これで朝チュンは、何回目だろう?
ダンジョンから帰った翌日。
チュンチュンチュンという小鳥の囀り、射し込む陽光の温かさを受けて、自室で目を覚ました。ダンジョンから帰って来た事を実感出来る。
しかも、素晴らしく、スッキリして……。
「んっ!?」
部屋を見渡して思考が停止した。いつも使うベッドに、ダンジョンで使ったベッドが隣接されている。
「んんっ!!?」
裸のアイリスやマリーが、寝ているのは分かる。いつもの事だ。
しかし、追加で裸の少女たちが寝ている訳で……。
「おかしい。記憶がねぇ……」
マジで記憶がねぇんだけど!? というか、いつ寝たんだ?
ぼんやりとだが覚えている最後の記憶は……。
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「初のダンジョン踏破を祝して乾杯!」
『乾杯!』
「いや〜、儲かったな!」
「これだけ有れば、数年は遊んで暮せるぜ!」
なんと聞いて驚け、アイテムの買取り額は、端数を省いて白金貨800枚なのだ! 分かり辛いと思うから変換すると80億円!
参加した8人で分けるから1人白金貨100枚、約10億円!
最短ルートで攻略したから、予定より稼ぎが減ったとはいえ、十分な稼ぎだ。
「防具も新調出来て良かったわ〜♪」
「ですね! これ着心地が最高です!」
セレナとベルは、防具が一新された。当然、それらの等級は幻想級。特に、ベルの白ローブは、俺のコートの対に位置するレベルのモノだ。
「アイリスも何か武器か防具を貰わなくて良かったのか?」
「う〜ん、別に武器は間に合ってるし、このマジックバックを貰ったから良いや」
「遠慮しなくて良いのに。でも、それが有れば、アイテムボックス代わりになるな」
「そうだね。あと、時間停止じゃ無いけど。時間遅延がついてたよ」
「時間遅延か……」
「何か使えないかな? 料理とかは?」
「そうだね。野外で調理する時、デザートを冷やしたりは出来ると思うよ」
「おお、次のキャンプが楽しみだよ」
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「そうそう、宴会をしたんだった」
遊びに来たガイアス爺さんに、留守を任せたルイさんも参加して、どんちゃん騒ぎしたんだよ。
報酬額も良かったし、ドロップ品も良かったから皆で分配し、自慢しあった。
気分も浮かれていたから、アイテムボックスを開いて、酒を出しまくった。
「そういえば、秘蔵の酒も出したんだった。どうしてだっけ? え〜っと……」
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皆、酒をガンガン呑んでるのに、1人静かに酒を呑んでいるシオンを見掛けたので声を掛けた。
「シオンは、相変わらずの呑み方だな」
「カトレアみたいな呑み方がおかしいだけ」
カトレアは、いつもの樽一気飲みをやっている。それを煽る竜種組。妊婦さんに酒って不味くなかったか?
「よし、なら、シオンに俺の秘蔵をプレゼントしよう」
「プレゼント?」
「コレだ」
グラスに秘蔵の酒をついで渡す。これは、ラファエラさんたちが隠れ里で作っている稀少な酒なのだ。
「……そうやって酔わせて襲うのね。子種をプレゼントとばかりに」
「しねぇよ!? シオンの中で俺の評価酷くない!?」
「ジョーダン。もし、そうなったら、他の娘には悪いけど、息子を噛み切る」
「怖いわ!?」
冗談だろうけど、真顔で言われると冗談に聞こえない。
「でも、くれるなら欲しいモノがある。ユーリ……」
「えっ?」
実は、シオンも俺に気が……。
「ユーリのアイテムボックスの中身。本人は要らない。後、この酒を全部頂戴」
「だろうと思ったよ!こんちくしょう!!そして、全部はやらん!」
「安心してこれ以上、評価が下がる事はないから」
「それは、最低まで下がってるからですか!? そして、酒を引っ張る力強いですね!!」
「狙った獲物は逃さない。弓兵だけに、弓兵だけに。ここ重要」
「あの〜っ、シオンさん? 酔ってます? 酔ってますよね?」
さっきからめっちゃ喋りかけてくるし、これ完全に酔ってるだろ。エルフの酒のせいか? それとも、ダンジョン攻略で浮かれてるのか?
「そうかも。……だから、こんな事もする」
シオンは、立ち上がり、自分のスカートを掴んで、ぎりぎりまでたくし上げるとひらひらして誘惑する。
クソッ! ひらひらしてるのに見えそうで見えない!!
「私の持つ秘密知りたくない? 知りたいなら……」
「知りたいなら?」
「……白金貨500枚積んで。報酬の5倍」
「積めば良いのか? 有るぞ、ほれ」
「……素直に教えると思う?」
「思わない」
「それに、ユーリは、そういうの間に合ってるでしょ?」
「う〜ん、シオンなら当然イケる自信がある!」
「アイリスか、マリーに告げ口してくる」
「酒を全部あげるので、勘弁して下さい!!」
酒の入った壺をシオンに押し付けた。
「……それで良い」
「気に入ったのか。その酒」
「懐かしい匂いと味がする」
「そりゃあ、そうだ。エルフ秘蔵の酒だってよ。隠れ里で貰った」
「通りで……。所で、この酒がどういう酒か知ってるの?」
「うん? 稀少というだけじゃないのか?」
「エルフの女の子にプロポーズする時に出す酒。合意なら相手の娘が酒を飲む」
「ぶっ!?」
シオンの言葉で酒を吹いてしまった。綺麗な霧になったわ。
「勿体無い」
「シオン! だから、さっきの行動だったのか!?」
「さぁ、どうでしょう。ご想像にお任せするよ」
マジか!? ホントだったら、シオンの気持ちを無下にした事になるぞ!?
