ギンカの母に会う→ 結果、また女の子が増えました
「………」
「ご主人様、どうしました? 額に皺を寄せて」
朝起き、直ぐにギンカの元へ向かった。
「……ギンカ。君のお母さんに会った」
「母にですか? 既に、亡くなっていますが?」
「夢渡りを使って、神界から干渉してきた」
俺は夢の中で、正座させられて、色々言われた。
**********
「こんばんは、ユーリ君」
「えっと、どちら様でしょうか?」
誰だろう、この人? 褐色肌に白髪の美人さん。金の瞳は、肉食獣の獰猛さを印象付ける。
こんな美人に会ったら、忘れる訳が無いのだが……。
「へぇ〜、私が誰か気付かない様ね。なら、正座しなさい」
彼女は、笑顔なのだが、本心では怒っている様だ。アイリスたちが怒った時に見せる雰囲気に似ている。素直に正座して、謝るべきだろう。
「すっ、すみません」
「良いのよ。私と会うのは、初めてですものね」
「あっ、そうなんですか?」
なら、知らなくて当然だな。俺は、伏していた頭を上げた。
「でも、誰の関係者かくらい予想出来たはずよ。なんで、気付かないのかしら?」
彼女の怒りオーラが増した。ヤバい、はやく気付かねば!?
考えろ!彼女は、会った事も無いのに気付くって言ってるんだぞ!
でも、彼女の様な美人に……彼女の様な?
もう一度、彼女を見直す。 褐色肌に白髪。肉食獣の様な金の瞳。
「あっ……」
「気付いた様ね。言ってみなさい」
「ギンカのお母さんか、何かでしょうか?」
「そう、分かったのね。では、改めまして、ギンカの母エルメラよ。貴方の事は、タナトスから聞いたわ」
「タナトス様!? あの方は、お元気ですか!?」
「凄い食い付きね。元気にしてるし、良く貴方を見ているわ」
「そうですか……」
それは、嬉しいな。お元気なのですね。良い事を聞いた。
「所で、ここは何処なのでしょう? そして、亡くなったというお義母様が、何故こちらに?」
真っ暗な暗闇に一筋の地平線。タナトス様に会った狭間の光景を思い出す。ただ、違いが有るとすれば、星の瞬きがないことか。
「ここは、貴方の夢よ。厳密に言うと貴方の夢をベースにして作った、疑似的な狭間って所ね。神たちが、現世の者にお告げとかをする時に使う『夢渡り』って魔法よ。巫女たちの魔法に似た物が有るけれど、別物と思いなさい」
夢渡りか。俺の知ってるのは、エルメラさんが言った巫女の方だな。夢で、過去・未来の情報から他人の情報までを見る事が出来る。
ちなみに、実は、イナホが使える。巫女の職業スキルを習得した際に使える様になったらしい。
ただ、見たとしても殆ど覚えていないそうだ。
「本来なら、ここでの事は殆ど記憶に残らないわ。でも、半神の貴方なら確実に記憶を持ち帰れる」
俺なら可能だそうだ。
「それで、お義母様の用件とは?」
「貴方の女関係よ」
「すみません。マジすみません」
全力で謝る事にした。よく誤魔化しているが、自分が悪いと分かっているからだ。
「そこは、貴方のいた場所と違うから大目に見ます」
なんだと!? 親、公認した!?
