漢たちの相談会
「え〜っ、第4回『漢だらけの相談会』開始します」
「すみません、ユーリ様。その名前変えませんか?」
最初に声を挙げたのは、エルフのロギアだ。そういえば、彼ともう一人のエルフ、ロメオは、今回からの参加だった。
「ロギア。普通なら誰だって、そう思うよな。でも……」
「それで、2回も会議が潰れてるんですよね……」
第1回から参加しているグレイは、その時の状況をよく知っている。
「俺にネーミングセンスがないばっかりに……」
「それを言うなら自分もっすよ……」
以前、皆で考えた結果が『漢は皆、全員集合!』。意味が分からん。皆も全員も一緒だろが。そんな感じだから、中止になった。
「とりあえず、流してくれ。良いコメでも来たら、採用するから」
「コメとは?」
「あれ? 今、俺は何か喋ったっけ?」
なんか、今、メタ発言した様な気もしなくはないが……気のせいか。
「では、議題に入りま〜す。まずは、女の子増え過ぎじゃねぇ? 目の保養になるから良いけど」
「ユーリ様。それを言ったら嫁に殺されるんですけど」
「右に同じく」
「というか、ほとんどユーリ様のお嫁さんですよね?」
「おうよ。毎日、頑張ってるぜ!」
「……ユーリ様に問題があるだけでは?」
「ユーリ様の病気だから仕方ないですよ」
「おいおい、グレイ。病気ってなんだよ。ちょっと遠出をしたら、女の子が増えるだけだろ?」
「まず、そこがおかしいっすからね」
アイリスにも言われたな。まぁ、増えるものは、仕方ない。寛大な心で受け入れよう。野郎が増えるより女の子が増える方が、良いだろ!
あれ? なんか、クズだって聞こえた気が……気のせいか。
「とりあえず、それは、置いといて。女の子が増えるのは、良い事だが、男女比がえげつない事になってるんだよね」
赤ちゃんを抜いた常時いる子で男女比は、7 対 23。
「それ、僕たちも入ってません?」
「当然、入れてるぜ。べティ」
一応、赤ちゃんの従者や許嫁だけど、屋敷に常時居るので計算に入れた。
「私たちもカウントされてるんですけど……」
「うんうん」
「えっ、ロギアたちは定住じゃないの?」
リリスたちが妊娠したから、警備強化の為に、エルフの里から雇用してる訳だが、定住すると思ってた。最近、かなり馴染んでるみたいだったし。
「まだ、保留でお願いします」
「同じく」
「了解。決まったら、グレイたちみたいに家建てるからな」
保留という事は、定住も視野に入れてるって事だな。ここを気に入ってくれたのか。嬉しい事だ。
「そういえば、グレイたちの家は、その後どう?」
「快適ですよ。しかし、強いて言うなら、寝室に暖房器具が欲しいです」
「確かに。基本、屋敷か畑なので、そこまで気になっていませんが、寝る時に寒いのは辛いですね」
「それ以外が快適な分、余計にそう感じます」
彼らの家の暖房器具は、暖炉だけだったな。夏に、クーラーを備えたけど、エアコンじゃないから暖房は出ない。
「寒いと奥さんを誘い易いよ。お互いに温め合おうって」
「ユーリ様と違い。嫁は、1人しかいないので、何時でも抱けます」
「えっ、俺も気にせずやってるよ? いきなり部屋に引きずり込んだりして」
『………』
何故か、全員から引かれた。おかしい、変な事を言っただろうか?
「そもそも、寒過ぎて、やる事がやれません」
「よし、直ぐに作ってやろう。というか、手伝え」
「「「はい」」」
やる事がやれないのは不味いな。夫婦険悪になってしまう。話し合いの後、急ピッチで作製し、彼らの夜は、快適になった。
「それで、ユーリ様の望みは何ですか?」
エルドラが単刀直入に聞いてきた。無駄話が多いし、早く話を終わらせたいのだろうか?
