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さて、一気に決着をつけよう

「私の方の調査でも、教団のパラダイスロスト製造は、確実なのが分かりました。また、製造場所の確認も終わってます」


「マリー、流石だね」


「マジか。俺たちが無駄足踏んでる間に……後で、ご褒美上げるよ」


「ホントですか? ご褒美期待してますね。それでは、続けます。まずは、製造に関してーー」


 ハムハイン教が、パラダイスロストを製造出来るのは、メイドのエフィメラが、コーリス伯爵の本とクロバラ草を用意したからだ。


 また、エフィメラの部屋には、日記があり「薬物量産に必要な水源が、担保にした領地内にある」と書かれていた事から製造場所が特定出来たらしい。


 エフィメラ自身は、パラダイスロストを危険視しており、量産には消極的なようだが、渋々従った様だ。


 彼女自身も薬物依存者の為、薬を盾に利用されたと思われる。彼女の部屋からは、複数の薬物キットも見つかったそうだ。


 彼女にハムハイン教が近付いたのも、ストックされたパラダイスロストが減少したので、製造したかったからだと思われる。


「という訳で、担保の領地を調べたら、ハムハイン教の教会へ水源を引き入れているのを確認しました」


 調査した結果、地下に工場を発見。


 内部では、薬物投与されて言いなりになった人間や亜人が、働かされていた。そこには、行方不明のエフィメラもおり、無理やり働かされていたらしい。


 ついでに、パラダイスロストのサンプルも入手。疑似証拠でなく、本物。ホント、俺たちの行動が無駄になったわ。


「どうやって、そこまで調べたの?」


「企業秘密です♪」


 マリーに凄く可愛く言われた。これは、たぶん聞き出せない。


「後、コーリス伯爵の領地経営が作物不作により上手くいってなかった理由も分かりました」


 竜眼による鑑定の結果、土地全体に木精霊の影響を確認したそうだ。

 理由は、土地の栄養を木精霊が吸収しているからだと。


 しかも、その規模から木の上位精霊が関与していると思われる。力も数年かけて吸収したので強い可能性があるとの事だ。


 たぶん、制圧時に出して来るだろう。


「木の上位精霊ねぇ……」


 あの杖を借りてくるかな? もしくは、持ち主を拉致るか。


「そっちは、俺が何とかしてやるよ」


「コーリス伯爵とも約束しましたし。お願いします」


「で、団長さん。いつ、攻める? たぶん、明日にでもやるべきだと思うが」


「部隊編成して、移動もあるので明日の夜ですかね?」


「俺が、転移門(ゲート)を出すから直ぐに無理か?」


「それなら早朝には、動けそうですね」


「よし、なら、話を詰めよう」







 翌日。


「各員、転移門(ゲート)を通過した後、部隊長の指示の元、教会周辺並びに隠し通路を封鎖せよ!」


『ハッ!』


「ロイル副団長、冒険者たちと共に、内部の制圧を頼む」


「了解しました!」


 制圧作戦の詳細は、こうなっている。


 まず、転移門(ゲート)を作成して騎士団を移動させる。次に、騎士団により、教会周辺と隠し通路を封鎖。それが終わったら、俺たち冒険者とロイル副団長率いる部隊が突入する。


「という訳だから、手伝え」


「「はい!」」


 ボロボロになっているロロとイグニスは、全力で返事をした。


 昨日の内に、拉致してきた。イグニスを貸せって言ったら、抵抗したので、エリスと2人でボコボコにして連れて来た。


「私、今回ホントに役に立つのかな?」


 自信なさそうにエリスが言って来た。


「俺が教えた通りに、イグニスと連携すれば大丈夫。実証してみせただろ?」


「そうね。イグニス」


「はいぃ!!」


「アンタの実力を示す時が来たのよ。全力でぶちかましなさい」


「お任せ下さい!」


「ロロも頑張れよ。これは、リリィの容疑を晴らす為でもあるんだからな」


「ちょっと待って!それ、知らないんだけど!?」


「えっ……言わなかったっけ?」


「言えば、抵抗なんてしなかったよ!」


 知らなかったから抵抗したのか。リリィ好きだから、普通、彼女の為ならやるよな。


「そうか。写真撮るからカッコいいの撮れたら、リリィに見せるよ。だから、全力で頼む」


「任せろ!」


 ロロもイグニスも気合が充分になった。バルトたちも問題なさそうだ。それでは、作戦を開始しよう。







「敵を制圧せよ!また、拘束具を着けた者は須く保護せよ!」


『ハッ!』


「なっ、なんで、騎士団が!?」


「何処から湧いて出やがった!そんな兆候なかったぞ!!」


 電撃作戦のかいもあって、敵はかなり混乱している様だ。


「クソッ!奴隷共を人質にして時間を……」


「させないよ。武具は全て破壊させてもらう」


 ロロの言葉を受けて、敵のナイフや鎧が溶け始めた。


『あっつつ!?』


 火の精霊魔法で、溶解(フレア)武装解除(エクサルマティオ)らしい。とりあえず、カッコいいので激写しておこう。


「ユーリ。奥に、魔力の塊見つけた。人型を取ってるから木の上位精霊だと思う」


「分かった。ロイルさん、俺たちは、ボスを制圧してきます!」


「お願いします」


「兄貴!ここの奴らが、行かないように抑えて置きますんで、お気を付けて!」


「頼んだぞ」






 アイリスたちと奥に進むと祭祀服らしいものに身を包んだ男がいた。左右を白黒で分けた変な服だ。


「ハムハイン教の教主でオルクスか?」


「チッ。昨日の鼠の仲間か。やられた弔い合戦にでも来たか?」


「弔い合戦?」


「死んでなかったのか。確かに、殺った手応えは無く、転移で逃げられたらしいからな」


 コイツは、なんの事を言ってるんだ?