「というか、向こうから来たのでなく、貴方が自分から押し倒したのってアイリスちゃんだけよね?」
「……そういえば、そうですが。結局、抱いたのは、自分の意思です」
「そうね。だから、貴方に命令します!良いわね!返事は?!」
「はっ、はい!」
「よし! では、ギンカと子供を作りなさい!」
「はい、お任せ……はい? 今のは、罰せられる流れでは?」
「はやく孫を見てみたいのよ」
あぁ、なるほど。ギンカの子供を見たかったのね。
「それに、罰では無いけどして欲しい事が有るの」
「なんでしょう? 大抵の事は、タナトス様のおかげで出来ますよ」
「貴方がダンジョンで救った娘たちがいるじゃない? あの娘たちと同じ状況の娘が、まだダンジョン内に居るのよ」
「やっぱり、その予想は有りました。チャロが他に3人見たと言っていたので」
「う〜ん、その3人が、そうなのかどうか分からないわ。元々は、5人いたそうなのだけど、2人は亡くなったと聞いたから」
「それは、可哀想に」
「ホントよね。それで、その3人なのだけど、24階の部屋にいるそうなの。助けてあげてくれないかしら? このままだと目覚めが悪くていけないの」
「任せて下さい。チームでもう一度ーー」
「あっ、貴方なら転移出来るから」
「えっ、マジすか?」
「一度だけなら往復が可能だからお願いね。それじゃあ、帰るわ。そろそろ目覚めの様ね。もうそんなに持たないわ」
地平線の光が強くなり始めていた。それに伴い、上下の黒も薄くなり始めていた。
「最後に1つ!ギンカに何か有りますか?!」
「そうね。いつも見守ってるわって伝えといて。それじゃあ、任せたわよ。バイバイ」
そして、俺たちは、光に呑まれ目を瞑った。再び、目を開けた時には、ベットから見る天井が見えていた。
**********
「ーーという事なので、今から行こうと思う。手を貸してくれ」
ギンカに事情を話し、協力をお願いした。ギンカの匂い探知が要なのだ。
「お任せ下さい、ご主人様! 母様の頼みでも有るので、全力でお手伝いします!」
ギンカの協力を得られた。後は、アイリスを……たぶん寝てるな。
アイリスは、別々に寝た日は、起きて来るのが遅い。その上、昨日は、夜の子守番だった。寝たのは、明け方の交代時間だろう。
「俺とギンカだけで行き、さっさと終わらせる」
「了解しました」
廊下で出会ったラズリに、置き手紙を渡して屋敷を出た。
「しかし、どうやって、そこまで行くのですか? 先程、試しましたが、転移は出来ない様でしたが?」
今は、ティラノスのダンジョンの側にある屋台で朝ご飯を食べている。そのまま来た為、食うのを忘れていたのだ。
購入したのは、ホットドッグ。大量の玉ねぎが、ソーセージとあって美味い。
「ギンカはね。俺は、まだ使ってないから往復分はイケるそうだ」
「お母様が言うなら間違い有りませんね」
「だから、それを食ったら行くぞ」
「了解です」
俺は、ホットドッグを一気に呑み込んだ。ギンカもそれに習って食べ終わった。急がなくても良かったのに……。
包みを丸め、指定のゴミ箱に投げ入れた。
「ナイスシュー……見なかった事にしよう」
ギンカのは、包みはゴミ箱に入ったが、俺のは入らなかった。でも、ギンカが重力魔法でシュートした。恥ずかしいので、見なかった事にしよう。
「転移」
「ーーという訳で、皆に紹介します。ダンジョンで再び助けてきた娘たちです」
「角族のマローナです」
「じゅ、獣人族のマリエルです」
「獣人族のライカだにゃ」
「「「よろしくお願いします」」」
今、猫型の獣人ライカが語尾『にゃ』を付けた。ユキはしないけど、猫型の娘が『にゃ』って言うと可愛いな。
「……私が寝てる間に増えた」
「それは、ごめん。行く前に、声を掛けようと思ったんだけど、寝てると思って遠慮したんだ」
「まぁ、どの道捜索する予定だった訳だし、タイミングが悪かったって諦める」
さすが、アイリス。出来たお嫁さんだ。
「でも、ユーリの1日を貰うからね!」
「了解です。好きにして下さい」
最近、平穏なる小世界が体良く使われるな。
「しかし、屋敷を拡張しないといけないな」
「それでしたら、私に協力させて下さい!建築に心得が有ります!」
ガーネットが、名乗りを挙げて来た。詳しく聞いてみると、両親が建築業を生業にしていたらしく、自分でも設計から着工まで指示出来るそうだ。
「へぇ〜、凄いじゃないか。でも、今回は俺がするよ。手伝いも不要さ。でも、その代わりに建物を1つ建ててくれないか? 普通の作り方を見たいし、期間も知りたいんだ」
「分かりました。でも、ホントに手伝わなくて良いんですか?」
「大丈夫。最低限の備品配置までやって、30分かな?」
「はぁ?」
ガーネットに、「何言ってんだ、この人」って顔をされた。彼女は、見たこと無いから知らないのも無理は無い。
「とりあえず、備品の要望を聞こうか? 大抵の無茶は、聞いてやれるぞ。遠慮する事はないからな」
彼女たちに聞いてみたけど、要望はあまり出て来なかった。リリスたちの時もそうだが、最初は遠慮が有るのだろう。
何、直ぐにお強請りする様になるさ。家族の一員になったのだもの。
こうして、妖精の箱庭に8人の少女が加わった。
女性比率の増加により、男性の肩身が狭くなってきた。そっちの気は全くないけど、男性が増えないかな?と思う冬の日だった。




