コタツに入って後日談
コタツって良いよな。温かくて、力が抜けて、寝たくなる。
寝たらダメだけど。風邪引くからね。
しかし、自分で作ったコタツにしては、なかなかだ。
熱源は、刻印により作成した魔導具で確保。クーラー作った時と同じで、常時発熱している魔導具を断熱板で塞ぎ、それを少しずつ開放する事で温度調整する。
という訳で、アイリスと一瞬に寄り添って浸り中。
「ねぇ、ユーリ。聞きたい事があるの」
「なぁ〜に、アイリス」
コタツの影響でだらけきっているから、会話もゆっくりだ。
「ユーリが何処かに出かけるとさ」
「出かけると」
「うちに女の娘が増えるのは、どういう訳?」
「………」
俺のだらけきっていた思考が、アイリスの言葉で、一気に正気へと戻ったわ。
たぶん、ダフネとエフィメラの事を言ってるんだと思う。前回の一件で引き取ったから。
「別に責めてる訳じゃないよ。強いオスの所にメスが集まるのは、自然だし。推奨しちゃった私たちにも責任があると思うから」
「……ただ、皆がチョロインさんだっただけでは?それか、距離関係なしてあっちこっち行ってるから、訳有りの娘に遭遇しやすいだけか?」
「それも、そっか。大抵、私も一緒だしね」
「それに、アイリスの知らない内に連れて来た娘って、全員結婚してるよ」
ティアたちが、アイリスに言う前に連れて来た組だ。
「ホントだ」
「だろ。それに、人が増えるときには、正妻のアイリスにちゃんと相談してるよ」
「うふふ、ありがとう」
俺たちは、イチャイチャしながらコタツを楽しんだ。
アイリスの言葉で、パラダイスロスト騒ぎの事を思い出したので、後日談をしよう。
まず、リリィの容疑だが、エフィメラの証言により無事晴れた。元々、そこまで疑われていた訳では無いので、あっさりしたものだ。
次に、エフィメラを含む教団関係者の扱いだが、エフィメラを除く全員の禁固刑が確定した。
エフィメラは、予想通り脅されていた。だから、特に罪を問われる事にはならなかったが、コーリス伯爵の従者はクビになった。
彼女は、稼ぎで兄弟を養っていたらしく、クビを聞いて泣きながら絶望していた。だから、可哀想になってので、ティアたちと同じ条件で雇う事にした。
しかし、彼女の薬物依存は重度のモノ。エリクサー劣化版で、肉体は完治したが、精神に刻まれた快楽だけは抜けきれなかった様だ。
だから、代わりになる快楽を用意した。今は、活き活きしてメイドしているから問題ないだろう。
アイリスをハート目で見詰めて、『お姉様』と言ってるから上手くいったんだろう。アイリスに丸投げしたから、俺は詳しくは知らねぇ。
でも、何をしたかは、予想つくわ。たぶん、美味しく色々食べたんだろう。彼女、普通の人間だから程々にね。
「そういえば、カリンの香水って何だったの?必要なくない?」
「教団の幹部が全員使ってる香水だったんだ。それを使ってたから、ネビルたちは信頼したみたいなんだよ」
教団を潰して帰る時に、ギンカが香水を持ってきた。
何でも、「教主や神官たちからカリンの匂いがしたので、探してみました」という訳で探したら、小部屋の机に置かれていたそうだ。
しかも、この香水は特別製だが、騎士たちが使えたのは、検挙した幹部から押収した物を拝借したらしい。
というか、ネビルたちから別の麻薬も押収したのだから、それを理由に攻めろよ。
商人探しで無駄足になったし、無駄金も結構使ったので、俺の中には疲れだけが残った。
お金で情報収集するのが早いからそうしたんだけど、まともに練習するべきかな?
