目が覚めると現実です
「まさか、惚れ薬の効果が伝染するとは、思わなかったわ」
「だから、使用法だけは法律で明記されているのよ」
「我が国の法律ですが、理由は知りませんでした」
夜に、俺たちは、エリスからしっかりと注意を受けた。エリスとギンカには、感謝している。2人がいなかったら、今頃、大変な事になっていたと思う。
結局、惚れ薬は、半日経って効果が切れた。
惚れ薬の効き目が切れると正常な思考に戻り、今までの行動の記憶が蘇ってきた。
「でも、後悔はない!」
過去最大級に、凄く満足した。そして、皆の本性が盛大に暴露された。淫乱。Mっ娘。所有物願望に妹願望。……ヤンデレ?まで。
それらを暴露された結果、リリィ以外は、恥ずかしさの余り、転がり回っていた。知られたくなかった様だ。
「売る時は、ちゃんと説明して売る事にするわ」
「使用法の注意を紙に書いて、付属させるといい」
「そうね。確かに、その方が安心ね」
惚れ薬は、大金貨5枚で販売し、大金貨1枚で買取りする事を2人で決めた。珍しい薬だから、10本だけ残して、後はリリィに売った。
そして、後日、リリィとリディアから告げられる。
「「妊娠しました♪」」
「「先を越されたぁあーー!!」」
妊娠検査キットの結果を見せてくれた。それにより、ハイエルフ組が天国と地獄に分かれてしまった。
「また、ハブられました!」
そういえば、リリスが絡む事があまり無いな。別に避けている訳じゃないんだけど。
「こそこそ……」
「こそこそこそ……」
はい、そこのリリア。リリィと内緒話しない。そして、ちゃっかり惚れ薬を貰わない。この、ちゃっかりさんめっ!
これ以上、妊娠した子が増えると家の維持が大変なんだよ。今回の件でフィーネ、ミズキ、エロースが妊娠した。今回の騒動が原因で、妊娠したので後悔してるか聞いたら、逆に喜んでいた。俺も安心出来た。
「私も主様の子が欲しかったです……」
イナホが、リリスたちの落ち込んだ組に参加した。アイリスとマリーを除いたメンバーの中で、一番やってるしね。女の子としても心配なのだろう。
「ねぇ、エリス。惚れ薬って私たちにも効くの?」
アイリスの疑問は、俺も気になる。今後、使う事も有るだろうし。
惚れ薬の効果は、魔物には効かないのは分かっている。なら、魔族には効かないのか?そして、マリーたち竜種には?
「効くわ。でも、竜種には効果が薄いわね。量を倍に増やせば、結果は違うけど」
さすが、エリス。上位精霊なだけあって詳しいな。
「じゃあ、使えるのね」
「あれ? アイリスさん。俺に使うつもりですか?」
「私も経験してみたいし。ユーリの変貌を見てみたい」
「………」
これ、マジで使うつもりだ。
「はい、アイリスちゃん。私からのプレゼントよ♪」
「ありがとう、リリィ」
リリィが、アイリスに惚れ薬を渡した。
……後で、部屋に結界を張っておこう。転移防止も加えて。それと解除薬も作成せねば。もしもの時に誰かが使える様に。
「アイリスさん、使う時は……」
「当然、イナホちゃんも呼ぶわね」
アイリスとイナホなら大丈夫かな? アイリスとなら効果が切れるまでやり続けれるし。イナホが、妊娠しても影響は少ないからな。
「アイリスさん!私たちも……」
「リリスたちは、マズいでしょ?」
「確かに、うちの防衛面でヤバいな」
「うう……私もユーリ様の赤ちゃんが欲しいのに」
「それを言うなら、姉さん。チャンスを活かせなかった、私はどうなんでしょう?」
リリスとリリアがいじけた。
「まぁ、今は我慢してくれ。冬は大丈夫だけど、春になったら危険だしな。代わりの人でもいれば、まったく問題無いんだけどな」
今は、秋の13月。今の時期から春までは、魔物の活動も大人しくなる。だから、危険は少ないと言えるだろう。
しかし、妊娠半年を超えた辺りで春になる。冬を超えて、腹を空かせた魔物たちが暴れ出すのだ。その頃には、お腹も大っきいので護るのが大変だろう。
「代わりの人が居れば良いんですか?」
「まぁ、居たらね」
「なら、数日、ギンカを借りても良いですか?」
「ん? ギンカが良いなら問題ないけど……」
俺は、ギンカの方を向いた。ギンカは、ユリウスのほっぺたを突っついていた。赤ちゃんのほっぺたって、ぷにぷにしていて触りたくなるよな?
