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カノープスで鉱石を買おう!

 転移(シフト)を使い、都市カノープスへやって来た。

 リリスは山を超えてエルフの里に行くので旅の為の重装備を背負っている。それに対してギンカは、魔獣体に装備無し。

 いや、違った。黒いチョーカーだけは付けている。


「ギンカ。そのチョーカーは、きつくないか?」


「きつく有りません。魔獣体でもサイズがピッタリです」


 黒いチョーカーは、ギンカに頼まれて作った物だ。体型に合わせて、サイズが変動するので魔獣体でも付けられる。調整するのに苦労した。

 そして、話が変わるがどうやら俺はSだったらしい。女の子にチョーカーを付けるのに抵抗があったものの意外にも興奮したのだ。

 付けた瞬間自分の所有物だって気持ちになって高揚した。

 マジであれはヤバい。なのに、コレを最低でも後1個作って渡さないといけない。渡す相手はフィーネだ。昨日、寝た時にお強請りされたから。


「では、行って来ます」


「それでは、ご主人様。夜には、戻ります」


「おう、行ってらっしゃい。気を付けてな」


 リリスとギンカが、山に入って行ったので、手を振りつつ姿が見えなくなるまで見送った。……今、ギンカが謎の発言した気がする。


「……今、夜に戻るとか言ってなかったか?」


「気のせいじゃない?」


「そうですよ。リリスの装備見ましたよね?」


 アイリスたちがそう言うのなら、気のせいなのだろう。リリスは、しっかり荷物を纏めていたしな。


「俺たちも行こう」


「「おぉーー!」」


 俺の同行者は、アイリスとマリーだけだ。アイリスは、相棒として、マリーは、カノープスの宝石を見る為に付いて来た。2人に買ってあげても良いな。金には困ってないし。

 俺たちは、いつも通りに都市の門がある検問所に移動した。しかし、通行に関して、今までとは違う点がある。


「はい、確認終了しました。通行をどうぞ」


「ありがとう♪」


 アイリスが、門番に見せたのは、白銀のカードだ。冒険者ギルドのSランクカード。俺と行動を共にしていたので、それだけの実力がある。


「問題無さそうだな」


「うん。人扱いされるのが嬉しい!」


 このカードは、アイリスの種族が魔物から魔族に変わった事によりギルさんが発行した。亜人を従魔として扱うのはマズいとの事。これによりアイリスは公式的に亜人と認められた訳だ。


「俺としても、衛兵に捕まる可能性が減って嬉しいわ」


「よく捕まってましたしね」


「あはは、未だにギンカの件で捕まるよ」


 通行の際に捕まるまでが、日常化しているのだ。理由は、大抵、奴隷もしくは幼女誘拐でだ。もう、笑い話でしかない。

 そもそも、幼女誘拐って何だよ!その時のイナホが、上目遣いで可愛いかったから抱き上げて頬ずりしただけだろ?


「とりあえず、この町の商会ギルドに寄ろう。商人を紹介して貰わないとな」


 ペンドラゴンの商会ギルドに行ってカリスさんにお願いしたら快く応じてくれた。本来ならお金を渡すべきだが、俺に儲けさせて貰っているとの事でタダになった。


 そして、和国に関する新情報。春になったら国を挙げて大規模な貿易を行うとの事だ。

 しかし、何故カリス経由でしか情報が入って来ないんだろうか。不思議で仕方ない。


「あれだな。ここも賑やかだな」


 カノープスの街は、鉱石等の採掘が盛んなだけあって、石造りの建物が多い。そんな街並みを探索すると商会ギルドに辿り着いた。ここの商会も人で賑わっている。


 俺たちは中へと入り受付で紹介状と商会カードを提示した。受付が紹介状を読むと青褪めて直ぐ様貴賓室に案内された。早急に会長を呼んで来るそうだ。


「カリスさん、紹介状になんて書いたんだろう?」


「読んでないの?」


「いや、開くべきじゃ無いかなと思って」


 受付が青褪めてたし、俺たちを危険人物ですって書かれていたりするのかな?


「おっ、お待たせしました!」


 恰幅の良いオッサンが汗をハンカチで拭いつつ大慌てで入ってきた。そして、俺たちの正面に立つと自己紹介を始めた。


「私はツブテと申します。カノープスの商会ギルドの会長をしております」


「俺はユリシーズ・ヴァーミリオンです。よろしくお願いします」


「妻のアイリスです」


「同じく妻のマリアナ・ヴァーミリオンです」


 俺が立ってお辞儀したのに釣られて、アイリスたちもお辞儀した。


「これはご丁寧にありがとうございます。ささっ、席にお付き下さい」


 皆が席に座ると話が始まった。


「商会ギルドの総会長であるカリス様からの紹介状を拝見しました。何でもミスリルを含めた色々な鉱石を買いたいとか?」


「はい、俺自身も鍛冶を行いますので各種鉱石を購入したく思っています」


「失礼ですが予算はお幾ら程ですか?」


「予算?」


 今の手持ちなら……。


「「おい……」」


 ドスのきいたアイリスとマリーの声が響く。それにつられて強大な殺気と大気中の魔力が激しくうねるのを感じた。どうやら2人は怒っている様だ。


「ひぃ!?」


 ツブテさんは椅子から転げ落ちて青褪めている。今の魔力は素人でも分かる程の強大なうねりだったからだ。


「貴方はユーリを舐めているのかな?」


「私たちの旦那を貧乏人とでも思いましたか?」


 ああ、なるほど。俺が舐められていたのか。それで2人は怒っていると。俺って一見すると金を持って無いように見えるのかな?