とりあえず、アイスプラントを10株程売って補填しよう。高額商品なので、あまり買い取って貰えないけど、それくらいなら大丈夫だろ。
「全然、減らないんだよな。また、ルイさんの所に大量に持って行こうかな?」
1回、ルイさんに畑の9割程をおすそわけとして渡し、減らしたけど、もう畑は元の状態に戻ってる。
「アイスプラントの件?」
「そうそう。また、畑が溢れてて」
ルイさんによると天使たちに超好評だったらしい。それは、どのくらいかというと販売名が『天使の雫』ってなる位に好評なのだ。
「ダフネが畑で食べてたよ」
「ダフネには、栽培の管理と調整を兼ねて、作物の多い奴を順に食べて貰ってるんだよ。それが代わりになって、魔力消費も無いし、大地からの栄養吸収も無くなるから」
実は、コーリス伯爵の領地が不作になったのは、オルクスのせいでなく、ダフネのせいだった。
そもそも、ダフネたち木の妖精は、魔力の燃費が一番悪いらしい。オルクスの魔力だけでは、やっていけないので大地から栄養と魔力を吸い上げていたという訳だ。いや、結局、オルクスのせいか。
「というか、腕輪を着けただけで、契約者にされるとは思わなかった」
「手に持って置くのが面倒って言って腕に通したら、ダフネが復活して焦ったね」
「襲われるかと思った」
「そうそう、襲いませんよ。一度やられた相手なんて」
「「………」」
「どうしました?」
ダフネの奴、魔力感知をしてなかったとはいえ、気配なさ過ぎだろ。いや、自然過ぎるのか。
「気配が無さ過ぎて、気付かなかったんだよ」
「ダフネ。……心臓に悪い」
「そうですか? 普通に歩いて来たのですけど」
「それで、ダフネから見た畑の様子はどうだ?」
「来年もきっと良い作物が取れるでしょう」
「おっ、ダフネのお墨付きだ。木の精霊は、植物の専門家だから信頼出来るわ。収穫が待ち遠しいよ」
「しかし、私だけでは全て見れないので」
「見れないので?」
「彼女たちを呼んで来ました」
「「はぁあ!?」」
ダフネが指し示した先に、彼女に似ているが本質が違う、本物ドライアドが2人いた。ダフネは、似てるだけで精霊だし。
「いつ、連れてきたの!」
「というか、何処から連れて来たんだよ!」
俺たちは、また、気付いていなかった。常時、魔力感知するべきだろうか?
「この集落の外です。普通に生活してましたよ」
「トレミーです」
「トレアです」
「この集落に住ませてはいけませんか? 報酬は、作物の一部で良いそうなので」
ドライアドは、亜人ではなく、魔物の分類だ。トレントと違い、人を襲わない。襲わないけど、怒れば、普通に攻撃するけど。
「別にいいけど、ドライアドって、原木からあまり動けないんじゃ?」
「木ごと移せば、大丈夫です」
誰がやるんだろう。たぶん、俺なんだろうけど。それとも、ダフネがするのかな?
「誰がするの?」
「自分たちの意思で、移動出来るので大丈夫です。それでは、畑の側に移動させます」
「分かった。許可するよ。2人共、よろしくね」
後日、大木の根がうねりながら行進するという奇妙な現象を目撃する事になった。それが4本。……増えてねぇ?
「トリーです」
「トリスです」
彼女たちは、四姉妹だった。畑の四方に立ち見張るとの事。その上、さらに、木に住まう住人も一緒にやってきた。
「パドラよ。勘違いしないでよね!トリスに付いて来ただけだから!この子に何かあったら刺すわよ!」
この娘、人語を解しているけど、人じゃない。見た目は、蜂のコスプレをした幼女なんだだけど、鑑定すると。
名称:パドラ
種族:クイーンべスピナ
危険度:S
説明:蜂型の魔物。毒針には、複数の毒を持ち、それを使って戦う。また、多数の軍隊蜂を使役する。
蜂のクリーチャー娘ですね。分かりました。もう、魔物の人型をクリーチャーと呼ぶことにしよう。間違ってないし、別に構わないだろ?
「あっ、蜂の魔物だ。その子たち、食べると甘くて美味しいんだよ」
「ひぃいいーー!!」
アイリスに遭遇したら青褪めて、俺の影に隠れた。
「おい、さっきの強気はどうしたよ?」
「謝る!謝るから、彼女を近付けさせないで!」
「俺の奥さんだから無理じゃねぇ?」
「蜂蜜!私の集めてる蜂蜜を分けるわ!だから、極力近付けさせないで!彼女に仲間をけしかけて、全滅させられてるのよ!」
「そうなのアイリス?」
「どの件か、覚えてない。その子達、テリトリーに入っただけで襲ってくるもん」
「まぁ、蜂蜜くれるなら畑の端に住んでもらって、なるべく近付かない様にさせるよ」
「お願いよ!お願いだからね!」
という訳で、人間1人、精霊1人、クリーチャー娘5人増えたよ。そろそろ、ここもカオスに突入だね。