「私は、大丈夫ですよ」
ギンカは、話を聞いていた様だ。
「ギンカが、大丈夫って言ってるから良いよ」
「でしたら、1週間程、暇を下さい」
「いつも言ってるけど、休むのは自由だからね。それで、何処か行くの?」
「一度、エルフの里に戻り、長へ報告しようと思います。そして、可能なら数人借りて来ようかと」
「俺が送って行こうか?ギンカでも、この人数は無理だろ?」
イケるのかと思い、ギンカを見たら、首を横に振っている。
「無理ですね。なので、私が里に行った後、ユーリ様を呼びに戻れば、大丈夫だと思います」
その後、俺が転移門を造れば問題無いな。
「私もそれを提案する予定でした。私とギンカで、先に行く予定です」
「よし、その案で行こうか。いつ出発するんだ?」
「明日の朝に出ます。山脈を超えるので、寒さが厳しくなる前に」
「分かった」
なら、今日中に旅支度をしてやらないとな。時間がないから造れるアイテムを厳選しないと。
「それで、エルフの里は、何処寄りなんだ?」
「ベルトリンデ王国の領内ですね」
「そしたら、カノープスまでは、送って行けるな」
「良いんですか?」
「おうよ。ついでに、カノープスで鉱石を買うわ」
カノープスは、山脈に隣接した都市だ。その為、多くの鉱石が入手出来る。話によるとミスリルも取り扱っているとか。
しかし、そのレベルの鉱石は、ほんの一部の商人が取り扱っている為、紹介状無しには買えないだろう。
そうだ、カリスさんに頼めば書いてくれないかな?
彼女は、竜王国の商会ギルドのトップだし。
「助かります」
「必要な物は、言ってくれ。俺が用意してやるから」
「はい」
エルフの里へ向けて、リリスとギンカの旅が決定した。
余談。リリスたちが旅立って数日後。
「ティア、カレン、ポプラ。君たちにコレをあげよう」
「コレは、何ですか?」
ティアが代表して聞いてきた。俺は、それにドヤ顔しながら答える。
「俺とリリィが作った惚れ薬の改良品『大人の階段登る君』だ!」
「「「………」」」
彼女たちのリアクションが薄かった。コレの性能説明する前に、敢えて言おう。名付けたのは、俺じゃない!リリィだ!
「性交するだけで、大人になれる訳じゃないのよ」
という理由らしい。産めば大人か?と、ツッコミたくなったよ。まったく、酷いネーミングセンスだ。まぁ、『君』を付けたのは俺だけどね。最初は、『大人の階段の〜ぼる』だったのだ。
歌か!?歌から取ったのか!?という事で『君』付けにした。
「それで、この薬なんだがーー」
本来の惚れ薬の効果が強過ぎたので、範囲を限定出来ないかと色々調整してみた。薄めたり、薬草を抜いたり、煮沸したりした結果、範囲を限定出来た。
また、リリィの希望により排卵誘発剤の効果を付与した。付与前だとただの発情薬だったしな。という訳で、コレを飲めば子供が出来やすくなる。
これだと女性限定品になるので、男性用として精液増加剤の効果を付与した物も作り中。完成まで、もう少しかかるだろう。
「ーーという訳で、そろそろ子供欲しいだろ?だから、あげる。使う時は、お互いにしっかり話し合うこと。後、翌日休む連絡をすることを守ってくれ」
多分、翌日は、お互いに疲れ切って動けないと思うからな。
「「「ありがとうございます」」」
という訳で、グレイたち頑張れよ。彼女たちに絞られると思うから。栄養剤は、用意してやろう。
翌日。
「「「妊娠しました」」」
「「「………」」」
げっそりしたグレイたちを連れて報告にきた。貰ったその日に使った様だ。
「おっ、おめでとう。グレイたちは、後で研究室に来るように。栄養剤作ってやるわ」
マジでご苦労様です。頑張ったんだな、お前ら。
「「「お願いします……」」」
さて、屋敷の家事どうしよう?あはは、更に人数減っちゃったよ!
マジで人を借りないとマズいなと思う、ユーリだった。