「2人共、落ち着いて!これくらいで、怒っちゃダメだって!この人の見る目が無くてもさ!」


「でも……」


「しかし……」


「ツブテさん。金ならあるよ。今の手持ちとしては白金貨40枚くらいだけど……足りない?」


「白金貨40枚!?」


「やっぱり足りないかな? ミスリルを手持ち籠くらい欲しいんだけど……」


「じゅ、十分足りますよ!」


「そうなの? それじゃあ紹介してくれないかな?」


「はっ、はい!!」


 ツブテさんは大急ぎで店までの詳細な地図と紹介状を用意してくれた。ついでに店までの案内人まで出してくれるそうだ。

 お陰で見知らぬ地で迷子になる事はないだろう。俺たちは案内人に連れられて商会ギルドを後にした。

 後日、商会ギルドを訪れるとツブテさんが副会長に降格していた。

 何かミスでもやらかしたのだろうか?





「こちらになります」


 案内された場所は、採掘現場の隣にある建物だった。

 中からは鉄を叩く音が聞こえてくる。ここでは採取後直ぐに加工している様だった。


「商会の者です。ゴローニャさんはいらっしゃいますか?」


 案内人さんは建物の中に入るとカウンターに座った青年に声をかけた。


「うん? ゴロ爺に用か? ちっと待ってくれないか? 多分もう直ぐ休憩に入ると思うからさ」


 青年の言う通り10分もしたら鉄を叩く音が聞こえなくなった。代わりにざわざわと話し声が聞こえてきた。


「終わったみたいだな。呼んでくるよ」


 青年は建物の奥に行くと1人のドワーフを連れて戻ってきた。


「商会なんぞが、俺に何の用だ?」


「会長よりコレを預かって来ました」


 案内人さんがゴローニャさんに紹介状を渡す。それを読みながら少し考えている。


「他の鉱石は良いがミスリルは技量が無いと無駄だぞ? 技量は有るのか? もし作った物が有れば見せてくれ。それで判断する」


「何でも良いの?」


「ああ、構わねぇ? 技量を見たいだけだからな」


「なら、コレをどうぞ」


 俺は聖錬銃をゴローニャさんに渡した。たぶん作った中では最高の一品だと思う。


「これは、幻想級(ファンタズム)じゃねぇか!?」


「「なっ!?」」


 ゴローニャさんだけでなく同行した案内人さんと青年も驚いた。


「大抵のものは伝説級(レジェンド)なんだけどね。たまには幻想級が出来るんだよ」


「ばか野郎!そんなに簡単に伝説級が出来てたまるか!!」


 何故か顔を真っ赤にして怒られたよ。まるっきり信じていないようだ。


「だったらさ剣でも造って見せるよ。工房を貸して」


「良いだろ。お主の技量を見せて貰おう」


 という訳で工房を借りて鍛冶をする事になった。部外者が鍛冶するからと人も集まって来た。少しだけ緊張する。

 まぁ、スキル任せで造るから緊張しても影響はないけどね。素材は手持ちの竜鱗でも使うとしよう。今は色々持ってるし。

 さて、それではどんな剣を造ろうか?

 剣……フラガラッハ……炎魔剣イフリート……そうだ!

 少し考えた結果、イフリートの対になる剣を造る事にした。ギルさんの鱗もある訳だし。

 それでは鍛冶開始。気分はゲームのロード中。端っこでギンカが走ってるみたいな。


「出来た」


 各種鑑定発動。完成した剣の情報を見る。


 名称:氷魔剣アブソリュート

 レア度:S

 等級:伝説級(レジェンド)

 性能:凍結効果付与。熱吸収。氷属性魔力変換吸収。自動再生。


 なんと言うことでしょう。まんまイフリートの氷版が出来たじゃ有りませんか!


「どうよ!」


『マジかよ……』


 あれ? なんか皆さん表情が引き攣ってる?


「あれ? 俺の作業に何かミスがあったか?」


「いや、そうじゃ無いんだが……」


「竜鱗使えば伝説級造れるものだっけ?」


「ばか野郎。竜鱗使ったからって伝説級になる訳じゃねよ。良くて特殊級(ユニーク)だ」


「そもそもあんな少量で造れるのかよ?」


「目の前で造って見せていただろ?それだけの技量って事さ」


 1人の発言を皮切りに周りが騒がしくなった。どうやら、職業スキルのおかげで神レベルの鍛冶師になってる様だ。まぁ、これ以外にも色々造ってるからスキルの扱いに慣れただけかもしれない。


「それで売ってくれる?」


「そういう約束だったな。アンタに技量が有るのは分かったし。売るよ」


 こうして、ゴローニャさんからミスリルを売って貰える事になった。とはいえ、ミスリルを大量に欲しい訳でも無いので予定通りの量を購入した。その他の鉱石は、大量に買ったけど。

 今回の消費額は、白金貨5枚と金貨15枚程。

 これくらいなら、1週間程で稼げるな。帰ったら販売用のポーションでも作ろう。

 鉱石を購入した後、俺たちは、カノープスでデートして屋敷に帰った。そして、その日の夜。


「その……お帰り」


「………」


「只今、帰りました。ですので、魔力供給お願いします」


 ギンカは俺の首に手を回して膝へと座ってきた。


「明日はどうするんだ?」


「今日進んだ所から移動を開始します」


「そうか……。リリス、しっかり休めよ」


「……そうします」


 リリスはショックでふらふらしながら部屋に帰って行った。次の日からはほぼ無装備に近い状態で旅を始めた。

 まぁ、ギンカとしては寒さを我慢した野宿より屋敷のベットが良いわな。転移で行き来出来る者の特権だ。

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