、マリーの連名で、関係各所に『クレイジーカーニバルへのご招待』と書かれた手紙が届けられた。
クレイジーカーニバル、当日の朝。
「ユーリさん。皆さん順調に集まっていますよ。来た方は、談話室に通しておきますね」
マリーの言葉通り、魔力感知すると転移門からぞろぞろと人がやって来ていた。
「おお、頼むわ。俺は、判定用のアイテムを確認しておくから」
マリーが部屋を出ると、今度はアイリスが部屋に入って来た。
「ユーリ。チーム分けは、ホントにこれで良いの?」
アイリスが一覧表をひらひらさせながら言ってきた。そこには、今回のイベントのチームが多数記載されていた。
「ああ、大丈夫だ。面白そうで決めた!」
「いや、そこは相性かクジで決めてよ!」
珍しくアイリスからツッコミを受けた。
「ん? ダメな組み合わせでもあったか?」
「一組……マリーとミズキの組み合わせは、不味くない?」
アイリスは、部屋から出て行ったとはいえ、少しでもマリーに聞こえない様に内緒話をしてきた。
「そうか? ヤバい × ヤバいで面白くなると思うが?」
「ヤバいって自覚有るじゃん!?」
「どうしました、アイリス? 何か、面白い話でも有りましたか?」
「!?」
いつの間にか、マリーが部屋に帰って来ていた。しかし、今の話は聞かれていない様だ。
「うんうん。何でもないよ、マリー」
「マリー。全員、集合でもしたのか?」
「ええ、何時でも始められます」
「なら、行こう!」
マジックアイテムを乗せた台車を押しながら、談話室へと向かった。
「よ〜し、全員揃ったみたいですね。それでは、参加者はマリーについて移動して下さ〜い!」
マリーの後について、どんどんカオスコスモスへ転移していった。
「ダフネ。ドライアドたちと連携して情報収集と進行を任せた」
「了解しました」
「それじゃあ、行ってくる」
俺も魔法陣に乗り、内部へと転移した。スタート地点の教会前に着くと、テーブルが置かれその周辺に皆が集まっていた。
「は〜い、注目!!……学生1クラス分くらい居るな。それでは、今から妊娠で溜まりきったストレスを暴れて発散したかった人たちの為に用意したイベントを発表します。内容は、2泊3日の『鬼ごっこ』。そして報酬は……要望通りの『何でもお願い可能券』です」
『おおぉぉーー!』
報酬を聞いて歓声が上がる。
「ただし、人数の関係上、鬼への負担が大きいので、サバイバル要素を追加します。まずは、各自、今からペンダントと腕輪を渡すので着用して下さい」
テーブルにアイテムを並べ、順番に渡していく。
「まず、ペンダントは、人を減らす為のモノです。制限時間経過後に、ペンダントを2つ以上揃えてないと失格になります。次に、腕輪は、各種ダメージ吸収効果とダメージ計測機能が有ります。一定以上のダメージを受けると場外に転移する事になり、脱落します」
「その腕輪は、模擬戦等で使われるアイテムの様に、魔法だけですか? それとも、打撃、斬撃、突撃等もですか?」
魔法学校や騎士団の模擬戦では、似た物が使われている。
「これは特別で、そこまで含みます。基本的な原理としては、腕輪の着用者に大気中の魔力を吸収して多重障壁が展開されます。もし、障壁が破壊された場合は、内蔵されたもう1つの魔法が発動して離脱する仕組みです。そういう訳で、衝撃は来るけど、痛みも無く死にもしないので大丈夫。そして、それ以上の詳細は企業秘密で」
皆、漠然とだが、理解した様だ。後は、実戦で実感して貰おう。
「なお、今回のゲームには、罰ゲームが有ります。これも事前連絡したよね?」
『!?』
『ガクガクブルブル……』
皆に緊張が走った。一部の者たちは、恐怖で震えていた。
罰ゲームの内容とは、リリス作のチョコレート? リディア作の茶碗蒸し? リリア作のクッキー?のどれかを食して貰うことだ。
また、それを作ったリリスたちには、皆嫌いなバッドデビルバグの狩りに行き、率先して戦ってもらうこと。コイツらだけは、失格即罰ゲーム確定だ。
ギルドで依頼を受ける人が居らず、俺に回ってきた。その為、大量に繁殖中。現在、複数名の魔導師による結界で村内部に隔離しているとの事だ。だから、俺は当然行かないといけない訳で……道連れだ!