「まぁ、いい。アンタを拘束する」


「出来るならやるといい。出来るならね」


「火精霊魔法・火の滝」


 ドドドッと唐突に地面が割れ、根が生き物の様に襲って来た。事前に警戒していたので、イグニスが張った障壁で根は燃え尽きた。


「木の上位精霊……って、ドライアド?」


 緑の髪をした美女がそこにいた。服は身に着けておらず、要所を蔓が隠すだけのシンプルな出で立ちで、思春期の子に毒だなって感じでエロい。


「あら、同族が居るのね。しかも、忌々しいイグニスまで」


「やっぱ、ダフネかよ。相変わらず、契約者に従順なのな」


「精霊が、契約者に従順なのは当然でしょ?本来、精霊契約とはそういうものだし」


「だからって、悪事に加担して良い訳がねぇんだよ!」


「イグニス。お前、良いやつだな」


「イグニスは、良い子よ。正義感が強くて、女の子に優しいわ」


「それをボコボコにする、エリスってどうなの?」


「私は、良いのよ。私は。彼の姉みたいなものだし」


「姉じゃねぇよ!!」


「何時まで無駄口を叩いている? さっさとソイツらを殺せ、ダフネ!」


「ええ、分かったわ」


「エリス。イグニス。作戦通りに頼む」


「ok!」


「任せろ!」


「水精霊魔法・星の五月雨」


 エリスが創り出した水球から水が散弾の様にダフネに向かい飛び散る。


「エリスと言うのかしら?水の精霊では、私を倒せないわよ。それとも、主を狙っているのかしら?」


 ダフネは、オルクスの前に立ち、根で護る。その為、根と一緒に本人も傷付いているが、痛みがないのか平然と立っている。


「そう、これならどう? 水精霊魔法・乾求の摂理」


 ダフネから蒸気が立ち昇り、水分が集まってくる。


「使った水の回収ですか?」


「ただ、乾燥させているだけよ」


「乾燥? そう簡単に行え……」


 ダフネも気付いた様だ。自分の身体や根が穴だらけな事。そして、吸水出来る表面積が多い事で、乾燥が速いことに。


「乾燥した木って、よく燃えるんだよな。1回燃えて、反省しろ!火精霊魔法・煉獄の業火!」


 イグニスの業火が、ダフネを包み込む。それは、根が一瞬で炭化する程に。


「アアァッーーー!!」


 ダフネも全身が急速に燃えていく。しかし、そこは、上位精霊。燃えながらも襲ってきた。


「アブソリュートゼロ」


 燃えていたダフネは、氷の竜撃弾(ドラグニルバレット)で一瞬にして凍結。その後、彼女は、「残念です」という言葉と共に砕け散った。


 通常のダフネなら砕ける事はなく、耐えれるだろうが、超高温から超低温への温度差に身体が耐える事は出来なかった。


「なっ!? ダフネがやられただと!?ぎゃあ!?」


 一気に間合いを詰めて、足を蹴り砕いてやった。四つん這いになるオルクス。


「依代はナニ? その腕輪?」


「こっ、これは違う!」


 ダフネが復活する前に、依代を奪いたい。オルクスは、先程から大事そうに押さえていた腕輪を隠した。どうやら、それが依代らしい。


 俺は、オルクスに銃を突き付けて質問する。


「選択1、腕を斬り落とされる。選択2、素直に依代を差し出す。10数える間に、選べ。1……10」


「それ……ふぁ!?」


 オルクスは、スタンバレットをぎりぎりで避けた。


「間は!?」


「漢は、1だけ覚えておけば良いんだよ。で、どうする? このまま、撃たれるか?」


「渡します!渡しますから命だけは!」


 パンパラパ〜ン!ダフネの依代を手に入れた!


「受け取ろう」


「ふう、助かっ……ぐふっ!?」


 腕輪を受け取ってから銃で撃った。そもそも、殺す気が無かったからスタンバレットなんだが、腕輪をゲット。結果オーライだ。


「さて、引き渡して帰るか」


 オルクスを引きずって帰路に着いた。


 戻ってみるとバルトたちも決着が付いていた。縛られた奴らがゴロゴロしている。


 この施設からは、パラダイスロストとその書物も押収された。これにより、リリィの嫌疑は無事晴れた訳だ。


 面倒くさかった事件は、こうして終わった。


 余談だが、リリィの店に行ったらアンナさんがいて、壊れたイヤリングを渡された。そのイヤリングは、アイリスたちの為に作った身代わりの護符と緊急転移を付与したものだ。


 どうやら、オルクスが言っていた鼠とは、アンナさんの事なのだろう。緊急転移先をリリィの店にしてたしね。いや〜、無事に発動して良かったよ。これで、量産も出来る。

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