「ちなみに、白金貨じゃないけど酒を貰ったから秘密を1つ。セレナやベルに手を出す気があるなら、押し倒せば大丈夫。セレナは、結婚願望あるし、ベルは、貴方に憧れているのよ」
「……その秘密は、酔いのせいで口が滑った事にしておくよ」
「……そうね。今回は、ただ、酒を楽しんだ事にしましょうか(……軽く弄るつもりだったのに、ドキドキする。魅了でも使ってるのかしら?)」
シオンは、最後に何か言ってた気するが、独り言らしく小さくて聞こえなかった。
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そうそう、シオンと妙な空気になったんだった。って、そっちの件じゃねぇ! この娘たちの件だよ!
「思い出せ、思い出せ……」
そう、そうだ。確か、部屋の隅にいたから声をかけたんだ。
まだ、ここに来て数日しか経ってないから落ち着かない様だったし。
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「どうした? 久しぶりの酒だろ? 好きに呑んで良いんだぞ」
「あっ、ユーリ様。この度は」
『ありがとうございました』
助けた娘達から頭を下げられた。
「良いって、君たちの運が良かっただけだしな。それより、まだ、名前を聞いていなかったな。それに、自己紹介してなかった。色々聞いたと思うけど、俺は、ユーリ・シズ。ここの主で、マレビトだよ」
「はい、フィーネさんやリリィさんに色々聞きました。私は、宝石族のガーネットと申します」
「妹のスファレだよ」
「同じ宝石族のマリンです」
「角族のクレアです。あっ、あのっ、リリィさんに聞きました。夜の事なら任せて下さい!しっかりお掃除してみせます!」
リリィ……君は、一体何を話したんだい?
そして、クレア。お掃除って、屋敷の事だよね?一瞬、リリィのジェスチャーを思い出したけど、そっちじゃないよね?
「ボクは、獣人族のモカだよ。怖いけど……ボクも年齢的に出来るから良いよ」
そうか……うちにいないボクっ子が増えたのか……。しかも、本人が良いって言ってる訳で……アイリスと相談して貰おう。
「自己紹介が終わった所で、いつから石化していたんだ? 数年どころじゃないだろ? それと他にも居たのか?」
「先程話した竜王様の記憶によると、襲われた私たちの村があったのは、800年程前だそうです」
「私が石化した時には、既にガーネットたちがいました」
「ボクの時は、ガーネットたちはいなかったな。後で、合流したのかな?それと他に3人いたよ。手足を石化して食べられていたから、もう死んでるかもしれないけど」
「ガーゴイルに遭遇した時、既に君たちの手足なかったよ。その状態で取り込まれていたから、まだその子たちも石化しているかも……」
ギンカを連れて調べに行った方が、良いかもしれないな。
「さて、事情は分かった。帰る場所が、無いだろう? ここに住まないか? その代わりに仕事して貰うけど。それとも街が良いか? 街なら知り合いを紹介してあげるよ」
ガーネットたちは、お互いの顔を見合わせて、頷いた。
「ユーリ様の奥さんたちにも同じ事を問われました。ユーリ様も同じ事を聞くと思うからと。それから話し合って決めました。私たちをよろしくお願いします」
「任せろ。助けたからには、最後まで面倒見てやるよ」
『ありがとうございます!』
「ユ〜〜リ〜〜」
「おふっ」
アイリスが背中から覆いかぶさってきた。
「今からしよう!もう、溜まったよね? ダンジョンに数日籠もって出来なかったもんね!!」
ガーネットたちの前でアイリスから夜のお誘いをされた。酒の匂いがするから酔っているのだろう。
「そうですよ!やりましょう!」
「かふっ!?」
横からマリーに抱き付かれて、彼女からも夜のお誘いを受けた。
「アイリスと2日も籠もってやったんですよね?私にもその分をやるべきです!」
マリーからも酒の匂いがする。珍しくかなり呑んだのだろう。この酔っ払い共めっ!
さて、2人を抱えて部屋に連れ込むか。
「あの〜……ユーリ様……」
「うん? 何?」
「私たちも……何かしらの証が欲しいのです」
「何? 混ざりたいの? 良いよ良いよ!」
「ああ、何かしらの役割が欲しいのですね。ここにいて良い理由としての。なら、一緒に行きましょう!」
彼女たちは、コクコクと頷いている。そして、アイリスとマリーが許可を出したので、参加出来る事になった。
「よし、なら、行くか。あっ、酒も持って行こう。呑みながらやろうよ」
人数が増えたのでベッドを追加。各種魔法も発動完了。色々な媚薬関連も設置完了。後は、やるだけだ!
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「思い出した……起きて記憶なかったの、俺のせいじゃん!?」
という事は、彼女たちにも手を出した訳だ。酒を呑みながらやったから多分むちゃくちゃしたんだろう。記憶が飛ぶくらいだし。
残念だ。非常に残念だ。触れた記憶も全然ない。
しかし、節操なしというか……、色狂いというか……。
「諦めよ」
俺は、考えるのを止めた。考えれば、考える程に、自分が最低だと思えて来るからな。
そういうのは考えず、女の子の事だけ考えて楽しむとしよう。




