エルフの隠れ里
入り口で色々あったものの、エルフの隠れ里に入る事が出来た。
エルフの隠れ里は、大木をそのまま活かした造りの家が多い。木に家を建てるのではなく、中を切り抜いて家にしている。
「最初の家を思い出すな」
「あの、祠の?」
「そうそう」
「確かに、懐かしいねぇ」
あれは、俺とアイリスだけの思い出だ。今の皆がいる生活も楽しいけれど、2人だけで過ごした、あの時間はやはり特別なのだ。
「2人共、何してるの? はやく行くわよ」
「おう、直ぐ行く。……行こう、アイリス」
「うん!」
俺たちは、リリィたちを追いかけた。
リリィたちの案内で、エルフの長が居ると言われる場所に来た。他の家と同様に大木をくり抜いて作られている。ただ、他とは違い、扉の代わりにカーテンがされていた。
「会いたくないけど、呼ぶしか無いわね」
「無理しなくて良いんだぞ」
「もし、抱き着かれそうになったら押さえつけて貰えないかしら?」
「任せろ。地面にめり込ませるくらいなら簡単さ!」
もし、手を出そうとしたら手加減すると思うな。
「す〜っ……ロロ!帰って来たわよ!」
何処から来ても良いように魔力感知の精度を上げておこう。
「ハッ!グレイプニル!!」
「リリィた〜……ぐはっ!?」
魔力感知しておいて良かった。リリィの正面じゃなくて、背後から抱き着いて来やがった。
「久しぶりね、ロロ。前に抱き着くなと言わなかったかしら?」
わぁ〜お、普段のリリィからは分からない程の冷めた態度だ。
「大好きなリリィたんが帰って来たんだ!するに決まってるじゃないか!」
ロロとか言われる奴は、俺が鎖を重くしたので、地面にめり込みんでるのに良く喋る元気な奴だ。
「貴方に報告して上げるわ。私、結婚したのよ。お腹にも赤ちゃんがいるわ」
「そして、俺がその旦那だ。よろしくな」
「長。私たち三姉妹も彼の所に嫁ぎました。なお、リディアも孕んでおります」
「認めん!認めねぇよ!せっかく、前の旦那が死んだのに!!しかも、母娘で娶っただと!?」
「おうよ。俺が、彼女たちを嫁として貰いました。二度と譲る気は有りません。諦めて違う人を探せよ」
「あっ、ユーリ君。ロロには、奥さんいるわよ」
「………」
「ググッ……グボッ!?何故、重さを……!?」
重さを更に足しました。この魔法、拷問にも使えるんじゃないだろうか?
「奥さん居るのに、リリィに絡んだのか?ねぇ、死にたいの?」
俺も人の事は言えないが、それでも気に食わなかった。
「巫山戯るな!貴様を倒して別れさせてやる!」
「なぁ、リリィ。こんなのが長で良いのか?」
「ダメね。でも、この里で2番目に強かったりするのよ」
長なのに、2番目? それじゃあ、1番強い人って誰なんだろう?
「それじゃあ、1番強い人は?」
「長の奥さんで、ラファエラが1番ね」
「ラ家だからラズリさんの親戚なのか?」
「いえ、ラズリの母親ですね」
「と言う事は、ラズリさんは、長の娘? 境界の警備兵してるのに?」
「娘さんです。そして、エルフの仕事は、交代制なんですよ」
だから、警備兵をしてたのね。詳しく聞いたら、狩り、警備、採取、休みの4つを循環させているそうだ。これ、人手借りるの難しくない?
「それじゃあ、ラファエラさんに帰還の挨拶と婚姻の儀を執り行う事を連絡して来ます」
そう言って、リリスは離れた後、法衣らしい服装を着た女性を連れて帰ってきた。ラズリさんと同じ銀髪が特徴的な女性だ。彼女がラファエラさんだろうか?