「男の子を増やさねぇ? 後、2人程」
「良いと思いますけど、フリーの子を連れて来たら、ユーリ様の嫁に影響が出ますよ」
「それは嫌だな〜。でも、新しく来たエルフたちなら良いよ。あの娘たちは……その……なんと言うか……」
「大丈夫です、ユーリ様!事情は、理解していますから!!」
「気を強く持って下さい!エルフの女性がどういうものか、既に知っていたんでしょ!!」
ロギアとロメオに励まされた。彼らも女エルフの実情を、よく理解してるんだろうな。数少ない男エルフだし。
男エルフの筆下ろしは、早い者勝ちで近所か親戚のお姉さんが食らうって聞いたからな。彼らにも色々あったんだろう。
……来年、産まれてくる赤ちゃんが男エルフだったらどうしよう。
というか、女エルフでも同じか。子供の性教育は、親の務めってリリスたちに言われたし。1世代くらいなら大丈夫って、食われかねん。赤ちゃんの未来が心配だ。今、4人も居るし。
「それで、増やすのは賛成ですが、何処から呼ぶんですか?」
「エルフの里とか?」
「止めて下さい。男エルフは喜びますが、女エルフが他の男を何時も以上に襲います」
「それか、他の女エルフがこっちに来ますよ」
「よし、これ以上、平穏を乱さない様に、エルフの里から引き抜くのは止めておこう」
さて、何処から呼ぶべきか? 急ぎではないが、増えたら力仕事も分散出来て良いと思うんだよな。
「それでしたら、森から悪魔族を呼んで来れば良いですよ」
「悪魔族ねぇ……。ダフネ、気配を消して、普通に参加するの止めてくれませんかね?」
「消しておりませんが?」
いや、まぁ、分かっているんだよ。ただ、自然体過ぎて気付かないんだよな。
「それで、ダフネのお姉さん。悪魔族ってのは?」
意外にもライドがその話に食い付いた。俺も悪魔族は、気になるな。昔、タナトス様が言っていた亜人とは、その子らの事だと思うし。
「ダフネ。その話、詳しく教えて」
「昔、悪魔狩りにあった子たちですね。大体、男女比は、6 対 4くらいですよ。今、カリーナの森でひっそりと暮らしていますよ。生活も困窮しているので、呼べば来るのでは?」
「悪魔狩りって?」
「ユーリ様、知らないんですか? 薬学とか鍛冶とか色々知ってるのに?」
「歴史と地理は、苦手なんだよ。誰か教えてくれないか?」
「悪魔狩りってのはですね。魔物のデーモンに似ているってだけで、人間に迫害された歴史ですよ。昔、亜人と魔物との区別が曖昧でしたからね。詳しい話をするなら、特に、女性が犠牲になったそうです。淫魔とか言われて。だから、生存している悪魔族は、男性の方が割りかし多いらしいと聞いています」
ロギアが説明してくれた。さすがは、エルフ。博識だ。そして、話を聞くに、魔女狩りみたいなものだったのだろう。
「今は、どうなの?」
「今じゃ、誰もが違うと知ってます。それに、竜王国は多種族国家ですから気にしませんよ」
「それもそうか。所で、ダフネ。妙に詳しいけど、何で?」
「トレミーたちと交流があった様です。私もこの前、会って来ました」
「いつの間にか、そんな交流していたのね」
ダフネは、俺の知らない所で色々してるな。そのせいか、色々見ていて、詳しいときた。
「はい。ですので、伝言なら伝えられますよ」
「だったら、希望としては住んで欲しいけど、まずは、気が向いたら見学においでと伝えて。こっちに、敵意は一切ないからとも」
そうだ。この森に住んでいるのなら、危険と隣合わせじゃないか。アレを渡して貰う。
「後、これを渡して置いて」
「コレは?」
「俺の手造り。登録した人物を召喚するマジックアイテム。現在の登録は、俺だから何かあったら呼んでくれとも伝えてくれ」
「分かりました。後で、アイテムと一緒に伝えて置きます」
「よろしく〜」
ダフネは、部屋から出て行った。今から行くのかな?
「議題があっさり解決しましたね」
「そうだな。だから、次に移ろうか」
「まだ、やるんですか?」
「嫌なら参加しなくても良いぞ。今から話すのは、君たち用に武器を作ったのでいらないかという提案なんーー」
「さぁ、話し合いを続けましょう」
男だから新しい武器には、目が無いよね。とりあえず、用意した武器をアイテムボックスから全部出そう。
「まずは、どの武器が良いか見よう。右から順に、片手剣、双剣、ロングソード、太刀、槍、ハルバード、弓だ。どれが良い?」
説明の時、ハルバードを槍とは別で紹介した。今回作成したのは、斧槍の名に相応するモノが出来たからだ。
「やべぇ、悩む」
「どれも凄ぇ、完成度ですね。等級は、どれなんです?」
「いつも俺が作るのと変わらないよ」
「特殊級以上という事ですか……」
基本、作る物は、伝説級なのだけど、太刀や日本刀等を作ろうとすると特殊級になる。技量が追いついていないからかな?
「さぁ、選ぶがよい!俺の作品だ!あっ、ちなみに、被ったら新しく作るね」
「それじゃあ、遠慮なく選ばせて貰います」
グレイが最初に手に取ったのを見て、皆も次々に手に取り出した。色々確認しながら、重量確認の為、離れて素振りをする者も出始めた。
「よし、決まった様だな」
10分程したら、皆欲しい武器が決まった。
グレイは、双剣。リリスたちに身軽さを活かした戦いかたを薦められていたそうだ。
ライドは、無難に片手剣。一番使い慣れたモノが良い様だ。
エルドラも同じだな。
ベティは、ハルバード。突いて良し、薙ぎ払って良しで使いやすく、体型的にも重量的にも合うそうだ。
「というか、竜種に武器っているの?」
「竜体だと、被害が拡大しますので、人型での戦闘が主なんです。素手でも十分やれますが、武器があるとやはり違うんです」
「なるほど」
そして、ロギアは、弓。ロメオは、双剣だった。エルフの典型的な武装だな。やはり、皆使い慣れたのが良いのだろう。
ロングソードと太刀、槍が残った。どうしよう?
溶かすのも勿体無いしな。誰かにプレゼントするか?
後日、ロングソードは、クラウスの元へ。彼には、色々想う所があるが、使い手として彼くらいしか思い付かなかった。
槍は……ミズキの武器になった。小さい割に槍の扱いが上手い。
「うふふっ、この突き刺す感覚がたまりません」
なんか、怖いのでダメって言えなくなった。
太刀は、素直にアイテムボックスへ。プレゼントとしては、あげたく無かった。
とりあえず、これでうちの警備は、大丈夫だろう。でも、訓練による怪我が増えたのは、言うまでもない。