「なお、罰ゲームの対象は、全滅したチームです。ただ、どちらかが生き残っており、かつ、ペンダントを2つ以上携帯していたらセーフ。罰ゲームは、無しとします。最悪、2人で残り、片方に自分のペンダントを渡せば良い訳です。しかし、その場合は、報酬も無くなります」
罰ゲームがあった方が盛り上がるが、さすがに劇物を食べさせたくないという配慮からニ人一組のチームにしたのだ。
でも、厳しい様な気がしなくはない。報酬から考えると妥当かもしれないが。
「それでは、これがチームの組み合わせです」
鬼:俺とアイリス
託児所:フィーネ、リリィ、ポプラ、カレン
「鬼って、やっぱりユーリ様とアイリスさんがやるんですね……」
「当然だよな」
「張り切って暴れるね♪」
「だな。全力で追い詰めよう」
『(2人共、目がマジだ……)』
「鬼は、狩っても良いです。しかも、ペンダントを2つ携帯しているから狩れたら有利になるね。でも、簡単に狩れると思うなよ」
「当然だよね。私とユーリのヤバさを教えてあ・げ・る!」
「(……ゴクリ)」
「って、ちょっと待って下さい!? フィーネや母さんが居ないと思ったら!?」
「何で、私だけいるのって思ってたら!?」
「「託児所!?」」
「いや〜、だって、さすがに赤ちゃんが大量に居るのに、ママたち全員参加は不味いだろ? だから、フィーネは当然として、別にうちから1人、それ以外から2人選んだ。結構妥当な人選だと思うが?」
乳母経験のあるフィーネ。子育て経験多数のリリィ。ティアたちからは、リーダー格のティアを加える事にしたから、当然この2人だよな。
「彼女たちもこの戦いは見ているよ、ほら」
「おーい、見えてるかい?」
「「「カトレア!?」」」
空中に現れた大画面には、何故か、カトレアが映し出された。そういえば、彼女は妊娠中の為、観戦組だったな。
「おっ、見えてるみたいだぞ」
「あら、本当? 皆頑張ってねぇ〜」
「応援してます!」
「ティアさん、頑張って!」
「お子さんは、任せて下さい!」
言う事だけ言って、空の画面は消えた。今後は、定期的にダフネが映って色々してくれる予定だ。
「それじゃあ、気を取り直してどんどん発表するぞ」
マリーとミズキ。リリスとラズリ。リディアとティア。
リリアとベル。イナホとシオン。エロースとモカ。
フランとスファレ。ユキとライカ。ギンカとガーネット。
セレナとマローナ。クレアとリリン。ローラとスージー。
スルーズとロギア。ロメオとマリエル。ロロとベティ。
フィロとマリン。グレイとエルドラ。ライドとエフィメラ。
うちのメンバーだけでなく、セレナたちやロロも招待状を送ったら、参加を表明してきた。
「以上です」
「どういう基準で、チームの組み合わせを?」
「面白そう」
『(だと、思った……)』
「それでは、詳細ルールの説明をします。まずは、ーー」
1.中級魔法までなら何を使ってもいい。
2.武器を使う場合は、指定の物を使うこと。魔法銃の所有者は、下級のマガジンを装填して使用すること。
3.フィールドのアイテムや武器は、自由に使用して構わない。また、所有の上限は無いものとする。
4,夜の戦闘も許可する。ただし、夜にランダムで出現するドライアドを中心に半径10mをセーフゾーンとして、範囲内での戦闘は禁止とする。
5,食料はフィールドに分散して設置しているので使用は自由。
6.竜種は、身体強化の使用を禁ずる。その他の魔法は、皆と同様に使用可能とする。
「アイテムは、ランダムで配置した箱の中に有ります。他に質問は?」
「竜種の参加自体は有りなんですか?」
「ちゃんと対策されてるから大丈夫です」
俺は、テーブルの上にアイテムでなく、用意した多数の武器を並べた。
「では、5分後開始します。この武器は、ご自由にお取り下さい。つまり、好きなだけ取れるので、早いもの勝ちです。では、皆の健闘を期待します」
こうして、最大規模のサバイバルバトルが開幕した。
場外行きを脱落。ルールに抵触するものを失格と分ける予定です。
混じったら、ごめんなさい。