「お帰り、リリィ。今回は、長かったわね」
「只今、ラファ。あれよ。色々あったのよ」
親友か、何かなのだろう。2人は、出会うなり抱き合った。
「色々ね。また、結婚した様だし。孕んだんだって?今度もハイエルフが産まれる事を祈るわ」
「安心して、産まれるのはハイエルフだと思うわ。彼の方が魔力多いもの」
「相変わらず、男選びが上手いのね。そろそろ紹介してくれない?」
「そうね。ユーリ君。私の親友で、巫女兼クズ長の奥さんしてるラファエラよ」
「また、何かやったのね。迷惑かけてごめんなさい。後で、絞めておくわ。私は、エルフの巫女をしているラファエラよ」
「リリィたちの旦那になりました。ユーリ・シズです。よろしく」
手を差し出されたので、ラファエラと握手した。その瞬間、彼女の目が見開いた。
「まぁ!貴方、『マレビト』なの?」
マレビトとは、異世界から来た人を指す言葉だ。神様たちが招く事でしか来れないので、そう呼ばれているそうだ。実は、過去にも数人いたそうだ。誰も彼も歴史書に名を残す程の偉人になっている。
この前、マリーのアイテムを使って、俺の正体を皆に説明した。拒絶されたらどうしようと思ったが、先人たちのおかげでむしろ喜ばれた。
「俺、名乗ったっけ?」
「それは、エルフの巫女が持つスキルのおかげよ。意識して触れると相手の情報を断片的に見れるの」
アイリスの共有能力みたいなものか? でも、それ以上かもしれない。
「それは、凄いですね。それと初めて他人からマレビトって言われましたよ」
「スキルが無ければ分からなかったわ。リリィの目に狂いは無いのね」
「どういたしまして♪」
「それじゃあ、行きましょう。婚姻の儀を行う会場に。既に、通達を出したから皆集まって来ているわ。ロロは、後で来てね」
「僕の拘束を解いてはくれないのね……」
「自業自得でしょ?少ししたら解除してあげて」
「はいよ」
俺たちは、会場に移動した。会場は、野外劇場の様だ。すり鉢状に席が並んでいる。ロロは、フル装備に切り替えて遅れてやって来た。
「で、何故、俺だけステージ?」
リリィたちは、席に付いている。俺だけ、ステージ上に呼ばれた。儀式と言うから何かするか?さっき、言っていたやつか?
「それでは、婚姻の儀バトルロワイヤルを開始します!」
「予想通りかよ!」
俺の動揺を他所に、話は進む。
「彼は、ユーリ・シズ。リリアーヌ母娘を全員娶った男です。彼の実力を、その目で見ましょう。各自、階位が低い者から順に来て下さい」
「あの〜、百歩譲って戦うのは良いんですけど、何人と?」
「対象は、10歳以上だから私も入れて196人ね」
「多過ぎだろ!?聞いて無いんですけど!?」
「途中、リタイア有りよ。もし、したらそこで格付けが終わるからリリィたちの為を思うなら頑張りなさい」
そういえば、エルフって格付けをしたがる種族だった。
「それじゃあ、始めるわよ」
あっという間に始まってしまった。武器も魔法も使用は自由。矢やら魔法やら沢山飛んでくる。せめてもの救いは、1対1 な事だろう。
「こっ、降参します!」
今、150人目が終わり。今回も覚えたての魔法で決着がついた。
相手に魔法を使われると勉強になる。魔法は、イメージ。一度見る事で、イメージし易いから中級くらいなら直ぐに使える様になった。威力を高めた同じ魔法を使って反撃すると何故か直ぐに降参してくれた。
しかし、魔法で決着がつくなら、まだ良い方だ。武器を使う者たちが厄介なのだ。理由は、追い詰めても降参してくれない。
「降参しない?」
「まだ、負けてーーぐはっ!?」
「よし、気を失ったな」
ルール上、場外負けは存在しない。だから、気絶させる等の行動不能にするしかないのだ。おかげで、腹部を殴って気絶させるのが上手くなった。あれ、実際にやると難しいはずなのに、10人殴った時点で確実にこなせる様になっちゃったよ。
「ユーリさん。よろしくお願いします」
「ああ、ラズリさんか。よろしく。全力で来て良いよ。まだ、余裕有るから」
これは、事実なのだ。今の所、剣も銃も使っていないのだ。魔法には、同じ魔法で、飛び道具を含めた武器には、素手で相手している。
日頃のべディとの訓練の賜物だ。武器を使うなら、竜種並のパワーとスピードがないと相手にならん。
「くっ!」
「弓の精度と連射は、凄いけど単調だね。もっとフェイントを混ぜるとかしなきゃ当たらないよ。後、魔法は、大技に頼り過ぎ。対人戦なんだから、小技を多様した方が追い詰め易い」
俺は、戦闘しながら相手に指摘するだけの余裕がある。ラズリさんは、魔法と武器の両方を使う。しかし、個々に使うので、無駄が多い。
能力は下だが、昔戦ったヨーゼフの方が強いな。相手が弓だと、直ぐに彼を思い出してしまう。一番苦戦した相手だからかもしれないな。軽く苦笑いが漏れてしまった。
「何を笑うんですか!」
「すまん。思い出し笑いだ。それより、ラズリさん。降参しない?」
「しません!」
「そうか。仕方ない」
「きゃっ!?」
重力操作を利用した重心移動。それによりラズリさんの体制を崩し投げる。イメージとしては、隅落しに近いかな? 相手の力を利用してる訳だし。
「少し我慢してね」
「くっ……」
倒れた彼女の首に腕を回し、首を締める。1〜2分もしない内に落とせた。正しく極めると痛み無く、落とす事が出来る。野郎は殴るが、女性と子供は殴りたく無いのでこうしている。
そんな感じで、戦った結果、残り2人。ロロとラファエラさんだ。3位の人もかなり強かったし。武器を使わないと不味いかもしれないな。
まぁ、ロロには、使う気満々だったけどね!




